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#005|ビジネスにおいて重要なのは「再現性」

【はじめに】

こんにちわ。EDIIT Inc.・CEOの榎本です。

前回の記事「逆境をハネ返した、ボトムアップ型・組織改革」では、異なる企業文化が衝突する中で、ワンチームへと導く方法論について解説させていただきました。

課題を明確に設定した上で、解決策を考案し、ブレイクスルーへと突き進む。これが弊社のスタンダードモデルであり、これまでの記事の中心でした。

今回は少し趣向を変え「社会現象を科学する」というテーマで進めます。

大手広告代理店様との共創・取り組みの中で導いた、某アニメ大ヒットの要因分析。ファクトを集めるのに3ヶ月、分析をするのにさらに3ヶ月をかけたミッドランプロジェクトでした。

01.製作委員会とは?

皆さんは「製作委員会」の存在をご存知でしょうか。

これは映画やアニメ制作を複数企業の出資によって運営する、制作方式のひとつです。身近に触れる・視認できるシーンでは、オープニングやエンディングのクレジットロールとして流れてくる時に「〜20☓☓年 ○○製作委員会〜」といった明記に関して見覚えある方いらっしゃるのではないでしょうか?要は、互いの強みを活かしながら、宣伝を行ったり、コンテンツを放送・配信したりして、出た利益を出資比率に応じて分配する立て付けです。いわば運命を共にするJV(共同会社)のようなイメージです。

この大掛かりなチームの幹事を担うのが、多くの場合、大手広告代理店です。

「彼らがいれば、この作品は成功するかもしれない。自分たちも製作委員会の輪の中に入ろう」

そう思っていただける企業様を1社でも多く迎えられるIP(タイトル)を形成するのが、代理店側のミッション。ヒットに繋がるために製作委員会の利害を一致させプロジェクトを円滑にマネジメントできるかどうか。そのノウハウ・ナレッジ・既存資産を掴み言語化・可視化するプロジェクトが始まったのです。

02.大ヒットを「運が良かった」で、片付けない

当時、大ヒットしていたそのアニメは、ありとあらゆるシーンで見かけるようになっていました。漫画やゲーム、アニメやグッズ。そして映画と、少し前の「鬼滅の刃」のような盛り上がり方です。

しかし大事なのは、今、プロジェクトがどうなっているのか、ということよりも、これが未来にどう活かせるのか=「再現性は何か」を言語化できる状態にすることです。

「社会現象」と呼べるほどの大ヒットから再現性のあるノウハウ・ナレッジを導きたい。

そう思って手掛かりになる情報を、製作委員会の関係者に尋ねて回ったところ、ヒットの要因を明確な根拠を持って示せる人が一人もいませんでした。

大ヒットを「運が良かった」と結論付けては何も残らない。成功は、成功がゴールではなく、資産を抽出するところまで至って初めてゴールなのですから。

03.心を動かすのは、アナログコミュニケーション

こうして

「さあ、ファクトを把握するためにデータ分析するぞ!

と息巻いていたところ、早くも、最初の一歩目でつまづきます。課題は2つ。

❏ データが製作委員会各社に分散している
❏ データが紙でしか保存されていないものがある

シンプルに分析できる環境が整っていなかったのです。すぐに製作委員会の主要メンバーへアプローチをかけました。

「部分最適ではなく、全体最適目線で捉えて頂きたい。結果、貴社や製作委員会にとってのメリットが大きいことなので、データの開示・共有に、協力していただけませんか」

利害関係を意識しながら、根気強く何度もお願いすること。足を運び、目を見て、膝を突き合わせる。最後のところ、1社それぞれに、一人ひとりに、背景・経緯を説明し、目的とリターンを丁寧にコミュニケーションし積み重ねることで心を動かすほかありません。

一見、面倒臭いと感じてしまうことほど、そのプロセスは簡略化してはいけません。まだ関係性ができていない方に対してはなおさらです。

コロナ禍においても大切なお話を差し上げる場合は、WEBミーティングではなく、衛生面を十分に考慮した上で、対面でのお打ち合わせも辞さないのケースを取っていますが、そういった丁寧さ・誠実さ・愛が最後はモノを言うと考えています。

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04.不格好に見えても、解決に進んでいればいい

さて次は、もう1つの問題に対してです。

諸般の事情で、紙でしか残っていないデータ。ものすごく分厚い束です。とてもじゃないけど持ち歩けませんし、デジタルデータで一元管理しなければ深い分析ができない。

散々悩んだ挙句、プロジェクトメンバー数人で手入力する決意をしました。目が回りそうなほどの膨大なデータです。

作業している様子を見た、広告代理店内の関係者は

「よくできますね・・・」

とか

「もっとアタマのいいやり方があるのでは」

などと、冷ややかな目で見られたりと、もう、皆さん言いたい放題です(笑)

しかし、当時は、今みたいにAIで画像認識をしてデータをエクスポートするようなサービスもなかった。

それに先ほどもあった通り、近道はそう簡単に見つかるものでもありません。今回の場合、納期やリソースを考え、手作業が最適だと思い、決断したのです。

データの収集、デジタル化を進めながら、同時に、データをご提供してくださった企業様へのヒアリングを行う日々。

「本当に答えは見つかるのか」

と、当然不安が過ぎったことも何度もありましたが、ヒットが偶然生まれるなんてありえないという強い意思が、私のモチベーションを支えてくれました。

05.目に見えない力を、可視化して資産に変える。

プロジェクトが始まって数ヶ月後、仮説を立案してデータを見ることを何十回と繰り返しましたが、そう簡単に分析が前に進みません。

というのも、アニメの版権元の会社には多くのヒット作があり、これらが影響を及ぼしている可能性もあり、これもデータによる検証が必要なのです。

数値とのにらめっこを繰り返した結果、主要な数値なら最後の1桁まで言えるほどになっていたくらいです。吐きそうになった日もありました。

そしてやっと、ヒットの手掛かりがつかめてきた時、大きくは3つが要因であることがわかりました。

製作委員会の皆さんへのプレゼンテーション。その幕が上がりました。

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【プレゼン当日の様子、具体的な内容を知りたい方へ】
ここから先は当社のコアなノウハウ、ナレッジになります。解説をご希望の方はFacebook、またはInstagramよりメッセージをお送りください。ご都合が合えばぜひ、お会いしましょう。対面でお教えさせていただきます。
【お会いさせていただく場所】

EDIIT Inc.本社(東京都渋谷区恵比寿西1-33-6)
※遠方の方はZoom等のビデオ会議でも受け付けております。

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「すべてを出し切ったぞ」

と、虚な目で製作委員会のみなさんを見ていたところ、最後には大きな拍手をいただきました。

目に見えない大きな力も、きちんと、定量・定性の両面で分析することによって明らかになる。運がすべてじゃない。ヒットは人の力で創れる。

この事実が、心に響いたと後になってお聞きしました。

06.エンタメ関連のご相談が殺到

もともとはマーケティングに関する分析のみを進めていたのですが、気づけば、製作委員会のキャッシュフローも気になってしまい、

「今回の要件に本当に合致したサーバはもっと安いのでは?」

などと、おこがましくも、他の分野に関しても提言をさせていただいていました。

すると、製作委員会の各社から様々なオーダーが集まるようになり、弊社としてエンタメ事業部or専門チームの組成になりかねない状況でした(笑)。

 今回のプロジェクトを通じて私が学んだのは、多くの企業が、その活用先を見据えず、漠然とデータを集めてしまっているということです。

一元管理をし、きちんと考察することで、資産になる考え方が生まれたようにビジネスへの活用方法は無限に考えられます。

目先のファクトや課題に引っ張られず、取得しているデータに目を向け、定量的に定性的に物事に向き合うことで、必ず、価値のあるアウトプットを出せる。その想いが確信に変わった案件でした。

●編集後記:仕組みを考察するのが、EDIIT Inc.

今回のように社会現象に及ぶヒット商品を扱う場合、多くの人が、商品そのものに心酔してしまうことがあります。

けれど、数字をもとに分析してみれば、それが、一部はマーケティングコミュニケーションによって意図的に作り上げられたものであることが分かってきます。

奇跡に見える成果にも、必ず、どこかにマーケッターの考えた仕組みが存在する。それが偶然ワークするのか、意図的にワークさせているのかの違いがあるだけ。常にメカニズムを追いかけ、思い悩んでいく。これはEDIIT Inc.の基本姿勢と言い換えることもできます。

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