【ワンパブ・オープン社内報 vol.10】 時代を先読みし、欲しい人に、欲しい情報を、最適な形で届けたい。
マーケティング部 BOOKマーケティング1課 齋藤 文
【ワンパブ・オープン社内報】は、ワン・パブリッシングで働く人を通して、会社・雑誌・メディアが、いまどのような新しいことにチャレンジしているかをお伝えしている連載です。今回は、マーケティング部の若きエース・齋藤さんにお話を聞いてきました。(所属や肩書は取材当時のものです)
【社員プロフィール】
齋藤文
■2017年4月
新卒で株式会社ブックビヨンドに入社(その後、合併して学研プラスに異動)
■2017年10月~
コンテンツプロデュース部デジタル出版チーム
■2018年4月~
マーケティング部 雑誌販売課
市場分析が命! 刷り部数を読み間違えた苦い記憶も……
―今回は、ワンパブ・オープン社内報として初めて、編集以外の部署からの登場です。早速ですが、齋藤さんが担当されているマーケティング部の仕事内容を教えてもらえますか?
『POTATO』や『BOMB』、『Cinema★Cinema』などのエンタメ誌と、『上沼恵美子のおしゃべりクッキング』をはじめとする料理ジャンルの雑誌・書籍の販売担当をしています。
さまざまな市場分析を踏まえながら、商品ごとにどれくらいのお金をかけ、どれくらいの数を、いくらで、誰に、どうやって、どこで売るのか? を日々検討しています。売上と利益を最大化させるために考え、行動するのが私たちマーケティング部の主な仕事です。
雑誌を例に出すと、発売中の月号の売れ行きを調査し、好調であれば売れている理由、売れ行きが芳しくなければその理由を分析します。そのうえで、次号はどんな表紙でメインの特集はなにか、付録の有無、ライバル誌の動向などさまざまな情報を集約し、編集部と一緒に「次号は何部刷るか」を決定します。その後、取次と部数交渉、刷り部数を製作部に発注……というように、社内・社外の様々な方と連携して、形にしていく仕事です。
―どれくらい売れるのかを予想するなんて、ものすごく難しい仕事ですね!
はい。特にエンタメ誌は表紙や特集によって実売数が大きく変わるので、担当になったばかりの頃は特に、発売日が近づくと「本当にあの部数でよかったのか...…」とハラハラすることが多かったですね。
―これまでに、刷り部数を読み間違えて、大変だったことはありますか?
過去に2度、刷り部数を大きく読み間違え、絶対的に少なく刷ってしまったことがあります。そのうち一回は、マーケティング部に異動して間もない頃のことでした。
人気が出そうな表紙と特集ではあったのですが、そこまで大きく刷り部数を上乗せすることまでは決断できなかったんです。それが蓋を開けてみたら、発売日の朝から電話が鳴り止まなくて! 本屋に行っても置いていません、絶対に欲しいのですがどこで買えますか? 増刷はしますか? など、かかってくる電話はすべて、担当である私宛でした。
異動直後でわからないことだらけ、しかも直属の上司は一週間出張中という、絶体絶命の状況でしたね(苦笑)。市場を読むことの重要さを体感すると同時に、部数を見誤るとものすごいことになってしまうんだ……と痛感しました。
―反対に、多く刷りすぎてしまったことは?
もちろんあります。ただ、刷りすぎたときよりも、部数が足りなかったときのほうが、より辛いですね。「欲しいのに手に入らない!」という書店さんやお客さんの反応は、聞いていて申し訳なくなってしまって。いまではようやく、綿密な計画をもとに部数予測ができるようになりました!(と胸張って言えるように早くなりたいです)
ファンを巻き込む形でPRをおこなった『韓国ドラマ』ムック
―「市場を読む」という意味では、今年2月に発売された『最旬 韓国ドラマ&カルチャー FANBOOK』が、SNSを巻き込んだファンづくりの成功例だと感じました。どんなリサーチをし、どのようなマーケティングの戦略を練りましたか?
私、佐藤尚之さんの『ファンベース』(筑摩書房・刊)という本が大好きで、もう何度も繰り返し読んでいるんです。ビジネス本って世の中にたくさんあるけど、いまの自分にハマるものを見つけるのって難しいじゃないですか。でもこの本は、出会ったときに「これだ!」と思って、ものすごい勢いで読んでしまって。
『ファンベース』はファンを大切にし、ファンをベースにして、中長期的に売上や事業価値を高める考え方で、いつかこの考え方をもとにいろいろ仕掛けてみたいとずっと思っていたところ、韓国ドラマのムックを担当する話があり、「これならできる!」と思ったんです。まずはファンの熱狂する気持ちに寄り添うことが大切だと思い、約3週間でムックに掲載されるドラマを全て観ました。その後、市場調査をスタートさせました。
韓国ドラマの関連本はすでに何冊も出ていて、もちろん編集者側にしてみればこだわりはたくさんあるのでしょうが、顧客から見れば、取り上げられているドラマも俳優も同じ、値段もだいたい1500円くらいで、正直どれも似通った商品だなという印象を持っていました。
この市場にワンパブが参入するなら、制作過程からお客さんを巻き込んで、その人にとって特別な体験ができるものにしよう、だからこそ買いたい、人に薦めたいと思ってもらえるような一冊にしようと心に決めました。
―ムックの発売前に『愛の不時着 名シーン総選挙』を開催して、ファンの声を取り入れたページを作ったのも、作戦のひとつだったのですね。
はい。加えて、ワンパブの公式Twitterアカウント中の人に協力してもらって、『愛の不時着』ファンの人に直接アプローチをしました。表紙のデザインに関してアンケートに答えてもらったりして、少しずつですが発売までにファンを増やすことに成功しました。
発売後には皆さん自ら積極的に本の紹介をしてくださって……本の中でBTSのメンバーが特集されているページがあるんですけど、海外のBTSファンアカウントにも取り上げてもらえて、海外からの問い合わせも増えました。Amazonのカートが一気に落ちたりもしましたね!
―まさに「ファンベース」そのものの流れですね!
今回、人数としてはそこまで大きな規模ではなかったですが、ファンを巻き込んで、彼ら彼女らの熱狂を直接感じ取れたことは、本当にうれしかったし、楽しかったです。次は、定期誌でこうしたファンベースの施策を仕掛けてみたいですね。
ターゲットにあわせて情報の形を変化させ、必要としている人に届けたい
―ここからは、齋藤さんご自身のことについて伺います。この仕事をしていて印象的だったことや、驚いたことはありますか?
雑誌担当あるあるだと思いますが、1年がものすごく早いです。3か月先、半年先の企画の話をすることが多いので、気持ち的に今はもう秋~年末で、私の2021年はもう終わろうとしています(笑)。もう少しすると年明けの話が始まったりするので、恐ろしい仕事だな、と。
―常に先を読むことが求められる仕事ならではですね! ちなみに、普段からSNSは利用していますか?
主要なSNSは毎日見ています。といっても、自分から発信するわけではなく、いろいろな人の投稿を見ているのが楽しいタイプです。Tik Tokはちょっと若いなと思いながらも仕事のために見ていたら、結構ハマりました!
―本当に、すごくいろいろな勉強されていると感じますが、昔からマーケティングに関することに興味があったのでしょうか。
そこまで興味があったというわけではないのですが、物の情報をどんな形にして広めていくのがベストかを考えることは好きでした。出版社だったら、情報を紙の形にして顧客に提供しますよね。最近はそこに、デジタル(電子書籍)や動画という形態も加わってきました。
読者のニーズに合った形で情報を提供していく仕事がしたいなと思っていたので、いまの部署は大きくズレてはいない気がします。いま取り組んでいることが来月には結果が出るのでテンポもはやく、毎日刺激的です。
―最後に、今後の夢やチャレンジしたいこと、目標などを教えてください。
今は、紙の本をメインで扱う部署にいるので、紙で情報を得たい方をターゲットとしたマーケティングを主としています。これが将来的には、紙の本は買わないけど無料だったらその情報が欲しいとか、動画だったら見るとか、必要としている人に必要な形に変えて情報を届ける仕事をしたいです。
―すごく研究熱心で、マーケティング部の仕事を心から楽しんでいる様子が伝わってきました。次はどんなファンベースの施策を仕掛けてくれるのか、とても楽しみです。齋藤さん、ありがとうございました!
(取材:水谷映美/撮影:我妻慶一)