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田舎源氏 竪二枚続

偐紫田舎源氏(にせむらさきいなかげんじ)は江戸後期に柳亭種彦が源氏物語を室町時代に翻案し、歌川国定と合作した江戸時代最大のベストセラー。暗に江戸城の大奥を描いたと噂されて天保の改革により絶版を命じられたが、人気があり浮世絵の題材にされた。

田舎源氏 竪二枚続は、刊行された1885(明治18年)年に、光氏と黄昏の道行の姿が明治政府から風紀を乱すと見なされ、すぐに発禁処分を受けた。そのため200枚程度しか出回らず、大変希少かつ人気のある芳年の代表作とされている。ものすごく高価だった。シリーズではないが大判竪二枚続の作品群は明治18〜22年の芳年が油が乗り切った時期に制作されて傑作を生んだ。

本作で描かれた場面は「偐紫田舎源氏」第5編で、主人公の光氏と黄昏が簾で村雨をしのぎつつ道行の場面。この後の場面では、今熊野の古寺へ逃げ込む(別に偐紫田舎源氏 三枚続として描かれた)(参考)。

出版当時、光氏の片手が描かれていないことが話題となり、世間の注目を集めた。芳年は「清元でも一ついい節廻しを聞かされるとあの調子でここでも謳ってほしいと思うものだ。そう思う所に味わいがあるもので、何もかも洗いざらい描いてしまっては巧味というものはなくなってしまう」と語った(出典)。

正面摺

中空の叢雲は、版木を濡らしてから絵の具をのせてぼかす「当てなしぼかし」で描かれており、摺りごとに濃淡も異なる(出典)。上下の絵で全く雰囲気が異なるが、それにより奥行きが出ている、非常に味わい深い傑作である。

この雲が各摺りで異なっている。
この摺りでは中央上部から黒い線が入っているが、他の摺りでも確認されている。
新版画の境地に達している

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