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カナダに暮らす先住民の今
カナダと先住民の歴史
カナダの地には多様な先住民が古くから暮らしていた。その土地にイギリスやフランスなどヨーロッパの人々が大西洋を渡って開拓をしにきて、現在のカナダが1867年に建国された。まだ建国から200年にも満たない新しい国カナダでは、今もなお決して少なくない数の先住民の人々がこの歴史的背景に起因する様々な課題を抱えている。ナイアガラの滝や国境を挟んでアメリカのニューヨーク州と隣り合うカナダのオンタリオ州トロントに滞在していた私は、カナダ先住民が今抱える課題を少しでも知ることができればという思いで、カナダ先住民の支援団体の開催するガイドツアーに参加した。
トロントのFriendship Centre, NCCTの様子
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トロントの中心部に位置するこのセンターは”Native Canadian Centre of Toronto”、略してNCCTと呼ばれており、トロントに暮らす先住民にさまざまな支援を提供することを目的とした施設である。
Native Canadian Centre of Toronto is a membership-based, charitable organization located in the heart of downtown Toronto in a beautifully renovated heritage building. NCCT offers a wide range of programs and services based on Indigenous cultural traditions and teachings. All are welcome.
訳:NCCTは会員制の慈善団体で、トロントのダウンタウン中心部に位置し、美しく改装された歴史的建造物を利用している。NCCTは先住民の文化的伝統と教えに基づいた幅広いプログラムとサービスを提供しています。どなたでも歓迎です。
実はこのNCCTのような先住民を支援するセンターは現在100以上存在し、活動しており、このような施設は ”Friendship Centre”と呼ばれている。Friendship Centreでは、日本の公民館のような施設提供サービスだけでなく、保険・住宅・雇用などより先住民の実際の暮らしをサポートする役所的な役割も担っている。
私が訪問した90分間のツアーガイドはこれら多様なセンターの活動の一環で、先住民の学生が自ら案内役として同行し、非先住民の人々に先住民の文化・暮らしの今を伝えることを目的とした企画だった。
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センター内の壁の至る所には、多様な先住民アートが飾られていた。
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ツアー後に案内される1階は、大きなスペース全体が先住民の工芸品等のマーケットになっていて、伝統的な耳飾りやネックレス、デジタルアートなどさまざまなものが売りに出されていた。
現代のカナダ先住民の抱える課題
ツアーの最後、こぢんまりとした交流スペースに全員が集まり、ずっと案内をしてくれた学生のまとめのスピーチを聞いていた。そこで彼はカナダ先住民の若者の異常に高い自殺率を例に挙げつつ、今を生きる先住民が他にも多くの課題を抱えていることを伝えてくれた。スピーチをする彼が、時折涙を浮かべながらもその現状を伝える姿は今も強く印象に残っている。
後からさらに具体的な彼らの抱える課題を調べると、さまざまな事例が簡単に見つかる。
カナダ統計のデータによると、先住民の若者の自殺率は非先住民族の若者より5~7倍高く、イヌイットの若者の自殺率は全国平均の11倍で世界でも最上位に入る。
2018年12月、先住民女性への強制的な断種が1930年代から2017年まで続いていたという衝撃的な事実が明らかになった。
過去に目を向けると次のような事例もある。
「真実と和解の委員会」の報告書によると1940年代には先住民の子供達6千人が虐待によって死亡している。
先住民のことを伝え、尊重する作品・文化
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先住民の歴史やストーリーを伝える作品はさまざまなメディアで存在する。映画にも、ヨーロッパ人のカナダ開拓の時代を描く”THE REVENANT”や、イヌイットの若者をラクロス部での活動を通して元気にしようと奮闘した教師の実話に基づいた “THE GRIZZLIES”が例として挙げられる。実際に現在も先住民として活動する女性の書いた本 “Unbroken”では、より先住民の暮らしのリアルを知ることのできる資料である。
またカナダには、先住民を尊重する姿勢を示す文化として、あらゆるイベントにおいて、冒頭の司会者のコメントで先住民への敬意を明言する慣習がある。私が対面で参加したイベントでも、司会者はまず、そのイベントが開催されている土地が先住民たちのものであることを、具体的にそこに暮らす先住民グループの名前を挙げて明言していた。この慣習は”Land Acknowledgement”と呼ばれている。
以上、私がトロントで見聞きした体験やその後の調査が、自分個人の中にとどまらず、本記事を通して読者の皆さんに伝わり、カナダ先住民の課題について考えるきっかけとなれば幸いである。
この記事を作成したチェンジメーカーについて
名前: 塩田 勇人/ Yuto Shiota [One Global Contributor]
略歴: 慶應義塾大学理工学部物理情報工学科卒業。大学4年生の卒業研究では量子暗号通信に関する研究に従事。卒業後、約1年をかけてアメリカ・カナダ・ヨーロッパ4カ国を旅する。現在主にフリーランスのエンジニアとして国内で活動中。 個人サイト:yutoshiota.com
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