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飛行帽の話〜パイロットはなぜ帽子をかぶるのか
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前から欲しかったんですよね、ベトナムエアラインのこの帽子。このカラーリング好きなんです。おまけに、蓮の花のマークだなんて。蓮は自分が一番大好きな花なんです。
成田空港のそばにやって来て約7年。毎日のように旅客機たちの音と姿を見ていますが、空を見上げて見るというレベルではなく、視界一杯の姿や真横で見ることも多いです。
そんな旅客機群の中でも、ベトナムエアラインは空に映える、とても印象深いカラーリングなんですよね。
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特に蓮って、日本ではお釈迦様の説話にもよく出てくるじゃないですか。お寺にも多いし。仏教国でもあるベトナムにはなぜか親和性を感じちゃうのです。
さっそくかぶってみました
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ということで今回は飛行帽の話でも。
■フルオープンの空はとても寒い!耳あては必需品だった時代。
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昔の飛行機は、風よけの風防が前にあるだけで、パイロットたちは大気に晒されっぱなしでした。まあ、速度もそんなになく、高くも飛べなかった時代はそれでも我慢できましたが、100メートル上がるごとに気温は0.6℃下がると言われていますので、高度1,000mの上空では、地上に比べて-6℃下がります。
加えて風を受けますから体感温度は更に低く感じますね。
湿度と風速を反映して体感温度を計算するサイトがあります。
→体感温度の計算法
真夏の戦場でもこんな感じ。 地上では耳あてを上げることもできます。
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世界ほぼ共通で、革の生地に裏側が毛皮になってます。山羊革に裏の耳宛にウールというのも多いですが、日本の場合は物資不足で、うさぎやネズミ(ヌートリア)の毛も使われたようです。
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ということで、飛行機が発達し始めた頃は、パイロットは革製の帽子に耳あてをつけたかたちで防寒用が主たる目的でした。
また、完全密閉型の風防になっても、このスタイルは続くことになります。
■ドイツの航空帽は機能的
第二次大戦が始まると、高々度任務も増加し、酸素マスクの必要性や作戦行動のための航空無線が装備されるようになります。
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独特のデザインはやはりドイツで、上右写真のような世界標準形から、上左写真のような頭頂部がメッシュのネットで顎紐もないものになってます。頭は蒸しますからね。
これに、無線機用のヘッドフォンとか喉マイク、酸素マスクを保持できるために帽子というよりは航空用備品保持具のようになっていきます(下右画像)。
更には銃弾の破片や着陸事故の頭部の保護目的からスチール製のヘルメットも登場してきました(下左画像)。今までの飛行帽がソフトタイプとすると、これはハードタイプといえますね。
■現代の飛行帽はヘルメットタイプ
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現代は操縦室などの機内で頭部を周囲にぶつけたときに保護する目的でFRP製などのヘルメットを着用するようになりました。
多くは強い日光や紫外線から目を保護する為の濃色バイザーが内蔵されていたり、無線電話用の支持アーム付きマイクや酸素マスクが付けられる作りになっています。
最近はパイロットの視界に直接情報を投影するヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装備した物も登場しています。
■旅客機のパイロットはなぜ帽子をかぶるの?
現代の旅客機の機長さんたちの帽子を見ると、そういう機能はないですね。あの帽子、必要?
そこで気になって調べてみました。
フライト前に機長と副操縦士は ”ウォーク・アラウンド・チェック” といって、搭乗する前に自分たちでも機体の外部点検を行います。機体の周りを歩いて異常がないか自らの目で確かめるのです。これはとても重要な点検項目。
たいていは機体を見上げることになるので、その際にエンジンや翼などからオイルや油圧液のしずくでもたれ、目にでも入ったら大変なことになります。そのための帽子であるとのこと。
現実でも、オイルが垂れてくることはよくあるそうで、最悪の場合、フライト直前で交代という事態にもなりかねません。
それに、雨の日や日差しの強い日に帽子のつばは助かりますね。また、車輪周りの突起物などに頭をぶつけた際の保護にもなります。ゆえにパイロットの帽子は飛行機に乗り込む直前に最も役立つものといえます。
ただ、この帽子、狭いコクピットに入り込むと今度は邪魔になりますので、真っ先に脱ぐことになります^^
もっと機能的な帽子でもいいのかなとは思いますけど、伝統の制服というのもありますからね。やっぱりあの帽子が一番だと思います。
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■機長と副操縦士を帽子で見分ける方法は?
ひと目で機長と副機長を見分けるポイントがありますのでご紹介。まず帽子をかぶっている場合ですが、帽子のつばに金モールの装飾があれば機長で、なければ副操縦士です。
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これ以外にも見分ける方法があります。肩章や袖章に機長は4本、副操縦士は3本といったようにラインの数で見分けることができます。
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機長は4本。副操縦士は3本ですが、じゃあ、2本線とか1本線ってあるの?気になりますよね。あるんです。
現在は双発2人乗りが主流になりましたので、見られなくなりましたが、2本線は航空機関士です。これはエンジンが3基以上ついた飛行機に法律的に乗員が義務付けられていましたが現在は技術の発達により、4発のB747でも2名での運行が可能になり、2009年のB747の引退をもって日本の航空会社では航空機関士がいなくなりました。
1本線は、会社によってばらばらですが、航空士、無線通信士、あるいは訓練生であったりするそうですが、こちらも見ないですね。
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