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ドイツ空軍の象徴メッサーシュミットBf109

◆古参兵であるにも関わらず常に一線で戦い続けた戦闘機

メッサーシュミットBf109は、個人的に大好きなヒコーキなのです。
 世界で一番生産された戦闘機で約3万3千機を誇り、軍用機全体の中でも第2位の製造機数を誇ります(1位はソ連のイリューシンIL-2攻撃機の3万6千機)。
 初飛行は1935年。設計者はウイリー・メッサーシュミット氏ですが、実際の重要な基本設計はロベルト・ルッサー氏と言われております。
 技術者なら皆さん知っている、完成品の信頼度を決める有名な「ルッサーの法則」はこの人の編み出したものです。

 この1935年前後の年は、複葉機の時代から単葉・全金属機という、技術革新の時代で、大きなイノベーションが起きた時期でした。
 日本ですと三菱九六式艦戦九七式戦闘機(1936)、イギリスのホーカー・ハリケーンの初飛行、ソ連のI-16(1934)、スピットファイヤ(1936)などが同年代機ですね。隼や零戦は数年後の時代の機体です。

Bf109とほぼ同世代の各国の戦闘機たち
(左上)日本の九六式艦戦 (右上)九七式戦闘機(左下)
イギリスのホーカーハリケーン (右下)ソ連のI-16

 しかしながら、同世代の飛行機たちが、その性能限界のために次々と後継機に第一線の座を譲る中、最も古い部類に入るこのBf109は、機体設計に将来性があったためと、戦場の状況が侵攻作戦→防衛・迎撃戦に変化したことで、本来の持つ、最も得意な分野の性能を発揮でき、1945年の終戦の時まで、常にドイツ空軍の主力機として第一線で活躍した機体でした。

 折しもナチスドイツの再軍備化宣言とドイツ空軍が正式に設立した年に初飛行したメッサーシュミットBf109は、ドイツ空軍の崩壊と共にその全期間を主役機として勤め上げたのです。

◆運動性や航続距離のBf109の弱点は本当か?

・一撃離脱に特化した高速戦闘機で運動性はなく格闘戦には向かない。
・航続距離が短くて戦闘時間が少ないためにバトル・オブ・ブリテンでは致命的だった。
・主脚の構造が貧弱で着地事故が多かった。
・頑固なドイツ人がこの古い機体に拘り続け、最後まで使い続けた。
などの一般的な説が出回っています。

 しかし、その噂は半分本当、半分は誤解によるものです。
 一撃離脱の戦闘機というのは、たまたまその戦法に向いていた機体で、低速での運動性は実は良かったという話や、主脚の構造はそんなには悪くなかったのですが、生産性や軽量化のための主脚の構造が地上での安定性が悪く、視界の悪さや未熟なパイロットが故障率を上げたなども。

 また、バトル・オブ・ブリテンでの航続距離の短さは技術的には解決していましたし、後継機が現れないBf109を無理して使い続けたという話も、局地戦闘機としては最後まで最高の機体であったというパイロットの証言もあります。

275機撃墜のエース、ギュンターラル氏(現役時代と晩年のお姿)
彼もBf109はP-51ムスタングにもひけをとらない
最高の機体であったことを証言しています。

◆「最小機体に最強のエンジン」というコンセプト

 開発のコンセプトが「できる限りの最小の機体に、できる限りの最強のエンジンを搭載する」という発想は、戦闘機としての純粋な性能を引き出すには最良の選択でした。第二次世界大戦時における最後にしてかつ、最高の戦闘機として知られているF8Fベアキャットは正にこのコンセプトで生まれた戦闘機です。

 しかしながら、最高の選択であっても、状況に応じてバージョンアップしていくという進化の要求に応えるにはかなり厳しいコンセプトでもあります。
 なにせ、機体が小さいので武装強化や装備品には余裕がなく、エンジンが変わると重心や構造に負荷がかかります。Fw190のようにエンジンが変わる度に胴体や主翼がどんどん延長され、まったく別の機体になるか、次世代機に早々と交代するというのが大半でした。
 また、後継機が出てこないと、零戦のように大戦初期の華々しい活躍から悲惨な結果にその運命を落とされる場合も・・・・。

 しかしながらこのBf109は、基本設計に将来性があったために、苦労はしながらも、事情の変化と共に1000馬力弱の機体から、倍近い2,000馬力級エンジンを搭載した迎撃戦闘機にまで発展していきました。そういった意味では幸運でもあり稀なる機体でもあったのかなと思います。
 驚異的な進化を遂げた戦争前後の10年間を第一線で活躍し続けたBf109は、他の戦闘機たちに比べても類のない実績を持った戦闘機であったのです。

最初の量産型のB型(1936)(上)と最終系のK型(1944)(下)
エンジン馬力もJumo210Dの610馬力→DB605Lの2,000馬力
最高速度も460km/h→725km/hまで進化しました。

 Fw190やTa152、Me262、Me163、He162など、次々と生み出されるドイツの新型戦闘機たちの前にも、その性能では劣りつつも生産性の良さと迎撃戦闘力の良さ、歴戦のエースたちの絶大の信頼を受け、ナチスドイツのどこの戦線でも一線級の活躍を続け、崩壊の日まで最前線で戦い続けたドイツ空軍を象徴する戦闘機だったと思います。

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