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もしも時を巻き戻せたら。

もう、だいぶ前のことだが。

勤務帰りの電車内(立ち)で、目の前に男性2人がウンウン、と頷き合い、熱心に何かを語り合っていた。

見たカンジ。
アニメとか…アイドルとか…そういう話題で盛り上がっていそうな雰囲気で。

聞くとはなしに、彼らの会話が耳に入ってくる。
うん?だいぶ政治的な…国際情勢のはなし?何だろ、そういう話題?
大学生…ではなさそうだけど…と、ついつい興味が湧き、聴き耳を立ててしまう。

「…だからさ、四季、ってものがないから、彼らの土地には。」
『だね、砂漠帯。』
「そう。砂漠でさ、それでも雨季とかはあってもさ、過酷なんだよ。」
「そうなるとさ、やっぱり、信仰、なんだよ。縋るものが。」
『ははぁ…変化に乏しい分だけ傾倒する度合いが強い、と。』
「そう!そういうもの同士がさ、砂漠の中での貴重な資源をさ、互いの取り分とか、結局領土とか、そういうものを守ったり、主張する。そういう状態が長く続くとさ…」
私の脳内記憶より

なにアカデミック。めちゃ面白い話してる。
意外すぎた。

…どうぞ?続けて?

「過激になるわけよ。どんどん。」
『そこに信仰を合わせちゃうのね、聖戦、にカコつけて。より意義を持たせて、そんでより過激な思想が生まれていく、と…。』
私の脳内記憶より

ふんふん。
…続けて?

端から見れば、3人組と思われるであろう位置にまでついていた。

「だからさ、四季とか。そういう気候的な?土地的な?そういう、人智を超えてる部分での変化、っていうのがさ…日本でも”戦”はあってもさホラ…」
私の脳内記憶より



「”戦”はあってもさ、ホラ…」

面白かったのでここまで内容をありありと覚えている。

人生の後先で、あんなにも”後ろ髪を引かれる”降車は無かった。
私は電車を降りてしまった。
乗り換えを考慮すれば、終電となる時間だった。


とても、とても、後悔していることの一つなのだ。
何故、知的好奇心の赴くままに、そのままついていかなかったのか。

もしも時を巻き戻せたら。

きっと今なら、終電上等、と彼らの会話を気の済むまで拝聴したであろう。
(そら休職中だし)
何なら、そこもう少し詳しく、と進行として参加したかった。


明日のことを考えたのは決して悪いことではないが、数年経ってもこうしてずっと気になっているのであれば、正解は終電上等、の選択であった。

「…そういう変化っていうものが」
の続きは想像することはできなくは、ない。が、あのまま聴いていたかった。



もしも時を巻き戻せたら?と隣の女子達が話をしている。
不意にこのことを思い出した、今日の電車内。


-20220418-




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