【Audible本の紹介15】社会の変え方(明石市長・泉房穂)
今回紹介するのは、2023年に発行された「社会の変え方 日本の政治をあきらめていたすべての人へ」です。
明石市長だった泉房穂さんが書いた本です。地方自治体を舞台とする政治家の書いた本で、ここまで面白いと感じた本はこれまで読んだことがありませんでしたので、ぜひお勧めしたい本です。
「はじめに」が、心に響きました。
最初の5分の「はじめに」の部分を読むと、シンプルでわかりやすく、著者のメッセージが伝わってきます。
市長になったのは、障害を持った弟に対する冷たい社会への復讐だった。
平等な機会を築くため、たとえ自分だけでも報われない努力をしようと思った。
明石市で実行した日本初の政策の数々、特に5つの無料化など、ざまざまな子ども施策は、市民の生活とまちの経済に大きな効果をもたらした。
常々言っている「優しい社会を明石から」は、まず明石で日本のどこもやっていない施策を始める、そして、その施策を近くの自治体や全国に広げていく、という2つの意味を持つ。
全体として、政治をあきらめてしまっている日本人への熱いメッセージが感じられます。
子ども施策への思いが、熱く伝わってきます。
本書のメインは、明石市の「こども施策」に関する記述だと思います。
具体的には、、、
・「子どもに冷たい社会に、未来はない」
・「5つの無料化」の実現
子供医療費、第2子以降の保育費、おむつ定期便、中学校の給食費の無償化、公共施設の入場料の無料化
・やさしいまちは、行政だけではつくれない
・スタートは「経済」ではなく「人」
・10年連続の人口増、全国の中核市で「人口増加率」第1位
などの項目からは、著者が長期的な視点を有していて、様々な取組を支える理念がしっかりしていることがうかがえます。
また、、、
・「お金の不安」と「もしもの不安」に向き合う――まちのみんなで「寄り添う支援
・不条理を放置しない「離婚前後の子ども養育支援」
・お金を渡すだけが仕事ではない「児童扶養手当の毎月支給」
・人数の問題ではない「戸籍のない子どもの支援」
・やってるフリで終わらせない「こども食堂を全小学校区で開催」
・まちの迷惑ではなく、まちの誇り「児童相談所の設置と改革」
などの項目からは、明石市の施策の組み立てが、目的が明確で、内容が具体的であることがわかります。
一方、地方自治体で働く公務員から見ると、、、
本書の後半は、行政のあり方に関する記述がたくさんあるので、行政組織の一員の立場で、興味深く読みました。
例えば、、、
・予算を2倍、人員を3倍に「金がない」「人が足りない」はウソ。
・トップが腹をくくればいい。
・「適時」「適材」「適所」の組織をつくる。
・「汎用性」と「専門性」を組み合わせ、チームで機能させる。
・「縦割り」と「申請主義」を乗り越える。
・コロナなどの緊急時にこそ迅速な対応を。
・困っている市民に手を差し伸べるのが行政の使命・役割。
・市民から「預かった」お金に知恵と汗を付加して「戻す」。
・「バラマキ」ではなく「見守り」。
・行政だけでなく、地域で取組む。
などの行政組織の「あるべき論」が、具体的に示されています。
気になったのは、「行政組織は首長の判断に絶対的に従うべき」という感じの首長としての自負に基づく、行政職員への上から目線の意識を強く持っておられるのではないかという懸念。市長の施策選択やその優先順位について、理論的に同意できる職員ばかりとは限らないので、そうではない職員との間では頻繁に軋轢が生じたのではないか、という点が気になりました。
最後に、、、、
地方自治体を舞台とする政治家の書いた本で、ここまで面白いと感じた本はこれまで読んだことがありませんでした。audibleは8時間半と少し長めですが、内容に引き込まれる感じで、一気に読みました。