花咲舞が黙ってない
池井戸潤 2017年
・あらすじ
・感想
先週の『不祥事』に続き、今週は『花咲舞が黙ってない』を読みました。結構長くて、読み終わるかどうか心配でしたが、何とか読み終えました。長いけど、ドラマとかですでに見たことあるような話もたくさんあって、とても読んでいて楽しかったです。
事務部臨店班に配属された「花咲舞」は今作になっても相変わらず、問題のあった店舗の業務指導を行います。それは時に鉄の牙をむけることも。しかし、「東京第一銀行」という腐りきった巨大組織に歯向かうことは、そう容易いものではなく、様々な邪魔が入ります。他の行員と同じく、上層部による銀行本体の保身のために、いいように使われては捨てられていくという残酷さを描いております。しかし、彼女はそう簡単に折れるような人間ではなく、熱い火花、冷徹な火花による泥沼な戦いを描いた作品でした。
フレッシュな感じの一行員「花咲舞」、逆に汚職を働き、都合の悪いことはすぐに隠蔽する上層部。この対比がとてもマッチングしていて面白かったです。本来、人を幸せにするはずの銀行に疑念を抱き、変えようとする姿と、利益や自分や銀行保身のためにあらゆる手段も辞さないという上層部の姿勢は、実社会にも似通った部分があると言えます。本来、職場というのは人々を幸せにするものであり、尚且つ自分の生きがいのためにあるものだと思います。しかし、いつのころからかそういう考え方が否定されるように世の中は傾いているように私も感じます。否定は言い過ぎかもしれませんが、二の次になっているような気がします。まだ、学生なので社会経験はありませんが、最近の不正や汚職のニュースを聞いているとそう感じます。この銀行も最終的に不正が発覚し、大変なことになったというところまで書かれています。不正発覚は、利益や会社の保身を優先したときに、ほころびが出た時の最悪の結果だと感じました。
実社会もこの小説のように、真っ当な社員の意見を無視し、自分たちの都合の良いように、隠蔽や汚職を行う上層部や会社があります。それは時に社会を巻き込む厄介な存在になることも。しかし、それだけでなく、人を幸せにするという本来の目的を見失ったもののようにも見え、残念にも感じました。もちろん、すべてがすべてこういう会社ではないとは思いますので、一概に言い切ることはできませんが。これは今の世の中を風刺した話だと感じました。
最後の解説を読んでいて驚いたのですが、この本はドラマの原作ではないようです。最初に『不祥事』が刊行され、その不祥事をドラマ化したのが2014年に放送された杏さん主演の「花咲舞が黙ってない」。それからまた、続編という形で『花咲舞が黙ってない』という本を発表して、それをドラマ化したのが今田さん主演の2024年版『花咲舞が黙ってない』だそうです。この本読むまでは全く分からなかったので、とても驚きました。
さて、今週も土曜日21時からドラマが放送されますね。今週は半沢直樹が登場するといいます。半沢直樹シリーズは読んだことないのでよくわからないのですが、Xをみていたら先週の放送後にトレンド入りしていましたね。これは気になりますね。今から楽しみです。