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【アニメを観よう】平成アニメ20選・前編
普段エヴァの考察記事を投稿している者がおすすめの平成アニメを紹介します.前編である本記事では平成前半の15年から10タイトルを選びます.
このリストの特徴は①平成に限定,②20に厳選.また,③最近アニメを観るようになった者による選抜,になろうかと思います.
はじめに紹介にあたって趣旨や選考基準などにつき説明します.長いですができるだけ目を通していただけると幸いです.
1.はじめに
(1)趣旨
アニメに興味を持ち,次に何を見ようとランキングやおすすめ紹介記事・動画などを眺めていても,最近の作品ばかりだし,数も多すぎるし,バックにいる企業に偏りを感じる…以下略,と気になりだすと結局,手当たり次第漁ることになりがちです.
そうして筆者自身がある程度漁ったこのタイミングで,いったん似た境遇の潜在的アニメファンのためにまとめておこう.これが執筆の動機です.
今回,読者として念頭に置いているのは,①アニメ自体あまり見ない方と②アニメファンのライト層です.一般的なサイト等は上述のように使いづらく,またアニメ通のリストだと昭和の作品が入ってきて,そうならざるを得ないとしてもマニアを目指すのでない限り敷居が高いという事情があります.時代を遡るとしてもまずは直近の平成で探している方を意識しています.
加えて,③普段は実写(映画・TVドラマ)は観るけれどアニメは食わず嫌いしている人たちも意識しています.これはアニメ以外にも映像作品があることを踏まえて,いかに彼らの自由時間にアニメをねじ込むのか,という視点です.具体的に後で述べる選考基準に関係してきます.
以上が企画の趣旨になります.
(2)選考対象
前編である本記事は平成の前半,すなわち1989年〜2003年までの作品を対象にします.アニメライト層による選抜というわけで主な配信サイトで見られる作品に限定されています.そして10作品(正確には10タイトル)に絞る関係で,著名監督作品と劇場作品はあらかじめ除外させていただきました.
著名監督とは具体的には以下の方々です(敬称略).宮崎駿(筆頭のジブリの面々),富野由悠季,押井守,庵野秀明,今敏,新海誠です.一定の評価・地位を確立している彼らの作品よりも,素晴らしいけど埋もれてしまうおそれのある作品で組んだ方が需要あるはず.なお配信でも見られない,すでに埋もれてしまった作品もあるかと思います.
また,劇場作品についてはこの配信時代に取り立てて区別する必要もないかもしれません.が,一応劇場ものには金ローという可能性があり(!),TV・OVAシリーズはそうしたお茶の間への乱入可能性は低いと考えこちらを優先したいということになります.
いろいろ述べましたが,数を絞るためというのが大きいかもしれません.あとは巨大出版社原作ものはこの記事にたどり着く前に見るハメになっているであろうから除外してあることくらいでしょうか.
なお,作品タイトル以外に色々書いていますが,基本的にネタバレ回避のため作品の内容にはあまり触れないようにしています.あまり前情報を入れずに観た方が楽しい作品もあるでしょうから.
ちなみに選考基準は記事の最後で取り上げます.それでは始めます.
2.1989〜2000年
(1)『銀河英雄伝説』(1988)
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まずは『銀河英雄伝説』から.現在リメイク版が制作・配信中.最初の映画『わが征くは星の大海』公開が1988年(昭和)ですが,その後のOVA,いわゆる「本伝」第1期が1989年(平成元年)に食い込んだので平成初期の作品として扱います.
原作は田中芳樹さんのSF小説.舞台は人類が宇宙で二大勢力,すなわち銀河帝国(独裁国家)と自由惑星同盟(民主国家)を形成し,覇権を争っている世界です.ジャンルは原作者曰くスペースオペラ,つまりSF冒険活劇ものだそう(ex. スター・ウォーズ).
内容は2人の主人公,帝国のラインハルト・フォン・ローエングラムと(上記画像上の人物),自由惑星同盟のヤン・ウェンリー(同下)を中心とする物語.さらに,各陣営で権力闘争に巻き込まれる個性溢れる軍人たちの浮き沈み,生き様も見どころになっており,群像劇の側面もあります.政争ものとしても見られるので楽しむ視点が増えてお得.
本作は本伝と外伝があり,本伝だけでも全4期計110話と長大です.もっとも,シーズンごとに話の区切りはついているのでいったん休みを入れることができます.それでも尻込みしてしまう方は,まず劇場版の『わが征くは星の大海』でその雰囲気を確認してみるといいでしょう.
私は止まらなくなりました.クラシック音楽がガンガン流れるのも新鮮でした.気品あふれる青年たちの少ない台詞でのやりとりがいいですね.
また,銀河“声優“伝説と言われるほど多くの声優さんが登場します.個人的にベジータの印象が強い堀川りょうさんや,癖強悪役の多い若本規夫さんがそれらとは異なる役を演じているところに注目です.
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(2)『機動警察パトレイバー』(1988)
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次に『パトレイバー』です.初期OVAが平成に食い込んだので平成作品と扱います.ファンクラブも活発で根強い人気を誇る作品です.新作『EZY』の公開が控えており,未視聴の方は今のうちに予習しておきたいところ.
ジャンルはロボットものです.用語説明も兼ねて少し述べると,汎用人間型作業用機械「レイバー」なるものが普及した社会.警視庁警備部に設置された「特車二課」が,レイバーのパトロールをする部署(パトレイバー)として数々のレイバー事件に挑みます.
その特車二課内の“第二小隊“に配備されたパトレイバー専用機体が「イングラム」(篠原重工98式AV)です.その1号機の操縦者・泉野明は自分の機体を「アルフォンス」と名付け大事にします.正式名称(型番),通称さらには愛称まで存在し最初は混乱するかもしれません.
世界観が作り込まれていて,予算が潤沢ではないためレイバーの配備は二機のみという設定や,やたら存在感の強い整備班など細かいところのセンスが光ります.
「パトレイバー」における映像作品は2つに整理できます.TVシリーズ(『On Television』+新OVA)と劇場版(+初期OVA)です.
TVシリーズは普通のアニメらしくバラエティに富んだ内容を持ちます.個性的かつ魅力的な第二小隊の面々が描かれるのはこちら.
これに対し劇場版は雰囲気が異なります.登場人物に変更はないものの,人物描写は大きく減り,事件の描写がメインになります.映画好きの押井さんが色濃く出ており,普段映画に親しんでいる人たちに興味深い作品になっています.
このように2つで別々におもしろいのが特徴です.どちらかが肌に合わなくても雰囲気が異なる他方を見ると見方が変わるかもしれません.
2つは作品世界がパラレルのため,見方としてはTVシリーズから始めるもよし,初期OVA『アーリーデイズ』→劇場版でもよし.さらに,初期OVAを飛ばして直ちに劇場版に向かっても問題ありません.
アニメの時間軸
・初期OVA→劇場版1→劇場版2の軸
・TV版→新OVA→次回作EZYの軸
TVシリーズではたまにエヴァ声優がゲスト登場します.だいたい林原めぐみさん,大塚明夫さん,立木文彦さん,山寺宏一さんです.
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(3)『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』(1989)
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次はガンダムシリーズから通称『ポケ戦』.タイトルは「0080」と読みます.これも昭和と平成を跨いだため平成初期と扱います.全6話.ガンダムに興味なくてもこれは観ておきたい.
ガンダムシリーズの中で1番好きという方もいるくらいの名作で,私も富野氏以外のガンダムなら本作が1番かもしれません.
本作の特徴は,主人公の1人である民間少年が一切モビルスーツを操縦しないところです.そもそもモビルスーツシーンが少ない.そのかわり戦う大人たちや巻き込まれるこどもが丁寧に描かれていて,そこが秀逸.また,話の発端となる作戦もガンダムにしては規模が小さく,この世界の片隅感もたまらないです.
ロボがほとんど登場しなくてもちゃんと「ガンダム」になっているところに,ガンダムシリーズの奥深さを感じます.
なお,人気声優・浪川大輔さんの声変わり前の作品です.OP曲もED曲も作品の良さを引き立てるいい曲.
監督の高山文彦さんは,業界で評価の高い方で上記パトレイバーの劇場版3作目『WXIII』の総監督を任されています.また,『ポケ戦』はアニメーター・磯光雄を知らしめた作品としても知られています(1話冒頭のロボシーン,4話のモビルスーツ戦などを担当.参照:WEBアニメスタイル「もっとアニメを観よう第3回井上・今石・小黒座談会(3)」.また同連載(5)では彼の『エヴァ』の作画が取り上げられています).
エヴァ声優では林原めぐみさんが参加しています.上の画像左のお姉さん役.
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(4)『少女革命ウテナ』(1997)
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次は『ウテナ』です.見終わった後,このアニメはいったい何だったのかとしばらく茫然とするしかない,圧倒的世界観を見せつける作品です.エヴァがいろいろ限界突破したことをいいことにさらにいろいろ突き抜けた,という印象があります.全39話.
とあるきっかけで王子様になりたい主人公・天上ウテナ14歳が,同級生・姫宮アンシーを救おうと「世界の革命」をめぐる学園内の争いに巻き込まれていきます.
影絵芝居,容姿端麗な美男美女の決闘,愛憎,希望と絶望etc…と内容が盛り盛り.舞台演劇や歌劇要素があって新鮮です.それが劇中全く違和感なく成立している不思議があります.
また,音楽もよくて,特に劇中挿入歌「絶対運命黙示録」は繰り返されることもあり耳に残ります.個人的にED曲『truth』が好きで,印象的な終わり方をする回は特に刺さります.予言ですが観たらサントラ欲しくなります.
最終話の「いつか一緒に輝いて」というタイトルがいろんな意味で心を掴んで離さない.
エヴァ声優は子安武人さんと三石琴乃さんが参加.上記画像下赤髪が子安さん,オレンジ色の髪が三石さんの役です.
(5)『カウボーイビバップ』(1998)
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不朽の名作.正直ここで紹介するのも野暮と思いながら念の為に入れました.内容はSFもので,星間飛行が当たり前の近未来が舞台.賞金稼ぎの主人公とその仲間が織りなすハードボイルド系の物語です.基本的には1話完結ものと主人公たち各人の物語の2つの軸で構成.全26話.
演出が冴えすぎ.また作画,音楽,台詞,何から何までかっこいいです.そして登場人物各々の物語も見応えがあります.
エヴァ声優からは(敬称略)山寺宏一,林原めぐみ,長沢美樹,大塚明夫らが参加.
なお第1話は無料で見られます→バンダイチャンネル
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ちなみに制作を担当した当時のサンライズ第2スタジオは後に独立してBONESとなり,後に『鋼錬』『エウレカ』『ひそまそ』等を制作します.
そして監督の渡辺信一郎さんは海外でも人気で,短編『ブレードランナー ブラックアウト2022』をオファーされ監督しています(YouTube公開.下記動画).
(6)『serial experiments lain』(1998)
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次は『lain』.ひときわ独特な作品です(全13話).日本のみならず海外でも人気があります.予備知識全く入れずに観て,おもしろかったです.
ジャンルはサイコホラー的な方向のようですが,ちっとも怖くないのでホラー苦手という方でも大丈夫です.邦画に似たゆったりとした間でじわじわくる不気味さがあります.人によっては退屈かもしれません.
主人公は,前髪に特徴のある岩倉玲音.14歳.亡くなった人からメールが来たり,彼女の知らないところで自身の目撃情報があったり不思議体験が続きます.これ以上触れない方が楽しめると思いますが一言.予備知識ないと置いてけぼりの可能性が高いですが,なんとか10話まで頑張っていただきたい.
特徴として,絵が独特な質感です.エフェクトの質感等が古さを通り越して味わいになっています.個人的にはああ90年代という感を抱けます.今リメイクしたとしても,あの鬱屈した雰囲気は出せないでしょう.
観終わるまで捉えどころのない作品ですが,終わる頃にはきっと高評価です.
加えてキャラデザを担当された安倍吉俊さんが原作・シリーズ構成(脚本)を務めた『灰羽連盟』(2002年)もおすすめです.
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ジャンルは日常ファンタジーものでしょうか.壁に囲まれた小都市に生まれ落ちる見た目が天使のような子どもたちのお話.ほのぼの日常の前半と徐々に秘密が明かされていく後半とで雰囲気が変わるのが特徴.ゼロ年代らしい彩度低めの絵作りも個人的に好みですし,お話もよかったです.
3.2001〜2004年
(7)『Witch Hunter ROBIN』(2002)
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次は『ウィッチハンターロビン』です.公式によればSFゴシックホラーアクションとのこと(下記サイト参照).全26話.ご覧の通り主人公の髪型が強い.
内容は「ウィッチ」という超常能力者の反社会的行為を取り締まる組織ソロモン,その日本支部に派遣された主人公・ロビンを取り巻く物語.彼女自身,超常能力のような「クラフト」の使い手です.
前半は1話完結型でウィッチをハントしていきながら,後半は物語が大きく動き1つの話が続きます.
狩られる側にも事情があったりと割り切れないお話も多いです.アクションといいつつ派手さはなく芝居はリアル志向.画面が基本的に暗く,落ち着いた雰囲気を持つ作品になります.
実はまだBlu-ray化されていません.世の中では4KUHDの規格も併行し始めている中で,放映20周年でも実現しなかったことは残念でなりません.なんとか実現しないものか(もちろんHD画質での).
ちなみに監督の村瀬修功さんの初監督作品であり,原案も彼自身なのでこの『ロビン』は村瀬さんの代表作といっていいでしょう(原作はサンライズ作品なので矢立肇との共同名義).村瀬さんは最近だと『虐殺器官』(2017年)や『閃光のハサウェイ』(2021年)の監督も務めています.また『ガンダムW』のキャラデザは重要な功績だと思います.先ほどの『ブレードランナー ブラックアウト2022』でもキャラデザ・作監をされています.
エヴァ声優からは結城比呂さんが参加されています.
第1話はYouTubeで公開されてます
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(8)『戦闘妖精雪風』(2002)
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続いて『雪風』です.原作は神林長平さんのSF小説.全5話ですが最初と最後は40分超.
内容を少し説明すると,突如南極に現れた「通路」から異星体「ジャム」が地球に侵攻するも人類は迎撃に成功.「通路」に押し返し,人類は逆に「通路」の向こうにある惑星フェアリィに拠点を築き戦っているという世界設定です.基本的にジャムとは空中戦で,主人公は空軍FAFのパイロット深井澪とその上司ジェイムズ・ブッカー少佐.
話に余裕があるのか基本的にゆっくりとした進行,丁寧な描写が特徴です.また,キャラデザが美形.戦闘機シーンは今見ても迫力あります.あとOP・ED曲がともに気持ちいい.
一応映像作品としてまとまっていますが,澪とブッカーの関係性だったり,本作では明らかにされない事柄が多すぎて気になることだらけです[註2].したがってどこか捉えどころのない作品なのですが,第1話がすごくいい出来なのでとにかく観ていただきたい.こういう作品,もっと作られないかなと思うところです
意外な点として深井澪役に俳優の堺雅人さんが起用されています.あとはエヴァのスタッフ,山下いくとさんがメカデザインで参加されています.
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ちなみに制作を手掛けるのはGONZO.このGONZOが原作の『LAST EXILE』(ラストエグザイル,2003年)もおすすめです.
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スチームパンクっぽい世界観.ヴァンシップという小型飛空艇の操縦士である男の子と後部座席で補助(ナビ)する女の子が世界の秘密を巡る争いに巻き込まれていきます.
ゼロ年代らしい低めの彩度と,絵や演出等全体的にクオリティが高く,面白いです.全26話のボリュームも世界観に浸れます.個人的には『コナン』の毛利蘭以外で山崎和佳奈さんの演技をたくさん見られる作品という側面も.
なお観た方向けにいうと個人的にディーオ(cv. 野田順子)の扱い(特に最期)に不満がありますが皆さんはどうでしたか.ちなみに続編『銀翼のファム』は雰囲気がガラッと変わるので好みが分かれるかと.
エヴァからは前田真宏さんが参加(プロダクションデザインと絵コンテ(2話,18話)).まずはOPかっこいいので覗いてみることをお勧めします(曲はなんだかスー○ーカーっぽい).
(9)『プラネテス』(2003)
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次は『プラネテス』.原作は幸村誠さんの同名小説です.
近未来SFで,月面に基地があったり民間人も普通に宇宙に出られる世界です.そうした世界で宇宙のゴミ,デブリを回収する部署に配属された人々の物語.
宇宙ものとしてのクオリティもさることながら,話が圧倒的におもしろく全人類におすすめできます.ヒューマンドラマの出来も素晴らしいです.また,主題歌・音楽もよくて作品を多いに盛り上げます.
鑑賞の際の注意点が1つ.エヴァでシンジくんにイライラしてしまう方は,本作でも序盤に同じような感覚に陥る可能性が高いです.伏線でもあるのでなんとかそこは乗り切って見進めて欲しいところ.
エヴァ声優からは子安さんが参加しています.いい人役で(!).
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なお幸村さんの別作品のアニメ化が現在進行中です.『ヴィンランド・サガ』こちらもおもしろいです.北欧バイキングのお話で暴力シーン満載なのでご注意.
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(10)『GUNSLINGER GIRL』(2003)
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最後は『ガンスリ』.相田裕さんの同名漫画が原作です.
舞台はイタリア.表向きは公益法人「社会福祉公社」,中身は対反政府組織として創設された極秘暗殺集団.そこに所属する肉体改造と洗脳が施された少女たちとその上司たる大人の男たちの物語です.
この部分だけで悲痛な内容が予想されますが,くどい芝居はなく落ち着いた雰囲気に仕上がっているところが好印象.余韻のある描写が多く,人間描写に優れていて話も面白くおすすめです.
基本的に少女たちを大人たちが理解しているのが救いなのですが,もちろん話の都合上理解しない人も登場します.
2期は制作体制が変わり,キャスト・スタッフが総入れ替えしたため作品の雰囲気が変わりました(音楽は変更なし).この点賛否ありますが,筆者からは2期のOP曲KOKIA「たった1つの想い」は名曲とだけ.よくMAD/AMVに用いられています.
なおBlu-ray化されているもののSD画質なのでHD画質の円盤化が実現してほしいところです.
4.選考基準について
最後に選考基準について触れておこうと思います.その基準とは,筆者が「またみたいか」どうかです.これだけでは曖昧なので下位基準を挙げると,①ヒューマンドラマ要素,②世界観の構築,③演出を重視しました[末尾註1].次にこれらについて少し説明します.
この下位基準相互の関係についてですが,いずれかが素晴らしければ選出しています.つまりヒューマンドラマ要素に欠ける作品も選ばれています.
次に個々の下位基準について.まず基準①.話が面白いことは当然として,加えて特にヒューマンドラマ要素の強い作品を優先させました.ここでヒューマンドラマ要素とは要するに人の心の動きのことですが,これを題材にしていない作品というのはほぼないので,ここではその心の動きを丁寧に扱っているかに重きを置いています.そして,これは見返す作品には人間ドラマが魅力であることが多いという個人的な経験則に依っています.
したがって,以下のリストにはジャンルの偏りがあり,基本的にバトル,コメディ一一色ものは少ないです.一般的にこれらのジャンルで括られる作品においては,心の動きを丁寧に描くことがむずかしいことが挙げられます.絵面として印象に残っても,話として印象に残らないので,面白くても一度観れば十分かなというケースが個人的に多いのです.
さらに青春もの(学園,部活もの含む)も入っていませんが,これは完全に好みです.もっとも,取り上げなかったジャンルについては,申し訳程度ですが後編で一部紹介しています.またこれこそ完全に好みですが,ラノベ原作にありがちなストーリーに無関係な早口おしゃべりシーンが苦手のため,そうした作品は基本入ってないです.
また,下位基準②の世界観構築について.この基準は世界設定の作り込みが評価のポイントになり,作品の説得力に関わります.一見,作り込む余地の大きいSFやファンタジーものが有利,日常系が不利というようにジャンルに偏りが生じるように思えますが,SF・ファンタジーは設定すべき量が相対的に多く,細部まで作り込まないと一気にチープに見えてしまう難しさがあります.ジャンルによっては諸刃の剣なので有利不利になるかは微妙です.
さて,先述した(実写)映画は見るけどアニメは疎い方たちを意識したことについてもう少し説明します.こうした方を念頭にアニメを勧める場合,絵が動くぞ!という直感的なアニメの特質とそこから派生する魅力に訴えるよりも,他の映像作品と共通する部分ですぐれた内容を備えた作品を勧めた方が,アニメの入口として入り易い,あるいは抵抗がないだろうという個人的な予測があります.アニメ的デフォルメが大丈夫な方は食わず嫌いしてないわけで.
そうした観点から,下位基準③演出について,アニメ的お約束が控えめな,あまりアニメアニメしていない,あるいは漫画アニメ色の低い作品を選んでいます.これはそうした作品を低く評価しているわけではなく,あくまで上述の戦略上の理由によります.
5.番外編その1
さて先ほどバトルものの作品は基本的にリストに入れていないようなことを言いましたが,1つだけ取り上げたいと思います.
それは『頭文字D』(1998年)です.
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原作はしげの秀一さんの同名漫画です.アニメを観る前はゲームセンターに必ず置いてあるというのが個人的な印象でした.最近,新作(続編)「MFゴースト」の宣伝も兼ねた過去作一気見企画ではじめて鑑賞し衝撃を受けました.おもしろすぎる.ボリュームは全81話+劇場版1作(「third stage」だけ劇場版.さらにリメイクである新劇場版もあります).
ストーリーは豆腐屋の息子が公道レースバトルに巻き込まれながら不敗神話を築いていくというもので,夜の峠で繰り広げられる1体1のカーチェイスが見せ場なので個人的にはバトルものという認識です.
筆者は自動車に全く興味を持たない車離れ世代でありながらもこの作品は大変興味深く拝見しました.疾走する車や効果的な音楽の挿入に漫画では決して表現できないアニメならではが遺憾無く発揮されています.
映像作品で自動車が活躍する作品の代表にたとえば『ワイ○ピ』などがありますが,『イニD』の特徴としては技術・心理要素が前面に出されバトルが展開される点が特徴です.ゆえに解説要員が毎回登場しますが,彼らの描写にもまた魅力があります(ex. キレイな中里).
最近でこそ少年誌のバトルものも設定が込み入ったものが普通になってきた印象ですが,単純なバトルものを技術面や駆け引きなどで細かく描写し大人の鑑賞に耐えるものに仕上げているのは当時の青年誌ならではなのでしょう.そしてもちろん車の知識がなくても十分に楽しめるものになっています.
なお,Blu-rayが販売されていますがこちらもDVD画質なのが残念なところですが,バトルものを何か1つ挙げるなら本作を推します.
今回は以上になります.ここまでを振り返ると次の通り.
・平成アニメ前期10選まとめ
『銀河英雄伝説』
『機動警察パトレイバー』
『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』
『少女革命ウテナ』
『カウボーイ・ビバップ』
『serial experiments lain』
『Witch Hunter ROBIN』
『戦闘妖精雪風』
『プラネテス』
『GUNSLINGER GIRL』
・その他
『頭文字D』
1つでも観たことない作品があればぜひチェックして頂きたい.何か補足等があればコメントください(Twitterでも可).
次回は2005年以降です.後編はこちら.
註
1:押井守さんはよく映画の3要素というのをネタにします.1つは登場人物,2つ目はストーリー,3つ目は世界観です.ハリウッドは映画を作る際,前者ほど重視するのに対して押井さんはその逆だそう.これに倣えば,本記事は後ろ2つ,ストーリーと世界観を重視して選考したということになります.
2:原作小説には続編がありますが筆者は未読です.謎の解明に期待できるのかは分かりません.
※追記(2023/4/18)
『灰羽連盟』『LAST EXILE』『ヴィンランド・サガ』を追加
追記(2023/10/16)
『頭文字D』を追加(「4.番外編その1」)