【Audible本の紹介32】新・幕末史 グローバル・ヒストリーで読み解く列強vs.日本(NHKスペシャル取材班)
今回紹介するのは、2024年1月に発行された、『新・幕末史 グローバル・ヒストリーで読み解く列強vs.日本』です。
本書は、NHK取材班が取材し、2022年に放送されたドキュメンタリー番組の内容をベースとする書籍です。
まずは背景から、、、
幕末から明治時代に移行する時期、黒船来航など外国からの圧力が強まる中、国内では尊王攘夷が叫ばれ、薩摩・長州からなる新政府と旧幕部勢力との間では、どちらが新しい国家の政治的な主導権を握るか、という争いが繰り広げられました。日本の将来の姿を目指し、多くの人々が活躍した、激動の時代でした。
【新しい視点】
本取材を行ったNHK取材班の新しい視点としては、この時期のさまざまな日本国内の動きに、外国勢力は何を考え、何を得るために、どんな行動をとったのか、また、その外国勢力の動きが日本の歴史に結果的にどのような影響を与えたのか、について、解き明かそうとする点にあります。
※外国勢力:イギリス、フランス、ロシア、ドイツ、アメリカ
NHK取材班による、海外の関係者からの聞き取りや現地調査を含む綿密な取材は、読者に、わくわくしながら読み進めることができるリアリティとともに、かみ砕いて小説調で書かれている点を含め、気軽に楽しめるわかりやすさを提供しています。
歴史上の出来事について、日本史と世界史をつなげてお互いの影響を理解しておくという視点は、世界と日本の関係が複雑に絡み合う流れがより進み、今後、より重要になると思います。その点でも、お勧めの本です。
【本書のポイント】
・幕末期の日本の動きには、いちいち外国勢力の思惑が働いていた事実
イギリス、フランスの各地での植民地争い、ロシアの南下施策、ドイツの植民地獲得の要望、という世界的な争いの極東での接点となった日本では、各国がそれぞれの思惑で動き、日本の各勢力の動きに影響を与えた。
・幕末期の外国勢力の主役はイギリス
当時、世界の植民地争い、貿易に最も影響力を持っていたイギリスは、日本を舞台する争いでも、最も優位に物事を進めることができる立場にあった。イギリスは、特に、経済的な利益の確保を優先とした行動をとった。
・イギリスはロシア、フランス、ドイツの動きを邪魔した
対馬進出を目指したロシアを封じ込めたり、幕府側についたフランスに対しイギリスが新政府側につくことで動きをけん制したり、また、戊辰戦争の際に北海道を植民地化しようとしたドイツの動きを止めたりした。
・有能な外交官パークスのシナリオに沿う形で幕末から新政府へ
イギリスに優位な形で幕府から新政府への権限の移行が進んだ。自国への利益を考えたイギリスの外交官パークスのシナリオに沿う展開だった。本国との綿密な連絡の記録が残っていて、パークスの考えや動きが判明している。
NHKスペシャル「新・幕末史」より
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