マガジンのカバー画像

図解で読み解く「本と世界」

9
本を読みながら、考えながら、ついつい物事や概念の関係性を頭のなかで立体的に構造化してしまいます。それらを図解して、文章として紡ぎだしたものたちです。
運営しているクリエイター

記事一覧

【図解】『関係性の構造』で考える人類史 ~EP4「定住革命から農耕国家へ」~

気候変動と定住革命 ここで一度、人類がどのようなタイムスパンで集団生活の有り様を変化させてきたかを確認しておこう。霊長類である人類の祖先がチンパンジーと進化の袂を分かったのが、およそ600万年前。そして現生人類(ホモ・サピエンス)が登場したのは約30万年前といわれている。 現在分かっている限りで言えば、人類はおよそ紀元前1万2千年に定住を始めだし、農耕集落の最も古い証拠が見つかったのが定住からずいぶん経った紀元前5千年頃。文字を使用し、城壁を備えた最初の都市国家となると紀元

【図解】『関係性の構造』で考える人類史 ~EP3「脳の進化と<神>の発明」~

我考える、ゆえに我なし!?「即今・当処・自己」という禅語をご存知だろうか?簡単に言えば「いま・ここ・じぶん」。つまり「いまこの瞬間に、他ならぬこの場所で、自分が為していることに目(思考)を向けよ」という教えだ(と私は解釈している)が、逆に言えばそれだけ人間は「いつかの、どこかの、誰かとの、ことについて考えてばかりいる」ということだ。 もちろん、自分に関係する出来事が中心ではあるのだが、それにしてももう過ぎ去ってどうしようもないことを悔いたり、あるいは思い出し笑いしたり、まだ

【図解】『関係性の構造』で考える人類史 ~EP2「人間の自然状態」~

「立って歩く」⇒「共同保育」?各自いろいろと答えはあるだろうが、実は道具が出現したのは600万年の長い人類史のなかで比較的最近のことのようだ(といっても250万年前だが)。 では、直立二足歩行で何がもたらされたのか? ひとつは「共同保育」である。 人類は食物が豊富にあった森林からサバンナに出たことで、大型獣による捕食リスクや採食が困難なことによる飢餓とつねに背中合わせだった。そこで集団規模を拡大し、同じ血縁関係にない他者とも積極的な協力関係を築かなければ、厳しい生存環境を

【図解】『関係性の構造』で考える人類史 ~EP1「生物の自然状態」~

社会秩序はいかにして可能か2020年8月、コロナ禍における日本人のマスク利用に関する意識調査について衝撃的(!?)な研究結果が発表された。「あなたがマスクをしている理由はなぜですか?」という問いに対して、最も多い回答が「誰かを感染させないため」でも、「自分が感染したくないから」でもなく、「皆がマスクをしているから」だったのだ。それも圧倒的な比率で。【1】 実感として、同意できる方も大勢いるのではないだろうか。正直に言えば、この結果については「あぁ、やっぱりな」という納得感の

【図解】私的『人新世の資本論』~来るべき〇〇社会編~

マルクスが晩年に関心をもったという原始的な協同体における「生活様式」から「資本制生産様式」はどのように発展してきたのだろうか?現在では人類学や考古学の成果により、彼が生きていた頃よりもその変遷を素描することができるようになってきている。今回、自分なりに図解したことを整理してみた。今回は最終回だ。 私の『人新世の資本論』についての書評はこちら 1回目はこちら 2回目はこちら 3回目はこちら 4回目はこちら 資本制システムの黄金時代集権化された国家権力によって大規模な財政基盤

【図解】私的『人新世の資本論』~資本制生産様式の誕生編~

マルクスが晩年に関心をもったという原始的な協同体における「生活様式」から「資本制生産様式」はどのように発展してきたのだろうか?現在では人類学や考古学の成果により、彼が生きていた頃よりもその変遷を素描することができるようになってきている。今回、自分なりに図解したことを整理してみた。今回は全5回のうちの4回目だ。 私の『人新世の資本論』についての書評はこちら 1回目はこちら 2回目はこちら 3回目はこちら 効率的なエネルギー(石炭)の発見にともなう技術革新により、西欧の国内で

【図解】私的『人新世の資本論』~臣民から国民へ編~

マルクスが晩年に関心をもったという原始的な協同体における「生活様式」から「資本制生産様式」はどのように発展してきたのだろうか?現在では人類学や考古学の成果により、彼が生きていた頃よりもその変遷を素描することができるようになってきている。今回、自分なりに図解したことを整理してみた。今回は全5回のうちの3回目だ。 私の『人新世の資本論』についての書評はこちら 1回目はこちら 2回目はこちら メソポタミア、インダス、ナイル、黄河のような上流から運ばれる地味多い肥沃な土地は、穀物

【図解】私的『人新世の資本論』~定住型農耕国家編~

マルクスが晩年に関心をもったという原始的な協同体における「生活様式」から「資本制生産様式」はどのように発展してきたのだろうか?現在では人類学や考古学の成果により、彼が生きていた頃よりもその変遷を素描することができるようになってきている。今回、自分なりに図解したことを整理してみた。今回は全5回のうちの2回目だ。 私の『人新世の資本論』についての書評はこちら 1回目はこちら 人類にとって大きな転機となるのは、食料が豊富にとれる湿地帯などの肥沃な土地で定住化をはじめ、増えた人口

【図解】私的『人新世の資本論』~長い黎明期編~

マルクスが晩年に関心をもったという原始的な協同体における「生活様式」から「資本制生産様式」はどのように発展してきたのだろうか?現在では人類学や考古学の成果により、彼が生きていた頃よりもその変遷を素描することができるようになってきている。今回、自分なりに図解したことを整理してみた。今回は全5回のうちの1回目だ。 私の『人新世の資本論』についての書評はこちら まず押さえておきたいのは、人類がどのようなタイムスパンで「集団生活のあり様」を変化させてきたかだ。霊長類である人類の祖