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投函の函ってなに?
投函とはどのような意味だろう? 投は投じるという意味の動詞だから、投函の意味を知るためには函の意味を知る必要がありそうだ。
投函
郵便差出箱、通称「郵便ポスト」に手紙・郵便を投じること、そして郵便受箱に手紙・郵便を投じることを一般に「ポストに投函する」「手紙を投函する」「郵便を投函する」などと言う。郵便配達員の配達という意味でも投函は使われ、「雨の日の完全投函を徹底する」という使われ方もする。では、この投函の函とはいったいなにを指すのだろうか?
函は箱か?
函館や銭函、箱根の雅称としての函嶺などいった地名から、私はずっと函を郵便差出箱や郵便受箱などの箱を指す漢字だと思い込んでいた。ウェブメディアでも
2つの漢字を文字通りに解釈すると、「投」は物を中に放り込むことを示す漢字です。そして「函」は箱を指します。つまり2文字の意味を繋げると、「指定された箱に何かを中に放り込む行為」という意味を持ちます。
名詞としては「投函(とうかん)」です。
漢字の意味として、「投」は投げ入れる・「函」は箱を指します。
つまり「用意された箱に投げ入れること」を指す言葉となります。
のように函=箱として記事が書かれている。
函は郵便物
しかし、『漢辞海』を見ると、函という漢字には手紙・封書・郵便物という意味があるという。
![](https://assets.st-note.com/img/1721394521497-ukGBcr8t0Q.jpg?width=1200)
また、『三省堂国語辞典』を見ると、「投函」の解説は
①郵便物を送るのに、ポストに入れること。②郵便物・ちらしなどを郵便受けに入れること。
と書かれており、いずれも郵便物などを箱に入れるという意味になっている。また函にはこんな意味もある。
①はこ。手紙を入れるはこ。ふばこ。
どうやら函はもともと文箱など手紙を入れておく容器を指しており、その容器の名がその内容物を示す換喩として使われたことで函は手紙、そして郵便を指すようになったようだ。鯉魚が手紙の異称となるのと同じ流れである。
よく考えてみれば、郵便制度のない時代には郵便差出箱や郵便受箱なんて存在しないのだから函がそれらの箱を指さないのは当然である。
投函の函は直接目的語
英語で第4文型はSVOOと習った。最初のO1は間接目的語、次のO2は直接目的語と私は教わった。投函の場合、郵便物が直接目的語だとしたら郵便差出箱や郵便受箱は間接目的語となる。私は投函の函を「函にO2を投じる」という間接目的語だと思い込んでいた。でも、『漢辞海』の意味に従うならば「01に函を投じる」のように函は直接目的語だったのだ。投函は投獄タイプの熟語ではなく投票タイプの熟語だった。
「お鉄が投函(トウカン)に行ってポストの蓋が裂れるやうな八当」(出典:二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉中)
日本語での投函の初出は尾崎紅葉とされる。この投函の前後には直接目的語がない。そして、すぐ後にポストという語が出てくるので投函の函を直接目的語とする意図をうかがえる。
重言
なので「郵便を投函する」「手紙を投函する」といった言い方は「馬から落馬する」「頭痛が痛い」などと同じように重言となる。重言は誤用ではないけれど、二重表現という修辞を効かせている言い方になる。ちなみに「ポストに投函する」は重言ではない、通常の言い方になる。
この短歌の「郵便の投函」は「頭痛が痛い」と同じく二重表現です。 https://t.co/MA7nqAFOcn
— onaï kōtarō (@onaikotaro) July 19, 2024
もう一度書く、投函の函は郵便差出箱や郵便受箱の箱ではなく、手紙・封書・郵便物という意味だった。