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イタリア機の魅力について語りたい〜その1
飛行機のデザインにおいて世界各国の中でも異色の光を放っているのがイタリアだと思います。中世ルネッサンス期に花開いた芸術の国、イタリア。その感性溢れるセンスは工業デザインにも反映されているのではないでしょうか。
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他の国では真似ができないそのセンスは当然、飛行機たちにも生かされていて、中にはちょっと?という不思議なものも(笑)。
今回は個人的に面白いと思っているイタリアの飛行機たちをご紹介。
宮崎駿の世界では、WWⅠとWWⅡの間の「つかの間の平和な時代」の航空機がよく登場します。この1920〜40年代あたりの飛行機は、布張りの複葉機が金属単葉機へ、むき出しの主輪が引き込み脚と、そのデザインを大きく変えていく時代でもありました。性能の向上とともに次の戦争の主力となる運命付けられていました。
第二次大戦はその国の工業力や技術者たちの人材など全体の国力がものをいい、ドイツ、アメリカ、イギリス、日本がその先陣をきっていましたが、実はそれまでは、イタリアも負けてはいませんでした。
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■翼の中に操縦席サボイア・マルケッティS-55飛行艇
2つの胴体は飛行艇に必要なフロートも役割。操縦席はというと、なんと翼の中にあります。むき出しのエンジンを縦に2つ繋げた串型のその姿はなんともいえないユニークな姿です。
この飛行艇、第二次大戦前、数々の長距離飛行に成功したイタリアの代表的飛行艇なのです。この正統でないスタイルにさすがのイタリア空軍も採用をためらっていたという代物です。垂直尾翼も3枚なんてなんて独特^^;
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■空冷星型エンジンを胴体中央に! ピアッジョP.119 試作戦闘機
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このスタイルはどこかで見たことがあると思いきや、アメリカのP-39エアコブラですね。航空機の重心近くにエンジンを配置することによって運動性能の向上を狙った設計なのですが、エアコブラとの違いは、液冷ではなく、空冷エンジンということ。
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空冷と液冷の違いは、エンジンの冷却方法なのですが、胴体の内部にエンジンを積むので、冷却手段は当然液冷にとは誰もが思う発想。
ところがこのP.119は、空気を沢山必要な空冷エンジンを積んでしまうのです。当然、機首下部に大きく開いたエアインテイクがデザインされ、プロペラを駆動するための延長シャフトやエアインテイクのスペースを確保するため、操縦席は胴体前部の高い位置に設置されています。
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この試作機、エアコブラと同様、振動問題で悩まされ、改良している間に休戦となってしまい開発も中止されてしまいました。
■これぞ世界の珍妙機!カプロニ・スティパ 実験機
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世界の珍妙機という特集があれば、殿堂入り間違いなしといえるのが、このカプロニ・スティパ実験機だと思うのです。
宮﨑駿の映画「風立ちぬ」で登場したカプローニ伯爵の会社で実験されたなんとも珍妙な飛行機です。
これ、胴体部分が太い環状になっており、その中にプロペラとエンジンが配置されているのです。胴体全体が一つのダクテッドファンというものになっていて、チューブ型の胴体が大きな推進力を出すとの構想だったのですが、実際には大きな空気抵抗と低騒音をもたらしただけで、他の性能は通常の機体よりも劣っていたそうです。
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この実験機、奇をてらった訳ではなく、極めて真面目な実験のためにこのデザインになったのですが、はたから見てるとなんとも珍妙な光景ですよね(笑)
この実験はダグデッドファン機構の効率をみるためでした。ダグデッドファンとは、プロペラのまわりを囲むことで、推力の無駄をなくし、効率よくプロペラの推進力を活かせる構造形態なのです。
デメリットとして空気抵抗が大きいので高速化には適さないのですが、現在でも低速のホバークラフトなどに活用されています。
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でもこのダグデッドファンそのものを飛行機にしてしまう発想はすごいですね。
実際は、機内のどこにも人や物を積み込むスペースがないことが致命的な欠陥となり実用化にはなりませんでした。しかし、この設計はジェットエンジンの開発への重要なステップともなるのです。
実際に飛んでいるオドロキ映像はこちら!わざわざ複座にする必要もないと思うのですが「俺にも乗せろ」的な発想なのでしょうか。実用化よりもこういう機体を作ってみようとすることをイタリア人は楽しんでいるみたい。
なぜ複座にした(笑)
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さて、一回で終わると思いきや、まだまだ面白い飛行機たちが出てきたので続きます(笑) → continua alla prossima volta!