脇役の美学
皆さんは某戦隊ヒーローの一員になるなら何色がいいですか?
何色がいいですかというか、あのヒーロー集団の中から1人選ぶとなると結局赤になる気がします。
幼稚園の頃、母親から初めて買ってもらった財布は「アバレンジャー」のイラストが描いてあるポーチのようなものでした。
横一列に並んでいるヒーローの中で一番印象に残っているのは、真ん中の赤ではなく、なぜかその横にいる青でした。
不思議なものです。
「感謝されたい」いとこの悩み
私事で申し訳ないですが、私は公務員をしています。
同じ職場にはいとこ(1歳年下)もいます。部署は違うため仕事上のやりとりは少ないですが、年も近いので月に3回程度は一緒にお酒を飲んで、熱く語り合う中です。(いとこの話は別の機会にじっくりお話しします)
そのいとこがかなりお酒も入って饒舌になった時、私にこんな悩みを語りました。
「仕事をしても成果が目に見えない。活躍しても誰かが喜ぶわけでもない。ありがとうと言ってもらえない。でもミスをすると悪目立ちする。割に合わない仕事だと思う」
彼の性格をかなり理解している(その気になっているだけかもしれません)私からすると、彼がそういう考えを持つことは自然なことに思えます。
「しろくんは自分の仕事についてどう思うの?」
この件について私の考えも求められてしまいましたが、この答えは働く前、すなわち学生時代から固まっていました。
「住民にとってあたりまえの日々があたりまえに流れるようにするのが公務員の仕事」
あたりまえの日々を守るという仕事が達成される時、住民はそのことに気付きません。なぜならあたりまえの日々だから。
しかし、あたりまえが崩れた時、公務員の仕事の失敗が悪目立ちしてしまうのです。
これが私の仕事観です。
つまり、私は公務員としての自分の仕事を達成できた時、住民から感謝されないことこそが理想形だと思っています。
採用試験の面接でも話したこの考えが形成されたことには、中学生の時に観たあるドラマが深く関わっています。
まさかあの時のドラマが今の仕事に繋がるなんて
昔、「空飛ぶ広報室」という航空自衛隊の広報室を舞台にしたドラマの中で「自衛官は活躍しないことが世の平和です」というような内容のセリフがありました。
この言葉は、ドラマ放送から9年経った今でも私の中に強く残っています。
自衛官と事務職の公務員では大きく異なる仕事ですが、私の仕事も活躍しないことが良いことだと思っています。正確に言うと「活躍していると思われないこと」が良いことだと思っています。
あたりまえの日々を守る仕事で、公務員が活躍したと住民が考える時、そこには「あたりまえ」が崩れている現実、またはその危機が迫っている状況があり、このような状況にならないようにすることが理想だからです。
私が目指すヒーロー像
仕事終わりの帰り道にある保育園から出てきた親子が手を繋いで歩いているのを見た時、自分の仕事のやりがいを強く感じました。
その親子は、公務員である私の仕事なんてもちろん知るわけがありません。
でも、公務員の仕事が回り回ってその親子の健康で幸せな生活に繋がればこれほど嬉しいことはないと思えました。
世界の平和を守るヒーロー。
全ての色に役割があり、全ての色によって世界の平和が守られています。
その中でも、真ん中にはいない、放送後にどのような活躍をしたのかを思い出せない。
そんな青色のヒーローとして生きる。
青のヒーローとしてあたりまえの日々を守る。
それが私の持つ「脇役の美学」です。
戦隊ヒーローファン、ひいてはアオレンジャーファンに対して失礼な意見であれば大変申し訳ありません。
でも私はアオレンジャーを心の底から尊敬し、立派なアオレンジャーになりたい。
それが私の目標です。
私の仕事が、もしどこかでこの文章を読んでいる皆さまのあたりまえの日々に繋がっていたら幸いです。