読書感想「日本野鳥の会のとっておきの野帳の授業」
「日本野鳥の会のとっておきの野帳の授業」 株式会社山と渓谷社
日本野鳥の会の、会報誌に載った記事の総集編ですかね? 日本中の鳥学者の奇行寄稿が1冊で読める本。写真もたくさんで、眺めているだけでも楽しい。
どうしても学者さんの書いたものなので、論文っぽくなりがちなのはしかたのないところ。でも一般読者向けを十分に意識してくれているから、簡単な文章だし嚙み砕いて説明してくれている。小学生でも楽々読める仕上がりになっていた。
近年、鳥界を騒がせた話題や、地道な長年の研究が実を結んだ話などなど。
バードウォッチャーが実はただの趣味の人ではなく、研究データの収集に非常に重要な人材だというのは初めて知った。
それと、日本が鳥研究ではかなり世界に遅れているってことも。研究が盛んで進んでいるのはヨーロッパのほうなんだって。
なんだかちょっと悔しいですな。
日本の心ーとかいって花鳥風月とか和歌とか鶯合わせとか、鳥関係は充実しているお国柄だと思っていたのに。
生活の中で鳥に親しんでいるだけに、学問で発展させようと思ってなかったのか。
身近なものほど大事さに気づかないってやつ?
たくさんの記事の中で、一番読み物として楽しかったのは「大事なことは、みんな骨が教えてくれた」。
もうタイトルからして何かのパクリでしょw
記事の著者は、川上和人。
「鳥類学者 無謀にも恐竜を語る」の人ですね。私のお薦めは「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」
サイエンス読本を多数出しているだけあって、やっぱり”読み物”を書き慣れている。ときどきひょいっと混ぜるユーモアが、良いテンポで読ませてくれるのだ。他の記事と比べても一段軽い感じ。内容は濃いのに読みやすい。
野鳥保護の章は、日本野鳥の会の本領発揮といったところ。
そういえば日本野鳥の会の本だったと思い出す。
保護しようにもまず生態が分からない。そもそも生息数が減ったのかも、個人の記憶や感覚でデータが無い。無い無い尽くしの話から、増えたら増えたで人間の迷惑になる話。ただ数さえ増えればめでたしってわけじゃない話。
なんとも保護活動の難しいことよ。
壊すのは一瞬なのにね。
戻すのはとんでもなく時間とお金と手間がかかるのだ。
一鳥好きとして、ちょっと野鳥の会に寄付でもしようかと心が揺れてしまった。
この本を買えば代金の一部は寄付になるのかな? kindle unlimitedで読んでいる場合じゃなかったね。