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重くても速い逆さカモメ、F4Uコルセア

 今回は、アメリカ海軍機のF4Uコルセアです。翼の形が特徴的ですが、これは逆ガルウイングといって、カモメ(ガル)の翼の形状を指します。逆ガルなのでカモメの翼の逆の形ですね。
 Ju87スツーカ流星改と並ぶ有名な機体だと思います。分厚い主翼、巨大なプロペラ、2,000馬力級エンジンの大迫力と、当時の日本機には到底望めない開発コンセプトの機体でした。


カモメ(ガル)を逆にするとちょうど逆ガル翼になります

◆空母運用に苦労した大馬力エンジン搭載機

 開発がスタートしたのは1938年と割と古く、F2Aバッファローの後継機として目論んだのですが、艦載機としては色々と問題が多く、一旦、F6Fに後継機の位置を譲らざる負えないことになります。
 開発のチャンスヴォート社は1,200馬力エンジンのA案と2,000馬力エンジンのB案を提出しますが、当時では化物級のこのエンジンを搭載する案に、関係者も度肝を抜かれつつもGoサインを出します。
 初飛行は1940年の5月。零戦はこの2ヶ月後に制式採用となっていますね。零戦のエンジンはこの時は1,000馬力ちょいですから、実は戦争前から倍近い差を付けられていたんですね。
 さて、このコルセア、翼の特性上「失速挙動が危険で、前方視界が不十分」という艦載機としてはかなりの不安要素があったので、デビューは艦載機ではなく地上運用機として全機が海兵隊に回されました。そのため、保険として開発していたF6FヘルキャットF4Fワイルドキャットの後継機となります。

逆ガルのおかげで主脚が短くできます

 その後、改良を重ね、戦争後半になって、後期型のF4U-1Aが、前作よりも着艦が容易になったことから、艦載機としての運用が始まり、F6Fは主役の座を徐々に譲り渡すことになります。
 F4Uコルセアは速度と機動性に優れた戦闘機だったので、速度で劣る相手では機動性で勝負し、機動性で劣る相手には速度で戦うことができました。 その大きさの割には変素早い戦闘機であったと言われています。

◆戦後も活躍したコルセア

 このコルセア、太平洋戦争が集結しても艦載機として活躍を続けます。同僚でもあるF6Fなどは旧式化のために退役し、新鋭機のF8Fも小型化のための運用性が難があって、活躍の場を失いました。
 コルセアは、大馬力があるため、爆弾の搭載量や機体の頑丈さも買われ、戦闘爆撃機としての汎用性も高かったのです。
 なにせ、当時の空母はまだ木造製甲板が多い時代。排気熱の高いジェット機の運用にはまだ厳しいものもあり、レシプロ機の活躍できる場はありました。1950年まで生産は続き、総数は1万2千機を超える傑作機となりました。

◆逆ガルウイングの特徴

 さて、この特徴的な逆ガルウイングについてお話を。決して奇を狙ったわけではなく主に2つの理由がありました。

理由その①主脚を短くするため

 まず、大馬力エンジンを効率よく推進力に転換するためにはプロペラも長大なものになります。すると主脚も長くなります。艦載機は乱暴に着艦することが多いので、そうすると今度はその主脚をかなり頑丈にしなくてはいけなくなるので更に重くなることに。
 主脚装置は飛行機の中でもかなりの重量を占めていますので、これではせっかくの大馬力にした意味がなくなります。
 ですので、主脚が付いている主翼の箇所をなるべく地上に近づけようとした結果、このようなW形になりました。

プロペラが巨大すぎて脚が長くなりますね

理由その②急降下爆撃の安定性を図るため

 この逆ガルスタイルは、胴体と主翼の接合部分が空力的にも優位で、かつ安定性が向上するという利点や、下方視界が向上するなどのメリットもあります。ドイツの有名な急降下爆撃機Ju87スツーカは逆にこの安定性を活かして急降下爆撃機として成功しています。

急降下爆撃機Ju87スツーカ

逆ガルのデメリット

 今度はデメリットについてです。安定性が高いということは、逆にいえば運動性の低下となりますので、高機動の戦闘機には不向きであること。
 揚力が得にくくなるので翼面積が大きくなり、失速もしやすいので、特に大迎角が必要な甲板への着艦には失速しやすい特徴があります。
あとは製造が面倒で全体的に重くなるなどでしょか。

逆ガル翼の三兄弟


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