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”世界で最も醜い飛行機”とまで言われた子。スーパーグッピー。
前記事の流れで、今回は”世界で最も醜い飛行機”とまで言われた航空機をご紹介します。この発言をした人は、「ヒコーキの心」でも有名な航空宇宙評論家の佐貫亦男(さぬきまたお)氏。(『世界の翼’72』朝日新聞社、1971年)
日本人のなかでも最も多くの飛行機たちに触れ、見続けてきた方だからいえる言葉だとは思いますが、ちょっと可哀想ですね。 では、さっそくその姿をご紹介しましょう。
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ホントに飛べるのかというようなデザイン
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うーんどうでしょうか。元々は普通の輸送機だったC-97(ボーイング377の旅客機の軍用タイプ)をベースに改造した、大型のジェットエンジンや、他の旅客機の主翼、胴体の部品などを運ぶために広げた航空機なのです。
ちょっと無理矢理感がありますが、製造当時は世界最大の容積を持つ飛行機でした。
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1960年代のアポロ計画のサターンロケットを空輸するために特別に改造した飛行機なのです。三面図を見るとその異様さがもっと分かるかと思います。
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先程の佐貫亦男氏は本機の外観をもって「世界でもっとも醜い極限を示した航空機」と称してます。なんか、おでこが肥大した魚を連想してしまいますね。なんだっけ?見たことがるような。
◆原型機はC-97
このスーパーグッピーの原型機は、C-97Jという輸送機です。
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民間の旅客機仕様としてボーイング377があります。
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初飛行は1947年。生産数は56機。パンアメリカン航空などで主に使われていました。最後の大型プロペラ旅客機として知られています。
当時はモダンな寝台車のような折りたたみ寝台。男女別の洗面室。バー用のギャレーやソファもあったと言いますから優雅ですよね。
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ただ、大きな機体が災いし、運用できる空港が限られるようになり、ローカル線などに回しづらいこともあり、現役期間は短いものとなります。
このC-97の機体を、宇宙開発用の輸送機として使おうとNASAからオーダーがあったのが、スーパーグッピーシリーズになるのです。
そう、この醜いと称されたスーパーグッピーはシリーズものなのです。
◆”妊娠したグッピー”と言われたプレグナントグッピー
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1960年代アメリカの威信をかけた「アポロ計画」がスタートすると、超大型のロケット部品などを空輸する必要性が出てきました。
そこで、このボーイング377(C-97)の胴体を拡大して輸送力を上げたのがこれです。
お腹が膨らむ妊娠ではなくて背中が大きくなった感じですな。作ってはみたものの、これでも容量が足りないとされ、スーパーグッピーが開発されたという経緯なんですね。
さて、このスーパーグッピー。5機も製造されて活躍したのですが、アポロ計画が終わった後は、エアバス社の旅客機の胴体や翼の輸送に用いられるようになります。
ボーイングにとってエアバス社とはいわば宿命のライバル。ボーイング社で作られたスーパーグッピーが、エアバスの生産のために手助けすることになって、「全てのエアバス機は、ボーイングの翼によって届けられた」と揶揄されるようになります(;^ω^) 。なんか皮肉な話ですな。
現在でもNASAで一機が運用されています。
使命とはいえ、無理矢理に肥大させられた機体をもってして”醜い”と称されたのかもしれませんが、ちょっと可哀想な気もしますし、じっくり見ていけば愛嬌もあっていいのではとも感じます。嫌いじゃないですよ。えぇ、むしろ好きかも(^^)