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医療広告ガイドラインとは? ~病院広報担当者やWEBデザイナーが必ず知っておくべき禁止事項~

Oneself Creative合同会社代表の鈴木です。
私自身、元々は理学療法士として医療現場で働いていたこともあり、現在の事業を立ち上げた後も医療業界との繋がりが多くあります。
そのため、弊社としては病院やクリニック、医療系学術集会の映像やデザインの制作に携わらせていただく機会が比較的多くなっています。

しかし、医療サービスは人の命に関わるため不適切な広告で誤解を招かないように、医療機関における広告やデザインは厳しく規制されています。

それが「医療広告ガイドライン」です。

医療関係者や医療機関の広告制作に関わるクリエイターであれば一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

「医療広告ガイドライン」とは、2018年6月に厚生労働省から出された医療広告の指導方針です。
正式には「医業若しくは歯科医業または病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」という名称になります。

近年、広告や医療サービスに関する消費者トラブルが増加していることから、元々は規制対象外であった医療機関のホームページ(WEBサイト)も規制の対象になりました。

「医療広告ガイドライン」に違反すると罰則を課される場合もあるため注意が必要です。
違反が確認された場合は、行政指導によって是正や中止の命令が下されます。もし、調査や行政指導に対して対応しなかった場合は、罰則(6月以下の懲役又は30万円以下の罰金)が適用されることになります。

医療機関の広報担当者はもちろんのこと、医療機関の広告やWEBサイトの制作に関わるクリエイターは必須事項で知っておかなければならないガイドラインであるため、今回は「医療広告ガイドライン」を要約するような形で、解説していきたいと思います。


1.医療広告の定義

以下の2つの条件を両方満たすものが、医療広告に該当すると判断されます。

① 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
② 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)

広告に該当する媒体の具体例としては以下のようなものが挙げられます。

①チラシ、パンフレットその他これらに類似する物によるもの(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む)

②ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む。)、ネオンサイン、アドバルーンその他これらに類似する物によるもの

③新聞紙、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備による放送を含む)、映写又は電光によるもの

④情報処理の用に供する機器によるもの(Eメール、インターネット上の広告等)

⑤不特定多数の者への説明会、相談会、キャッチセールス等において使用するスライド、ビデオ又は口頭で行われる演述によるもの

2.医療広告の対象とならないもの

では、医療広告として見なされないものはどんなものでしょう?
以下のような具体例は、受診等の誘引が目的ではないものや特定性がないもののため、基本的に医療広告として見なされません。

①学術論文、学術発表等
学会や専門誌等で発表される学術論文、ポスター、講演等は、社会通念上、広告と見なされることはない。

②新聞や雑誌等での記事
新聞や雑誌等での記事は「誘引性」を通常は有さないため、原則として広告に該当しないものである。しかし、費用を負担して記事の掲載を依頼することにより、患者等を誘引するいわゆる記事風広告は、広告規制の対象となるものである。

③患者等が自ら掲載する体験談、手記等
基本的に「誘引性」の要件を満たさないため広告とは見なさない。
ただし、病院からの依頼に基づく手記であったり、金銭等の謝礼を受けている又はその約束がある場合には、「誘引性」を有するものとして扱うことが適当である。

④院内掲示、院内で配布するパンフレット等
院内掲示、院内で配布するパンフレット等はその情報の受け手が、既に受診している患者等に限定されるため、「誘引性」を満たすものではなく、情報提供や広報と解される。

⑤医療機関の職員募集に関する広告
医療機関に従事する職員の採用を目的としたいわゆる求人広告は、通常、医療機関の名称や連絡先等が記載されているが、当該医療機関への受診を誘引するものではないことから、医療に関する広告とは見なされない。

3.医療広告における禁止事項

普段何気なく見ている医療広告。
もしかしたら以下のような広告を見たことがある人もいるかもしれません。

・一日で全ての治療が終了します
・絶対安全な手術です
・○○の治療では、日本有数の実績を有する病院です
・著名人○○さんも推薦しています
・○%の満足度
・口コミやビフォーアフター写真

実は、これらは広告違反の可能性が高いです。
医療広告には8つの禁止事項があります。

① 広告が可能とされていない事項の広告
② 内容が虚偽にわたる広告(虚偽広告)
③ 他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告(比較優良広告)
④ 誇大な広告(誇大広告)
⑤ 患者等の主観に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談
⑥ 治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等
⑦ 公序良俗に反する内容の広告
⑧ その他

① 広告が可能とされていない事項の広告

医療に関する広告は、患者の治療選択等に役立てる情報として、法または広告告示によって広告可能とされたものを除いて、原則広告が禁じられています。

【具体例】
・ 死亡率、術後生存率等
医療の提供の結果としては、医療機能情報提供制度において報告が義務付けられた事項以外は、対象となった患者の状態等による影響も大きく、適切な選択に資する情報であるとの評価がなされる段階にはないことから、広告可能な事項ではない。

・ 未承認医薬品(海外の医薬品やいわゆる健康食品等)による治療内容
→治療の方法については、広告告示で認められた保険診療で可能なものや医薬品医療機器等法で承認された医薬品による治療等に限定されており、未承認医薬品による治療は、広告可能な事項ではない。

② 虚偽広告
広告に示された内容が虚偽である場合、患者等に著しく事実に相違する情報を与え、適切な受診機会を喪失したり、不適切な医療を受けるおそれがあることから、罰則付きで禁じられています。

【具体例】
・ 絶対安全な手術です!
絶対安全な手術等は、医学上あり得ないので、虚偽広告として扱う。

・ 加工・修正した術前術後の写真等の掲載
あたかも効果があるかのように見せるため加工・修正した術前術後の写真等については、虚偽広告として取り扱う。

・ 一日で全ての治療が終了します(治療後の定期的な処置等が必要な場合)
治療後の定期的な処置等が必要であるにもかかわらず、全ての治療が一日で終了するといった内容の表現を掲載している場合には、虚偽広告として取り扱う。

・ 「○%の満足度」(根拠・調査方法の提示がないもの)
データの根拠(具体的な調査の方法等)を明確にせず、データの結果と考えられるもののみを示すものについては、虚偽広告として取り扱う。
また、非常に限られた患者等を対象に実施された調査や謝金を支払うことにより意図的に誘導された調査の結果など、公正なデータといえないものについても、虚偽にわたるものとして取り扱う。

③ 比較優良広告

特定又は不特定の他の医療機関(複数の場合を含む)と自らを比較の対象とし、施設の規模、人員配置、提供する医療の内容等について、自らの病院等が他の医療機関よりも優良である旨を広告することは禁じられています。

特に「日本一」「地域TOP」「最高」といった表現には、注意しなければなりません。

【具体例】
・ 肝臓がんの治療では、日本有数の実績を有する病院です
・ 当院は県内一の医師数を誇ります
・ 本グループは全国に展開し、最高の医療を広く国民に提供しております
・ 芸能プロダクションと提携しています
・ 著名人も○○医師を推薦しています
・ 著名人も当院で治療を受けております

④ 誇大広告

必ずしも虚偽ではないが、施設の規模、人員配置、提供する医療の内容等について、事実を不当に誇張して表現していたり、人を誤認させる広告は、禁じられています。

【具体例】
・ 手術や処置等の効果又は有効性を強調するもの
撮影条件や被写体の状態を変えるなどして撮影した術前術後の写真等をウェブサイトに掲載し、その効果又は有効性を強調することは、国民や患者を誤認させ、不当に誘引するおそれがあることから、そうした写真等については誇大広告として扱う。

・こんな症状が出ていれば命に関わりますので、今すぐ受診ください
科学的な根拠が乏しい情報であるにもかかわらず特定の症状に関するリスクを強調することにより、医療機関への受診を誘導するものは、誇大広告として取り扱う。

・ ○○手術は効果が高く、おすすめです
科学的な根拠が乏しい情報であるにもかかわらず特定の手術や処置等の有効性を強調することにより、有効性が高いと称する手術等の実施へ誘導するものは、誇大広告として取り扱う。

・ ○○手術は効果が乏しく、リスクも高いので、新たに開発された○○手術をおすすめします
科学的な根拠が乏しい情報であるにもかかわらず特定の手術や処置等のリスクを強調することにより、リスクが高いと称する手術等以外のものへ誘導するものは、誇大広告として取り扱う。

⑤ 治療内容または治療効果に関する体験談

医療機関が、治療等の内容又は効果に関して、患者自身の体験や家族等からの伝聞に基づく「主観的な体験談」を、当該医療機関への誘引を目的として紹介することは、誤認を与えるおそれがあることを踏まえ、医療に関する広告としては認められません。

なお、患者個人が運営するWEBサイト(ブログ)、SNS などへの体験談の掲載については、医療機関が広告料等の費用負担等の便宜を図って掲載を依頼しているなどによる誘引性が認められない場合は、医療広告に該当しません。

⑥ 詳細説明のない治療前後写真の掲載禁止

いわゆるビフォーアフター写真のことですが、個々の患者の状態等により当然に治療等の結果は異なるものであることを踏まえ、誤認させるおそれがある写真等については医療に関する広告としては禁じられています。

もしビフォーアフター写真を載せる場合は、通常必要とされる治療内容、費用、副作用、リスクなどの詳細な説明を記載しなければなりません。
当該情報の掲載場所については、患者等にとって分かりやすいよう十分に配慮し、例えば、リンクを張った先のページへ掲載したり、利点や長所に関する情報と比べて極端に小さな文字で掲載したりしてはいけません。

⑦ 公序良俗に反する内容の広告

わいせつもしくは残虐なイラストや写真や映像、差別を助長する表現を使用した広告は、公序良俗に反するため医療に関する広告として認められていません。

⑧ その他

1. 品位を損ねる内容の広告
医療機関や医療の内容について品位を損ねる、あるいはそのおそれがある広告は禁じられています。

【具体例】
・ 今なら○円でキャンペーン実施中!
・ ただいまキャンペーンを実施中
・ 期間限定で○○療法を50%オフで提供しています
・ ○○治療し放題プラン
・ 無料相談をされた方全員に○○をプレゼント

2.他法令又は他法令に関する広告ガイドラインで禁止されている内容の広告
他法令に抵触する広告を行わないことは当然として、他法令に関する広告ガイドラインも遵守しなければなりません。
また、広告は通常、医療機関が自らの意思により、患者等の選択に資するために実施するものであり、例えば、医薬品又は医療機器の販売会社等からの依頼により、金銭の授与等の便宜を受けて、特定の疾病を治療できる旨等について広告することは、禁じられています。

4.広告可能事項の限定解除

医療広告においては様々な制限がありますが、規制範囲内の情報だけでは患者が適切な医療を選択するのが難しくなってしまいます。

患者が自ら求めて入手する情報については、適切な情報提供が円滑に行われる必要があるとの考え方から、一定の要件を満たすことで広告可能事項の限定を解除することができます。

広告可能事項の限定解除が認められる場合は、以下の①~④のいずれも満たした場合となります。

① 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること

② 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること

③ 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること

④ 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること

上記項目を満たすと広告可能事項の制限を一部解除でき、WEBサイトなどにおいても以下のような項目を掲載することが可能となります。

① ビフォー・アフターの掲載
② 自由診療の治療内容
③ 死亡率、術後生存率等
④ 広告許可されていない診療科目名
⑤ 専門外来(糖尿病外来、認知症外来など)
⑥ 広告可能なもの以外の診療科や専門医資格(産業医など)
⑦ 客観的な根拠・データを示した治療効果
⑧ 医師や看護師の研修受講歴
⑨ 医師個人が行った手術件数
など


医療広告ガイドラインは非常に複雑ではありますが、患者の安全と適切な情報提供のバランスを取るために重要なガイドラインとなります。

医療機関や医療広告の制作に関わるクリエイターはこれらのルールを守りながら、患者に役立つ情報を発信することが求められています。

定期的に厚生労働省の「医療法における病院等の広告規制について」をチェックすることで、医療広告ガイドラインの最新情報を確認するようにしましょう。

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