コロナからマラソン練習への復帰
こんにちは。記事を見てくださりありがとうございます。
2月初旬から中旬にかけて僕は新型コロナウイルス感染症にかかりました。そこから1週間、まったく走らない期間、いわゆる『離脱期間』が生じました。
感染症にかかった場合に厄介なのは、ただ1週間練習を休んだ場合と比べて体の中に蓄積したダメージがより重い点です。加えて、新型コロナは1週間経てばすっぱり軽快とは行かず、約3割程度では後遺症を伴うという報告もあります。
自身は発症より約1週間経過してから職務に戻りました。それと同時にランニングも徐々に再開していきました。その最中で、業務中やランニング中のめまい、立ち眩みや易疲労性を強く感じました。これはおなかや喉の風邪になった時には感じなかったもので、いわゆる後遺症と考えてもよいでしょう。
これらの後遺症について見通しが立てばある程度の希望も持てるのですが、自分が探した中では体験記なども世には多くなく(=参考にできる情報があまりない)、その状態が余計に精神衛生を蝕んでいったように感じます。
今回、新型コロナに罹患し、マラソンに練習に復帰していくプロセスを感染症の経過とそこからの回復のプロセスの2章に分けて記載しました。同じように新型コロナに感染した方やインフルに感染した方が練習に戻っていく際の参考にしていただきたく思います。
前提:復帰する前には医師によるチェックを受けよう
そもそもコロナ感染後にスポーツを再開する場合、医師によるチェックを受けた方がいいかもしれません、という”前提”です。平均年齢19 歳の米国のアスリートで新型コロナウイル感染者 1597 人におい て、2.3%にあたる37 人が無症状あるいは軽症の心筋炎を認めた(JAMA Cardiol 2020 年9 月)、という報告があります。心筋炎を来している状態で強い運動負荷を掛けると、循環不全に至る場合や、最悪の場合、致死的不整脈を来す場合があります。
ここでは、2つの機関から出ている運動復帰についての指針を紹介していきます。
COVID-19罹患後のスポーツ復帰指針(1.1版)
日本臨床スポーツ医学会はいわゆる軽症(自宅療養、SpO2値の低下を伴わない)の場合でも、スポーツ復帰する場合に安静時の心電図を実施することを推奨しています。
ほとんどのケースは1に該当すると思います。
近くの循環器内科クリニックならば心電図検査は実施可能であると思いますので、実施希望の場合は近くの循環器内科を受診しましょう。
オランダ心臓病学会
次はオランダからの文献です。
以下はスポーツ論文を翻訳し掲載するサイト『スポーツ栄養web』から引用。
この指針に従うならば、全身性の症状が出現しなかった場合(=いわゆる無症候に近い)では、心電図をパス出来ます。このあたりは適切な受診を促す海外と日本の違いが出ているように思います。
ただ、日本では一般のクリニックでも心電図は施行可能ですし、時間/費用的に可能であれば心電図だけでも検査を受けておくと安心かもしれません。ちなみに心電図だけなら3割負担で400円行かないくらいです。(ほか初診料などかかります)
一般的な後遺症の経過
コロナに罹患したのち、3か月程度症状が残ってしまうのをコロナの後遺症、"Long-COVID"と呼んでいます。では、3か月以上持続する例も含めて、より短い期間で持続するケースはどれくらい居るでしょうか?
ネットに転がっていたあまり正確でない情報で恐縮ですが、仲田らの分析を参照すると以下のような記述がありました。
つまり約1/3の人が罹患後2週間で残存する症状を訴えていたということになります。この調査は日常生活レベルについてのものであり、ランニングなどの強い運動負荷をかけた場合についてはより多くの人が後遺症を自覚することでしょう。つまりコロナに罹患したあと約2週間うまく走れなかったとしても、それはごく普通のことであると理解しましょう。
上で紹介した「COVID-19罹患後のスポーツ復帰指針」でもどんな軽症のケースでも罹患後2週間は運動禁止、以降の2週間で段階的に復帰していくことを推奨しており、実情に即しているようにも思われます。
まぁランニングジャンキーになってしまっているランナーがそこまで我慢できるかどうかはまた別の問題ですが……笑
参考ケース:新谷選手や田澤選手の場合
COVID19に感染した超トップ選手はどうしているのでしょうか?女子10000m, ハーフマラソンの日本記録保持者である新谷選手の場合を見てみましょう。
という訳でトップ選手でも復帰に1か月くらいはかかる場合もあるようです。
箱根駅伝に出場した田澤選手の場合も、
この場合はベストパフォーマンスでなかったことが指摘されていますが、それでも1か月程度で元のレベルで走れているので、やはり1か月程度見積もっておくのがよさそうです。
経過
さて、自身の実体験です。
0日目
6 km x 2部練
午後練にてWSのキレの悪さ、練習後の疲労がいつもより強いと感じる。しかし、週間あたりの練習量を増やしていたこともあり、負荷増による疲労で説明可能と考え、他に取りうる手段もないので就寝。
1日目
(0日目の深夜) 自分は眠りが浅く、就寝中に1回くらい起きてトイレに行くのだが、そのタイミングで喉がすこし痛い感じがする。こ唾液を飲み込むと喉が痛む。けれども、水を飲んでうがいすれば回復するので冬の乾燥かな?と自己解決。再度就寝。
1日目午前ごろから倦怠感が出現、頭がぼーっとするので、仕事を早退し就寝。このタイミングで実施した市販の抗原検査は陰性。風邪かな、と思い解熱鎮痛薬を飲んで就寝。
2日目: 抗原検査陽性日
1日目の午前ごろから2日目の朝まで断続的になりつつも死んだように眠りまくる。
朝起きてくると39℃代の発熱。飲んだ解熱鎮痛薬が切れてきたのか、咽頭痛も激しくなり唾を飲み込むだけでも激痛。いやおかしいやろ、と市販の抗原検査実施。陽性。COVID19。
この日はなにもできず、ずっとベッドで横になっていた。が、偶発的に誘発されるつばの飲み込みでも痛みが出るため寝るに寝れない。
家族などに頼み、食事やゼリーなどを持ってきて貰う。ありがたい。他の体験記などを読むと食欲が消えるという指摘もあったが僕の場合はむしろ食欲は旺盛で、喉に優しいものを無限に食べていた。
3-5日
症状のピーク時期でした。辛かったですね。もう二度とかかりたくないです。
6日
37.5℃代で落ち着く、徐々に室内でら行動できるようになる。のどの痛みも酸っぱいものでなければ食べれる。フラフラするような形もあるが、近くのコンビニまでならなんとか外出も可能に。
夜はとりあえず解熱薬なしでも軽快。
経過のまとめ
病気の経過としては入院を必要としなかったため、軽症の部類に該当するとは考えられますが、人生いままで経験してきた病気の中で一番キツかったです。高校生以降、大きな病気をあまり経験したことがない健康体だったので、まさかこんな寝込むことになるとは、というような感じです。
復帰
第一週:とりあえずすこし走る
7日:軽快
体温は平熱になる。
しかし、喉の痛みがまだあり、トラネキサム酸とNSAIDsなしではまだ生活できない。
8日 6.00 km, 36:36
各種症状が軽減してから2日目なので、じゃあ走ってみましょうかね。と。ランオフはちょうど1週間。これ以上ランオフの期間を作りたくなかったというのが本音ですが、このタイミングでの再開は速すぎた気もします。
実際に走ってみるとビックリするくらいスピードが出ません。キロ6分30秒くらい。心筋炎などの懸念もあるし心拍が上がりすぎないように110 bpm程度に調整。
2 km程度から立ち眩み感が強く、撤退しようと思ったがなんとか6 km頑張り切る。
9日 11.15 km, 78:54
負けじと実施。
立ち眩み感などは前日に比べて軽減。
しかし全然スピードが出ない、という状況には変化なし。
ちょっと体に負荷かけてみるか……ということで10 km程度ジョグを、ところどころで心拍を130程度にまで上げてみる。変な不整脈などの出現はナシ。
その後の常軌を逸した疲労感などはなく、正常な範囲。
しかし、夜にはとんでもない疲労感が襲ってきたのでオーバーワークだったのだろう。
10日
前日の練習+復職で疲労感強く、この日はオフに。
普段の練習ではランオフを作らないという思想に支配されている僕ですが、今回のケースではランオフにするのが良いだろうと判断。強い根拠がある訳ではないです。
11日 11.0 km, 59:07
復職2日目。
仕事中に立ち眩みなどを感じてしんどい瞬間が複数あるも昨日練習オフにしていたため筋肉に刺激を入れたい。なので多少無理してでも実施。
病前はキロ5が出ていたEasyレベルの出力を行っているつもりでも、どれだけ頑張っても5分20秒程度しか出力されない。うーん、やっぱり病み上がりって大変だ。
10 km走り、そこに加えて1 km recoveryレベルの負荷を加えて終了。
良くなってきている手ごたえをつかみつつ、完全には戻らないのでもどかしい。
12日 5 km, 25:30
刺激入れないよりはマシでしょ、というノリで実施。
ラン時の心拍数も高く、いつもの+5-10 bpmくらい。これだけ違いがあるとEasyとModerateくらい違う。当然だが体も重い。
が、徐々にスピード出てきていることもあり、戻ってきてるのかな?と
13日 オフ
第二週:復帰目指して練習量を増加
14日 21.6 km
15日 16.2 km
16日 17.2 km
18日 15.4 km
19日 6.1 km
20日 20.6 km
21日 9.07 km
日常生活レベルで感じる後遺症は軽くなってきたので、練習量を増加させていくphaseに入る。まず目標としては1週間で80 km走れればいいな(普段の80-90n%)、と思っていたが実際には 106.17 km だった。
キロ5で走るといつもの心拍は125-130程度だが、コロナ後は130-135程度と+5程度心拍が高く、まだ完全には回復していない。けれども体感はいつも通り楽しんで(?)走れるように戻る。
第三週:30 kmマラソンに出場
23日目には30 kmのマラソンに出場した。
キロ4分50秒程度なら病前での体力なら心拍は135-140くらいになると予想するが、みたところ145-150程度。+10か……
第四週:ほぼいつも通りの心拍で走れるように
31日目には30 km走を再び実施、スタミナの落ちはあるものの開始-10 km程度までの速度や心拍はほぼいつも通りに。
結論
コロナに感染してから、
・走行距離を戻すのには2週間程度かかる。
・実際に走力を戻すのにはおそらく1ヶ月程度かかるのだと推察する。
追記
実際に走力を戻すのには発症から1か月かかった。1週間程度寝込むだけで4週間かかるのだ。普通の故障なら1週間の休みには1-2週間程度の休養で良いとされている。おそろしいウイルスだ。