思わぬ活躍の場が与えられて花形に! 〜双発戦闘機たちの物語③
大型新人として皆の期待を一心に背負いデビューしたものの、大勝負の舞台でまさかの大失敗。期待外れの烙印を押され、失望と非難の眼差しで左遷の憂き目に。このまま人生が終わってしまうのか?そんな双発戦闘機たちの物語です。
◆捨てる神あれば拾う神あり?
護衛任務で完全に失敗した双発戦闘機たちは、戦闘機としての任務を外され、戦闘爆撃機や偵察機、沿岸パトロールなどの任務に回されます。
彼らは新しい職場ではそれなりに活躍をしてみせます。しかし、それはもはや「戦闘機」ではありません。それでも戦闘機として生まれたからには何とか成功させてやりたいと思うのは技術者たちやパイロットたちの親心というもの。
そんな状況のなか、戦局が不利になるにしたがって、日独側には、皮肉にも思わぬ活躍の場が出てきました。それは夜の戦闘です。
◆夜間戦闘という新たな戦場
昔から夜襲というのは、暗闇に紛れて相手の意表をつく奇襲の手段。視界が充分でない戦場ではかなり効果的な戦術です。
当時はレーダーなどの電子装備はそんなに発達していない時代(これを機会に急速に発展するのですが)。微かな明かりを頼りに索敵を続け、暗い飛行場に離着陸を繰り返す。昼間と違って危険が一杯の世界です。
これは、ある意味、攻撃する側にとっては好都合。単発戦闘機は装備が限られていますので、暗闇での迎撃は不向きです。昼間のように編隊を組んで爆撃機編隊へ一斉攻撃なんて不可能に近い状態。
ならばチャンス!ということで敵爆撃機隊は夜間攻撃をしかけてきます。 これが意外と効果的。なにせ昼間と違って迎撃してくる敵機がほとんどいません。これはいいぞと、いよいよ本格的な攻撃態勢に入ります。
逆にマズイと思ったのがドイツ空軍。おまけ的な夜間戦闘中隊は格上げされ、本格的な夜間航空団を編成するまでに拡大していきます。
部隊、機材、レーダーなど着実に戦力を強化したことに加え、夜間航空戦法も確立し本格的な戦場としての様相を呈してきたのです。
まずは侵攻してくる爆撃機をどう迎え撃つか。撃ち落とす相手が巨大な爆撃機だとより強大な火力が必要です。また、索敵に必要な長い滞空時間も欲しいところ。そして地上からの誘導を受ける通信士やレーダーなどの索敵装置を扱う兵士も乗せたいところです。
◆夜間戦闘機としては最適解だった双発戦闘機
そこで、一度は戦闘機として失格の烙印を押されたBf110が再び脚光を浴びることになります。何よりも相手は爆撃機になりますから、対戦闘機としての格闘性能は重要ではありません。
双発とはいえ、爆撃機よりは機体もコンパクトで戦闘機の名を冠したこともあり速度も早い。元々長距離護衛の任務で設計されていますので、長時間の上空待機と追撃を行う任務にも適しています。
さらにエンジンを主翼に配備したことで機首には思い切り重機関銃を集中配備できるという利点も。なにより積載量が大きく、単発戦闘機よりも重武装でレーダーも装備できるとあって対爆撃機には好都合の機体ということがわかったのです。
本来の目的のために要求された性能は昼間に発揮することはできませんでしたが、夜間では一転してあらゆる面で有利に働いたのです。おぉ。
◆主役に返り咲いた双発戦闘機たち
Bf110は再び脚光を浴びて夜間航空団の主力戦闘機として返り咲きます。そしてバトル・オブ・ブリテンでは散々な目にあった駆逐機航空団(ZJG)は夜間航空団(NJG)へと続々と編成されて行きます。
このような夜間戦闘機への転換は、ドイツのBf110に限らず、イギリスのブリストル・ボーファイター、日本海軍の「月光」や陸軍の「屠龍」も次々と同じ道をたどることになります。
彼らは、夜の仕事でなくてはならない存在になるのです。昼間よりも夜の仕事で生きがいを見つけた感じといったところでしょうか(笑)。よかったよかった。
Bf110G-4型に至っては最初から本格的な夜間戦闘機専用のタイプとして製造され、搭載限界まで装備を積み込み、あっぷあっぷしながらもドイツ夜間戦闘機の主力となるのでした。
また、使えそうな双発機は元は爆撃機であっても次々に夜間戦闘機として改修され、実戦に投入されていきます。
夜間戦闘機として改修された主な双発機(戦闘機、爆撃機、偵察機など)
・Bf110(もと駆逐機)ドイツ夜間戦闘団の主力
・ユンカースJu88(もと高速爆撃機)ドイツ夜間戦闘機の後半の主力
・ドルニエDo17Z(もと高速爆撃機)
・ドルニエDo217(もと高速爆撃機)Do17の後継機
・Me262B(ジェット戦闘機)モスキートキラーとして開発
・Ar234(ジェット爆撃機)数度の出撃のみ
・二式複座戦闘機「屠龍」(もと重戦闘機)B-29迎撃に活躍
・「月光」(もと偵察機)斜銃を搭載して威力を発揮
・「彩雲」(もと高速偵察機)斜銃を搭載
さて、市場が拡大していくと、我も我もと新規参入者たちがわらわらと入ってくるように、夜間戦闘という市場も、続々と新機種たちがデビューするようになってきます。
老体にムチを打って頑張っている彼らの存在を脅かす強敵や競合者たちが・・・。→最終回へ続きます。
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