ロシア旅行の思い出話【2】
宿泊ホテルにて
まさかの午前2時。宿泊予定のイセチホテル(Hotel Iset)に到着した。ドライバーさんが、僕のバックパックをホテル玄関まで運んでくれた。その後は、チップも受け取らずに猛スピードで走り去っていった。もう遅いから早く寝たいのだろう。ホテル周辺も真っ暗で、とても静かだ。
コルツォヴォ空港からの道中は不安だらけだった。木々に囲まれた山道だったと思う、とにかく、ずっと走り続けてきたものだから、一体どこへ向かうものだろうかと・・・。インフラ整備も最悪で、車体が上下に激しく揺れていた。
ドライバーさんは、僕の不安を気にかけてくれたのだろうか、色々と身の上話を聞かせてくれた。ドライバー歴10年で、日本人を乗せたのは私で ○○人目だとか話していた・・・ような気がする。彼のロシア語は、早口で聞き取るの難しかった。
恐る恐るホテルの中へ入った。ドアがとても重い。きしむ音が聞こえてくる。
「こんばんは・・・」
僕はフロントに向かい、囁くような小さな声で挨拶をした。すると、小太りの男性クラークが奥の部屋から出てきた。挨拶は返してくれるものの、笑顔はない。確かロシアでは、「客には必要以上の笑顔を見せる必要はない」と指導されるのだとか。ロシア語の先生の教えを思い出した。無愛想だが、淡々と仕事をこなすクラーク。
「バウチャーとパスポート見せてください。それと、バウチャーにうちのホテル名が印字されていのるかも確認してみますので・・・」とクラーク。
僕はそれぞれを手渡した。じっくりとバウチャーを精査するクラーク。ホテル名を人差し指でなぞりながら、きっちりと確認している。そして、私のパスポートのコピーを取ると、原本を開いて印を押してくれた。これが「滞在登録」ってやつに違いない・・・そう思った。彼はゆっくりと頷き、私に部屋の鍵をくれた。「どうぞごゆっくり」と一言。
一段落したところで、ずっと関心のあった「空バウチャー」について訊いてみた。仮に旅行者が、ホテル名の記載されていないバウチャーを持ち込んだ場合、一体どのような対応をするのだろうか? だだ、今の様子だと、ここでは受け入れてもらえそうにないが・・・。
「海外のお客様さんの30パーセントぐらいは、空バウチャーだと思いますよ。宿泊料を支払っていただければ、問題ないですね。そのときは、私がバウチャーを作りますから。今どきこんな紙切れは時代遅れでしょう」
あっさりしていた。おそロシア。クラークは受付の用事を済ませると、早々に奥の部屋へと引っ込んだ。去り際に、レストランの場所を教えてくれたのだが、それが就寝前の挨拶代わりだったようだ。
自室に入ったのは午前2時半だった。部屋はとても清潔だが、水道水が茶色く濁っているのが玉に瑕。だが、これはホテルではなく、ロシアの事情であるから仕方がない。試しにさっとシャワーを浴びてみたが、案外さっぱりしていて問題はなかった。
さて、気分がリフレッシュしたところで、まずはお手並み拝見。僕の放浪癖が暴れ出す。部屋を抜け出して、ホテル内を歩き回ってみることに。消灯過ぎの探検も悪くはない。
同階の奥の部屋では、なんとカップルがお楽しみの真っ最中だった。漏れてくる声から判断して、レズビアン同士のプレイに間違いない。「節度は守ってくれ」と言いたくなる。近所迷惑だ。だが、イタズラ好きな僕は、疑いのある部屋をノックして、そしてダッシュで逃げた。ドアに「Do Not Disturb」の表札が見えたが、果たして犯人はこの部屋の住人であろうか?
再び部屋に戻った。すると、今度は空腹になった。そう言えば、何も食べてはいない。機内食を食べておけばよかったと今更ながら後悔。だが、持ち込んでいたカロリーメイトのことを思い出し、僕はむさぼるように喰らいついた。
さて、明日からどうしようか? まずはエレーナ先生の家に行くべきか? あてもなく街の地図を広げてみた。おや? 自分のホテルは街の中心部にあるらしい。僕は、ホテルの立地なんて調べもしないで予約したからなぁ・・・。
手前にはレーニン・ストリートがあって、その交差点を挟むと、ウラル大学やら銀行やらがある。さらに橋を越えれば、広いショッピングモールのような施設も。
どうやら街中を散策してみる価値はありそうだ。明日は歩き回ってみよう。エレーナ先生宅の訪問はその後でもいい。気持ちが落ち着いてきたところで、とりあえず寝る。
★自由に旅行するための「裏ワザ」を紹介★
バウチャー旅行には制約がつきもの。だが、ロシアを自由に旅する手立てが存在しないわけではない。最後に、その裏ワザを2点、有料にて紹介したいと思う。
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