輸送機の物語①〜航空史上不朽の傑作機、DC-3
軍用機の主役といえば、戦闘機、爆撃機、攻撃機という感じですが、偵察機や輸送機など、戦場の裏方ともいうべき軍用機たちの存在も忘れてはいけないものです。
軍用輸送機とは、文字通り、物資を輸送とすることを目的とした飛行機。戦場で必要な弾薬、武器、食料、兵員などを速やかに届けることを任務とします。今回は民間から軍用まで大活躍したダグラスDC-3についてです。
◆二度の世界大戦の間に生まれた旅客機DST
飛行機が生まれて十年足らずで起きた第一次世界大戦。人類にとっては今まで経験したことのない、大規模で悲惨な経験でしたが、この間に飛行機は大きく進歩を遂げます。
戦争が進歩させた航空技術は、戦後すぐに民間旅客機として大きく貢献することになります。とはいえ、まだまだプロペラ機の時代。北米大陸横断航空路には、ほとんど一昼夜を要しています。寝台車の如く、輸送機も寝台旅客機が誕生していたのです。一度乗ってみたいですね(^^)
この高速化・効率化を狙い、航空各社の競争はアメリカを中心に熾烈なものとなっていきました。
アメリカン航空がダグラス社にオーダー注文した機体は、当時の流行りのDC-2より大きな寝台旅客機でした。
列車ではブルマン・スタイルと言われた寝台列車が当時流行っていました。これは、当時の劣悪な夜行列車を快適なものに大幅に改良したスタイルで、親の代から家具製造をしていたブルマンは、カーペットやカーテン、布張りの椅子や図書館、食堂車など斬新なアイデアを次々に列車に取り入れていました。
このような豪華な客車を航空会社も取り入れたいとの要望で再設計されたのです。
開発は急ピッチで行われ、僅か半年後の1935年の12月には初飛行に成功、1936年には竣工しています。この機体はDST(Douglas Sleeper Transportの略)と呼ばれます。なんといっても14名分の寝台とキッチンも備え、途中一度だけの燃料補給のみで北米大陸を横断できるのですから、あっという間にアメリカン航空の看板旅客機となります。
開発は急ピッチで行われ、僅か半年後の1935年の12月には初飛行に成功、1936年には竣工しています。
◆アメリカン航空のDC-3
このDSTの派生型としてすぐに改良したのが、寝台ではなく通常座席型のDC-3です。21名の乗客(後には32名まで増員もできたタイプも)。
この機体の優れた所は、何よりも収納能力と飛行特性の安定さにあると言われています。DC-2の定員の五割ましながら、運行経費はわずか3%増に過ぎなかったので、航空会社にとってみれば、正に夢のような機体です。またDC-2から引き継いだエンジンの着脱のしやすさ、整備の容易さなども特筆ものであり、当時における正に「理想の旅客機」といえるものでした。
1936年の半ばに竣工したこの機体もまたたく間に当時のベストセラー機になり、アメリカン航空だけでなく、当時の一流の航空会社がこぞって採用となり、1939年までに600機以上が生産されました。
◆実は日本でも作られていたDC-3(零式輸送機)
さて、1930年代後半になってくると、各国は次の戦争に備えて軍備を強化し始めます。弱肉強食の時代、各国同士の疑心暗鬼や不安の連鎖は終わることはありません。
アメリカ陸軍も大人気で高性能のDC-3を140機あまりを徴用して軍用機として用いていました。日本も国内で使われていたDC-3に目をつけて軍用輸送機として用いようと画策しますが当然ながらアメリカ側も警戒してきます。
そこで日本海軍は三井物産に製造ライセンスを取得するように影で手を回し、1937年に昭和飛行機工業に委ね、ノックダウン方式で製造することに成功します。
ノックダウン方式とは、主な部品は他国から輸入し、これを現地で組み立てることですが、後には、完全に国内生産化されるようになります。
これが、零式輸送機(L2D2)で1940年、零式艦上戦闘機と同じ年に正式採用されました。
この時に、本国のアメリカがヤード・ポンドなどのインチ単位の設計図だったので、メートル法が定着済みの日本ではかなり苦労したそうで。
これ今もネジとかの規格とかそうだから、アメリカの航空機を国内で改良する時に、ISOのメートルねじが使えなくて、当時エンジニアをしていた管理人もかなり苦労した記憶が・・・。
そういう理由からか、オリジナルのDC-3と昭和飛行機で生産された機体とでは、随所で部品の寸法が違うそうです。
エンジンも三菱製の金星エンジンに変更され、終戦までに486機が製造されました。
さてアメリカと日本が戦争を始めると、このDC-3は敵味方に分かれて従事することになります。まったく同じ機体だと、味方から誤認される恐れもあったかもしれませね。
さて次回は、いよいよ第二次世界大戦が始まり、輸送機も軍用機として徴用され、様々な任務に従事していくことになりますがその話をしていきます。→続きます。