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ファーストペンギンからローカルリーダーを目指す。目的は変えず、事業をやりながら手段を変えていくということ。

株式会社ローカル・インキュベート 代表 取締役 末永玲於さん

今回インタビューをさせて頂いたのは、民家をリノベーションしたクリエイティブスタジオ「B.BASE 」や、レンタルスペース/コワーキング/飲食事業の機能を持つ『Co-Creating-Lounge & Share House Kiwa』の運営を始めとし、クリエイティブの力で地域をもっと面白くすることを目指す、株式会社ローカル・インキュベート 代表 取締役の末永玲於さん。大学在学中に横浜から山形県村山市に移住し、学生起業を選んだ彼 の「起業の道のり」を伺いました。

起業はいつからはじめられたのですか?

2021年3月から事業を開始しました。1年後に、山形県村山市楯岡でレンタルスペースや飲 食事業、シェアハウスなどの機能をもつ拠点『Co-Creating-Lounge & Share House Kiwa』をオープンし、そこから更に1年が経ちま したね。現在村山市で事業をしていますが、はじまりは、大学一年生の時に村山の農家や行政と 知り合うようになり、そこから何度か通ううちに、面白い人たちがいるなと思い関わりを深めていき ました。当時、一緒に大学生も沢山連れてきていたので、地域の関係人口の創出と一致している ということで事業をいただくことになったのが大学2年生の時でした。

その後、村山市とはたびたびイベントやツアーを組んだりWEBサイトを作ったり、関係が出来て いたところでコロナがやってきて、「これからはずっと都内にいるのかな…?」と思った時に自分自 身疑問を感じるようになりました。悩んだ結果、やはり村山に移住して、村山市の仕事をいただき つつ、店舗をオープンするという形になりました。

『Co-Creating-Lounge & Share House Kiwa』外観

大学時代のきっかけとは具体的にはどんなことだったのでしょうか?

最初は新規就農者を募集するイベントのスタッフをやっていました。本当に偶然だったのですが、 そこにたまたま村山のキーマンのような方がいらっしゃり、そこがきっかけとなりました。

最初は村山で何をされたのでしょうか?

グリーンツーリズムで社会課題を解決しながら、農業基軸とした観光を創ろうということで、耕作 放棄地を開墾して、山形はそばが名産なので、そばを打とうという観光パッケージをつくり、大学 生を連れてくるというプランの構築をしました。

ビジネスに興味あったのですか?

一応経済学部出身で、ビジネスには興味がありました。特に、マクロな地域・社会・公共寄りの内 容にはとても興味がありました。知り合った人が面白かったのと、農業経済学を専攻していて、関 係人口とか耕作放棄地というのがトレンドにあったので、これを形に出来たら面白いのではと思 いました。

Co-Creating-Lounge & Share House Kiwaにつながったきかっけは?

今は村山と関わって仕事をするようになってから5年目くらいなのですが、移住前の2年間はふた 月に1回程来ていて、大学と並行していました。大学3年の時、コロナの影響で授業が完全オンラ インになったことで、卒業まで続けることができました。

大学2年生のときにいただいた関係人口の創出という役割が僕のバックボーンになっていると思 います。当時やっていたことは、イベントや観光などを通して短期的なキャッシュフローを生み出 すという仕組みだったのですが、一方で、若いよそ者がこの地域に入って来る時のハードルとい う課題も感じました。この地域にはフックがないので、強いコンテンツよりも人との関係性だった り、深いところに興味を持ってくれる人を集めるという観光のあり方が良いのではと考えるように なりました。

村山市には人とつながれる場所がなかったのですが、物や事よりも「人」を起点に集まってくれる 状態が理想だと思い、それをビジネスとしてやる事を考えたときに、ゲストハウスだったり、中長 期で住むのであれば、シェアハウスも必要だよなと考えました。そのうえで、やりたい事に挑戦で きるような場所にもしていきたいと思って、今の『Co-Creating-Lounge & Share House Kiwa』のラウンジスペースがシェア型になっ ていったというような過程をたどっています。

外から入りづらかったというのはどういうことなのでしょうか?

地元の顔の利く人といたら入っていけるのだけど、『ファースト地元おじさん』というか、そういう人 を起点に地域と関係を持てるかどうかがキーになるのではないかと思いました。

ツーリズムをやる中で、実際に来てくれる人がいる事が原動力になりました。 初年度に300人くらい来てくれていたので、そこでフィードバックを得ながら今の事業も作っていき ました。

我々の世代が面白がってくれる所が、『体験価値』という所で、お芋を掘ったり、草を狩ったり、焼 き芋を焼いたり、雪かきしたりとか、田舎の人からすると日常で発生する当たり前の作業が、都 会の人からすると特別な体験だったりする。鎌倉創りと称して、雪下ろしをやったりもしました。

事業の順序として末永さん起点からスタートしたのでしょうか?また、こういった事業をしていくと いうことは初めから想像をしていましたか?

全くしていなかったです。 僕を起点にスタートしていったのですが、割と行政と密にやり取りしていたので、その中で生まれ てきたような感じです。徐々に作り上げていったような感じですね。農業から始まり、別の事に広 がっていった形なので、もともと想像していた事業というよりは、色々とやっている中で見えてきた 構想が現在の形でした。

事業の中身を作るのは大変でしたか?何をしましたか?

事業計画を創る際には、支援機関など2つくらいに話を聞きに行きました。商工会で「やまチャレ (やまがたチャレンジ創業応援センター)」という支援制度があって、地元の中小企業診断士に計 画を見てもらい、P/Lベースに甘いポイントなどを指摘してもらいました。

資金調達としては銀行の融資と補助金をいただいています。 1年目の運転資金を足して、イニシャルで半分くらいは補助金なども活用出来たので進める事が 出来ました。補助金は返済するものではなくて、もらえるものなので有効的に活用できました。 他にも、同様のビジネスモデルをしている方に、聞きに行くということもしました。同じような事業モ デルの方の店舗に実際に食事を食べに行ったり、同じような宿泊施設に泊りに行ったりもしまし た。山形だけでなく、別地方の方の事業も参考に見に行きましたね。

始めは業種も理解もない中でどうやってやっていったのですか?

市役所、工務店、行政回りや、設備業者など関わったことが無い所ではありましたが、知り合い がいたのもありハードルはそこまで感じませんでした。市役所から紹介とかはなくて、自分で人脈 を見つける感じにはなりました。コワーキングスペースで出会った方に頼みたいと思って実際に 依頼をたりしました。本当にたまたま知り合った感じです(笑)

オープンまでで苦労したことや、大変だったことを教えてください。

銀行さんとのやり取りが苦しかったですね。査定基準が当初の私の想像の甘さもありますが、厳 しくて、世の中にまだあまり浸透していない「コワーキングスペース」のような事業コンセプトに対 して、資金をつけてもらうという所に苦労しました。

初期はコンセプト面を訴えていくことで説得していこうとしましたが、やはり数字が分からないとお 金は貸せないので、財務面での整理をしっかりと整理し、説明することで乗り切ることが出来まし た。

やっていて良かったなと思ってることは?

これに関しては、オープンしてからの方が当然ありますね。『Co-Creating-Lounge & Share House Kiwa』が地域のプラットホームと して存在し、そこに色々な人が集まり、色々なチャレンジが生まれるということを目指していて、そ のうえで集まる人と価値共創をしていくところをビジョンにしているので、オープン後はそれが 徐々に実現出来てきているという実感があり嬉しく思っています。

『Co-Creating-Lounge & Share House Kiwa』初期イメージ

当初と変わってきている事と変わってない事ってあります?

一番変わったことでいうと自分の提供価値の解像度が上がってきています。なんとなくカフェにす ると、人が集まりコラボが生まれるのではと思い、自分が立ってやっていたのですが、自分が立 つと事業効率はかなり悪くて…。更にカフェはなかなかお金になりにくいので、自分が入ってしま うとあまりよくありませんでした。そこで、「間貸し」という形を取ることで、やりたいという人の意思 を応援していくことができ、場所を貸して支援することで、業務効率という観点でも改善出来てき ています。

その転換をしてから、今が3か月目くらいなのでこれからではありますが、「場所を作っていく」と いう所が自分の価値だと認識することができました。

なかなか数字通りにはいかない中で「0→1」をどう作るかということや、自分の経験を通して行政 や不動産などネットワークができているので、そこを支援できることも強みだと思っています。

またレベニューシェアの形なので、お互いにとっていい形で支援する側もされる側も取り組めてい ると思います。

今『Co-Creating-Lounge & Share House Kiwa』にいる人で、イニシャルコストの資金調達なども自分でできちゃう人はすでにやって いるので、すぐにできない方や、やってみたいけど不安な人が挑戦できる環境という状態になっ ています。

運営メンバーや業態はどのような形になっているのでしょうか?

バックオフィスなどは私ですが、飲食で入っているのは6事業者です。3つが日替わりで入ってくれ ていて、週替わりチャレンジキッチンのような形態で運営しています。他の所はサロンで入っても らっていて、女性起業の方たちがサロンとして活用してくれています。


そういった方々はどこから『Co-Creating-Lounge & Share House Kiwa』を知って来てくれるのでしょうか?

一つはホームページが大きくて、村山エリアではこういった挑戦ができるところが多くないので、 店舗を探しているような人が半分くらい、あとは知り合い経由やテレビ見たなどの地元的なつな がりというところがあると思います。

『際-Kiwa-』 ロゴ

大学卒業後は、そのまま就職せずに事業をつくったのでしょうか?

最後まで就職の可能性もありましたけど、すでに事業もやり始めていましたし、行政の仕事も大 変ですが、仕事として成立していたので、やっていけるだろうというのもあり、事業を選択しました。

今後の展望はありますか?

『際-Kiwa-』が出来てようやく1年たって、これまでは「ファーストペンギンでとりあえずやる」という フェーズだったと思うんですが、これからはローカルリーダーを目指していきたいと考えていま す。せっかく『Co-Creating-Lounge & Share House Kiwa』でチャレンジしたい方が集まってきてくれたので、しっかりと伴奏していく 仕組みを整えたいと考えています。せっかく集まった人たちが、しっかりと事業計画的にもうまく 行くフェーズになったら、市内で独立させるような仕組みもしていきたいと思っています。こうした 取り組みは、インキュベーション施設の山形県村山市の『にぎわい創造活性化施設』Link MURAYAMAという施設と一緒になり、やっていきたいと考えています。

<プロフィール>


末永玲於
(株)ローカル・インキュベート代表取締役。
富山県砺波市生まれ。
慶應義塾大学 卒業

在学中、たまたま都内のイベントで出会った山形県村山市の人たちが面白い人で、軽い気持ち で遊びに行ったらハマる。それから月一ペースで通うようになり、気づけば2020年10月に移住。 時代状況も重なって、大学はオンラインで受講し、卒業。

■『B.BASE』 https://atelier-b-base.com/
■『Co-Creating-Lounge & Share House Kiwa』 https://www.ki-wa.online

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