双発戦闘機たちの悲哀〜双発戦闘機たちの物語④最終回
「夜の空戦」という思わぬ状況が生まれたことにより、主役の座から落とされていた双発戦闘機たちは、再び脚光を浴び、夜の主役へと踊り出ます。
そんな第二の人生を謳歌し始めた彼らを脅かす存在が。
やっぱり人生そんなに甘くない?
【ライバルの出現その1】夜間戦闘機キラーたちの参入
爆撃機だけを相手にしていた彼らにも強大な敵が現れます。それは同じく双発の航空機でした。その名もイギリスの高速爆撃機、デ・ハビランド・モスキート。
資材不足にあったイギリスで木製爆撃機として開発された飛行機なのですが、なんと、木製であるがゆえに敵レーダーに写りにくいというステルス性を発揮します。
当初は軽爆撃機として開発されたにも関わらず、その高速性とステルス性から夜間戦闘機としても改修され、ドイツの夜間戦闘機刈りに力を発揮します。双発機VS双発機ですね。
レーダーに映りにくい木製機モスキートは、爆撃機狩りを行うBf110の背後に忍び寄り撃墜スコアを重ねていく、まさに夜間戦闘機キラーとしてドイツ夜間航空団たちの脅威となります。
アメリカでもP-61ブラックウイドウという夜間戦闘機が登場して、鈍足なドイツの夜間戦闘機を狙い始めます。このブラックウイドウという愛称、クロゴケグモという意味があり、機体を真っ黒に塗装したことからつけられました。またの意味では「黒い未亡人」とも。
クロゴケグモ/交尾し終わった後のオスを捕まえて食べるので有名。
だから黒い未亡人とも言われているのか?
しかし全長15m超えで全備重量10トンを超えるこの機体、戦闘機と呼ぶにはあまりにでかいのですが、相手が愚鈍な双発夜間戦闘機なら全然OK。この機体も彼らを大いに脅かす存在になります。
【ライバル出現その2】夜間戦闘専用機の出現
更には味方からも主力の座を脅かす新鋭機が出てきます。それは、夜間戦闘を専門にした戦闘機たちです。彼らはまさに夜間戦闘のためだけに生まれてきた、いわばスーパー専門職ですね。
最も有名なのはハインケルHe219ウーフー。1942年に初飛行した夜間戦闘専用機です。もう、最初から夜間戦闘に特化した機体ですから、索敵レーダーに斜銃2門を搭載した合計6門の重装備。世界初の射出座席という最新技術も。重い装備を搭載しても600km/h超えの高性能を発揮します。
1943年6月1日の夜、先行生産型のHe219A-0が、初陣でいきなり5機のランカスターを撃墜し鮮烈デビューをします。その後も夜間戦闘機部隊の天敵であったデ・ハビランド モスキートを撃墜するなど、その高性能ぶりを示しました。しかしこれだけ高性能ながら生産機数はわずか268機。原因は政治的なものもあったようです。
He219ウーフー(ワシミミズク)という愛称がついたちょっと奇っ怪なスタイル頭がでかいところが似てるかも。
更にはフォッケウルフTa154という全木製の高速夜間戦闘機も開発されてきます。この機体はイギリスのデ・ハビラント・モスキートに触発されて素材の半分を木製した高速夜間戦闘機です。採用され量産が開始されましたが、胴体を接着する接着剤の不良が仇となり、墜落事故が発生したため途中で開発中止となりました。総生産機数は50機ほどでした。
夜間戦闘が激化してくるに従い、このように夜間戦闘専用に開発された機体のみならず、昼間も活躍している最新鋭のジェット戦闘機、Me262も夜間戦闘機としての改修をして登場してきます。
パワーに余力がある機体ならば、続々と夜間戦闘機としての計画が組み込まれてくるようになるのです。
◆双発戦闘機たちの悲哀
市場開拓が進むと新規参入が続々と入ってくるように、夜間戦闘という市場は実に様々な出自の航空機たちが夜空を賑わせます。
例えて言うなら・・・。
①昼間はダメでも夜はOK(Bf110、屠龍など)
昼間勤務から夜間勤務へ回された元エリートの中年社員。
②昼間は違う任務だけど夜は戦闘機としても活躍(Ju88などの軽・中爆撃機)
昼間は力仕事で夜もバリバリ働くガテン系社員。
③夜専用(He219など)
昼間はたっぷり寝ていて夜に活躍する今どきの若手社員。
④昼も優秀、夜もOK(Me262など)
昼も活躍している実力派。なので夜も駆り出されるエリート社員。といったところでしょうか。誇張はしていますが(笑)。
しかし、そんな中でも、昼間は駄目だったけど夜ならOKなおじさんたちは老体にムチを打って、最後まで主力の座で活躍をしていきます。
結果的には日独の夜間戦闘機たちは、連合軍の圧倒的物量の前に敗れていくのですが、元々はリストラ寸前まで行った彼らですから、その使命を最後まで充分果たしたのではないかと思うのです。
個人的にはこんなこともあって双発戦闘機たちには並々ならぬシンパシーを感じてしまうのです。かなり無理しているけど頑張っているなぁと。
今回の主役は、メッサーシュミットBf110でしたが、日本の「屠龍」も同じような運命を辿ることになります。
計4回に渡っての双発戦闘機についての記事でした。最後までお付き合いくださいましてありがとうございました。
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