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【ワンパブ・オープン社内報 vol.15】 リサーチの鬼!GetNavi副編集長が考える「売れるための本作り」とは
メディアビジネス本部 第4メディアプロデュース部 青木宏彰
【ワンパブ・オープン社内報】は、ワン・パブリッシングで働く人を通して、会社・雑誌・メディアが、いまどのような新しいことにチャレンジしているかをお伝えしている連載です。今回は、『GetNavi』の副編集長であり、ファッション書籍も担当している青木宏彰さんにお話を聞きました。(所属や肩書は取材当時のものです)
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【社員プロフィール】
青木宏彰(あおき ひろあき)
2008年、株式会社学習研究社(現・学研プラス)に 入社。
入社後の3年間は、『不定期誌編集部』にて知育系ドリルや旅行ガイドブック、エンタメ誌などムックの企画・編集に携わる。その後、『GetNavi』『POTATO』の編集、『mer』の広告営業などを経て、再び『GetNavi』編集部へ。
2020年7月からは『GetNavi』副編集長に就任。家電やファッションジャンルをメインに手掛けている。
情報のアウトプットが多岐にわたる。これが『GetNavi』の強み
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―まずは、青木さんが入社してすぐに配属となった「不定期誌編集部」について教えてもらえますか。
雑誌部門でありつつ定期誌を持たない編集部で、自分でイチからPOSデータ(レジから収集される販売データ)を調べて“いま売れている本”の傾向を探り、ムックや書籍の企画を出す……という作業を繰り返していました。 ジャンルも幅広く、知育系のドリルから旅物、自転車のメンテナンスハウツー、韓国エンタメなど、かなりの数のムックや書籍に携わりましたね。
当時はすごくキツかったですが、企画を立てる前の市場調査の段階から校了まで、すべての業務を経験させてもらいました。おかげで、本を出すまでの一通りのプロセスが理解できたので、すごく感謝しています。
―その後、いくつかの雑誌編集や広告営業も経験され、現在は『GetNavi』の副編集長として編集長をサポートしつつ、家電やファッションの記事を担当されています。家電コーディネーターの資格もお持ちですが、取得したきっかけや、今度取りたい資格などについてお聞かせください。
家電コーディネーターの資格は、副編集長の肩書きがまだないときに取得しました。『GetNavi』では編集者自らが顔を出し、責任を持ってモノを紹介するのがお決まりのスタイルなのですが、家電記事を担当するうえで自信を持ってコメントできるように、またクライアントさんや読者にも安心感を持ってもらえるようにという意図で資格を取りました。
今後取りたい資格は……そうですね、あえて言うなら、インテリアコーディネーターですかね。家電を、スペックだけでなくプロダクトとしての美しさや住まいへの調和なども考慮してリコメンドできるような知識やスキルが付くといいのかなと。難しそうな家電の世界を、ライフスタイルに落とし込んで語れるようになりたいなと常々思っています。
―女性は特に、機能面よりむしろデザインで家電を選んだりすることが多いので、ぜひそういった切り口での家電記事を期待しています! また、『GetNavi』の本誌以外にも、青木さんはさまざまなコンテンツの作成に注力されていますね。
はい。企業オウンドメディアへの記事提供、タイアップ動画のディレクション、加えて年末時期はweb投票型アワード企画「家電大賞」とそのYouTubeチャンネルの運営などにもチャレンジしています。特にワンパブになって以降、動画というアウトプットが求められる機会が増えています。プリント、デジタル、動画、イベントなどいろいろなクリエイティブで仕掛けていけるのは、いまのゲットナビの強みではないでしょうか。
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―紙と動画はジャンルが違う分、両方を手掛けるのは大変な気がするのですが、実際にはいかがですか?
それが実は、まったく違う作業だとは思っていません。むしろ、いままでやってきた誌面づくりととても似ている、という印象です。視聴者に伝えたい商品があって、テーマがあって、どんな演出で見せていくかを整理するという点では、誌面制作も動画制作も同じだなと。
ただ、誌面だと何ページも割いて、たくさんの写真とテキストを駆使してやっと読者に伝えていることが、動画であれば1秒で伝わることもある、という点はとても興味深いです。当然、時間軸があって、音楽やアニメーションが加わるなどプラスアルファの要素は増えますが……「何をどう伝えるのか?」という編集の本質的な部分は同じなんじゃないかなと。
そもそも僕は、紙の雑誌や書籍が大好きでこの業界に入りました。特に書籍の場合は、自分でタイトルや台割を決め、紙の種類を選ぶところから、取材・撮影・入稿をして、レイアウトにはめて印刷されたゲラをチェックして……という一連のプロセスがあり、そのトータルでモノづくりの楽しさ、クリエイティブの楽しさを感じています。これからは、こうした紙媒体の良さを大切にしながら、一方でアウトプットの手段のひとつとして、動画にも力をいれていきたいと思っています。
入社直後に叩き込まれた「数字を見るクセ」が今に活きている
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―『GetNavi』関連とは別軸で、青木さんはファッション系の書籍も担当されています。特に、先日発売になった『joba’s SIMPLE BASIC』(以下、ジョバ本)は、発売前の予約でかなりの部数を記録したと聞きました。どのようなきっかけで、この書籍を出すことになったのですか?
実はジョバ本の前に、BEAMSの男性ディレクター西口修平さんの本を2冊(『Nishiguchi's Closet』『Nishiguchi Essentials 100』)担当しました。もともと僕が西口さんのファンで、Instagramをフォローしていて。独特のファッションセンスが世界的に注目されている方だったので、「この人の本を出したら売れるだろうな」と企画書を持ってBEAMSにプレゼンに行ったことが始まりです。
ありがたいことに、その2冊の実績をBEAMSの方が評価してくださって、「うちには(西口と同様に)Instagramで人気の女性ディレクターがいるんだけど、会ってみない?」とジョバ本の著者である三條場夏海さんをご紹介いただきました。そこから書籍化の運びになり、今に至るという感じです。
―ジョバ本は発売直後に重版も決まりましたよね。売れる本にするために、企画の段階でこだわった点を教えてください。
今回のジョバ本に関しては、三條場さんに会いに行く時点で書籍化の話があったので、3本くらい切り口を考えて持って行きました。女性向けのファッション書籍の企画を立てるのは初めてで、めちゃめちゃリサーチしましたね。僕、リサーチが大好きなんですよ。20冊くらい女性ファッション書籍を買い集めて、休みの日もずっと読み込んでいました。
なんとなく“特集買い”してパラパラとめくって捨てる情報誌とは違って、実用書はなんらかの課題解決のために買うものじゃないですか。だから「世の中の女性たちはファッションに対してどんな悩みを持っているのか」「その悩みをどういうアプローチで解決したいと思っているのか」「書籍を買うほどその情報を欲している人はどれくらいいるのか」ということを、POSデータをもとに“ヤマを張って”いきました。
いくつかヤマを張って、そのなかから著者である三條場さんと一緒に厳選したのが、今回の「限られた洋服でとにかくたくさん着まわす」というテーマです。
もちろん数字やデータばかりに頼らずに、女性のリアルな視点は何より大切にしました。著者である三條場さんや女性のエディターさんとは何度も何時間もディスカッションして形にしていきましたね。
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―不定期誌編集部での「数字を見て世の中のトレンドを読む」経験が、ここで活きていますね! では、発売前後にどんなことを仕掛けたのかも、言える範囲で構いませんので教えてもらえますか。
著者である三條場さんにはすでにファンがたくさんついていて、Instagramのフォロワーも企画当初の2021年7月時点で7.8万人、発売時点では8.3万人という数になっています。そのファンの方たちに向けて、マメに情報発信をしてもらいました。たとえば、まだスタイルブック出版の情報解禁前から、大量の私服を運んでいる様子を投稿して匂わせをしたり。実際に、鋭いファンの方から「もしかして、スタイルブックを出すんですか?」とダイレクトメッセージが届いていたようです。
あとは、予約開始と同時にインスタライブをし、発売日にもインスタライブをしてもらいました。少しずつ書籍の露出をすることで、ファンとのエンゲージメントがより強くなってきたことを実感しています。また、彼女はBEAMSという企業で働いていて、自分のブランドも持っているので、それらのプレスリリースと露出時期が重ならないように、BEAMSの方々や著者本人と慎重に調整を行ったことも、仕掛けのひとつと言えるかもしれません。何より彼女自身が意欲的で、BEAMSという協力的なバックボーンがあってこその結果だと思います。
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発売直後の11月12日には、BEAMS主催のトークイベントも行いました。BEAMSの公式サイトで、書籍出版のニュースリリースとともにイベント開催を告知。抽選で当選した40人前後のファンを六本木ヒルズの店舗に招待し、特別な空間を作って著者とファンとの交流を深めました。
そして、このイベントの様子はライブ配信されたのですが、BEAMS独自の「ライブコマース」機能が備わっていて、書籍に掲載しているイチオシ商品は トークを聞きながら”ポチッと”購入できる仕組みに。こういったイベントは、今後も継続的にやっていけるとうれしいですね。
※ライブ配信の様子はこちら
「家電もファッションも語れる」編集者であり続けたい
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―ここからは、青木さんご自身のことについてもお伺いしたいと思います。最近は、テレビなどメディアでの露出も増えていますが、表舞台に立つようになって感じたことや、何か変わったことはありましたか。
最初は抵抗があったんですよ。おしゃべりが得意じゃないから書き物をする仕事を選んだのに、カメラの前で話をするなんて難しいなと。でも、場数を踏むうちに、「ここはきっとこういう感じで編集されるんだろうな」とか、「こういった類の発言は放送されないだろうな」というのがわかってきました。あとは……メディアに出ることで、家族が一番喜んでいるかもしれません。特に母親が毎回盛り上がっちゃって、親戚知人友人みんなに「うちの息子が◯◯に出るのよ!」って連絡しているそうです(笑)。
―かわいいお母様ですね! ちなみに、今後出てみたい番組はありますか?
『GetNavi』編集長の川内さんがここ最近頻繁に出演していますが、奥様方がご覧になっている朝や昼の情報番組には興味があります。僕が出演する番組って夜の時間帯が多いんですよ。これまで『GetNavi』を知らなかった人たちに、こういう媒体があると知ってもらえるきっかけになったらなと思うので、明るい時間帯の情報番組にも出てみたいです。
―ありがとうございます。では、青木さんが仕事をしていて嬉しい・楽しいこと、反対に大変だと感じることは何でしょうか。
モノづくりの現場、特に撮影現場でのカメラマンさんやスタイリストさんとのやり取りは、いつだってエキサイティングです。デザイナーさんと装丁やレイアウトを練っていくプロセスも大好きです。成し遂げたい一定の目標数値があって、そこに向けて一流のクリエイターの皆さんの力をお借りしながら、試行錯誤しながら商品を作っていくのは楽しいです。
辛いことは……そうですね、飲んで寝たら忘れちゃいますね。
―最後に、今後チャレンジしたいことや目指している姿などあれば、ぜひ教えてください。
家電などメカ的なジャンルと、ファッションという柔らかい情緒的な世界観のジャンル、両方できる編集者って珍しいのかもしれないなと最近思います。そこは自分の強みなのかなと思っているので、今後も伸ばしていきたいです。また、書籍づくりの勘所、面白さがわかってきたので、今後も企画を出して手掛けていきたいですね。雑誌も作るし書籍も作るし動画も作る、家電も詳しいしファッションにも精通している、そんな編集者でありたいです。
あとは……「不定期誌編集部」時代にムックを手掛けたことがありますが、韓国のエンタメが大好きなんですよ。なのに、韓国語がまったく出来ない(苦笑)。覚えたらもっと楽しめるかなと思っているので、韓国語に挑戦してみたいです。
―取材中、いろいろな女性誌の話や売れている書籍の話が次々と出てきて、ジョバ本のヒットは綿密なリサーチの賜物なのだなと改めて感じました。「中学時代から持ち続けてきたファッション誌・ライフスタイル誌の編集者という夢に、遠回りしながら近づいてるかな」と語る青木さんが、次に手掛ける書籍も期待しています。青木さん、ありがとうございました!
★関西でのトークショーも決定しました!
当日の様子は、ワン・パブリッシング【公式】のTwitterでもご報告します!
『GetNavi』
https://getnavi.jp/
『joba’s SIMPLE BASIC』
https://www.amazon.co.jp/dp/4651201652/