愛とは、見えないところで見守ること
2015年に公開されたトヨタ自動車のCM
「愛とは、見えないところで見守ること」
をご存じですか？
父と子、それぞれの視点から描き出したストーリー、この動画はいつ見ても泣いてしまいます。
※もしご存じないという方はぜひYouTubeなどで検索してみてください
そんな私には、父がいませんでした。
私が満一歳になる直前に、急性骨髄性白血病でこの世を去りました。
まだ41歳という若さでした。
そして母子家庭で育った私にとっては、母親が父親のかわりもしていたのです。
そんな母が私のためにしてくれた
「見えないところで見守ること」
それが数十年の時を経て繋がった話をさせてください。
母子家庭だけど…
父を若くに亡くした母は、再婚することなくパートと内職をしながら、静岡の片田舎で姉と私を育ててくれました。正直お金に余裕はありませんでしたが、母の口ぐせは「母子家庭だけど、教育だけは不自由にさせないからね、勉強はできるうちにしておくんだよ」というものでした。
そんな母に育てられた姉と私。
姉は現役で早稲田大学に合格、上京して奨学金を貰いながら卒業し、大手企業に就職しました。
一方で私は大学受験に失敗し、地元にいるのも恥ずかしくて、東京の予備校に通いました。そして、どうせ浪人するなら姉よりも良い大学に行こうと、無謀にも東大を目指したのです。
そして浪人中は寝る間も惜しんで猛勉強しましたが、定期的に行われる合格判定テストでは、東大は最高でもC判定でした。
そのため願書を出願する際に東大は諦め、いつもA判定（余裕で受かるであろう）の国立大学を前期日程で受験しました。
そして受験した結果…
なんと不合格… まったく想定外のことでした…
その国立大学以外に私立大学は何校か受けていて、東京理科大などには合格していました。でも、私立は授業料が高額すぎるし、国立に落ちたら大学には行かないから東京理科大の入学手続きは不要だと母には伝えていました。
結果として後期日程で他の国立大学に受かったのでそちらに進学し、無事に卒業して就職しました。
もちろん東京理科大のことはすっかりと忘れていました。
そして何十年という月日は流れ、亡くなった母の遺品を整理していた時に、なんと東京理科大の入学金の領収書を見つけたのです。
なんと母は、28万円もの入学金を東京理科大に支払っていたのです。
そうなのです、母は私が国立大学に落ちても、私立の東京理科大に通わせる決心をしていたのです。そして母はそのことを私に言わなかったのです。
「愛とは、見えないところで見守ること」
その領収書を見つけて、私は涙が止まらなくなってしまいました。
母の思いを、その当時は全く知らなかったんだと…
そして感謝しようにも、亡くなった母には直接伝えることはできません…
なんと東京理科大で講座を持つことに
さて不思議なご縁なのですが、今年は東京理科大のオープンカレッジで講座を持たせていただくことになりました。
もしかしたら母校になっていたかもしれない東京理科大に、このような形で関わることは、何かしらの導きがあったのかなと思います。
私には今、三人の子どもがいます。母の「教育だけは不自由にさせない」という方針を引き継ぎ、子どもたちが学びたいこと、興味を持ったことにはなんでもチャレンジさせています。
さらに来年は長女が大学受験です。はたして彼女の可能性を担保するためにどこまで親として腹を決めるか、そしてそれを本人に黙っていれるか…
「愛とは、見えないところで見守ること」
トヨタ自動車のCMに出てきたような父、そして私の母のような父になれるのか… 引き続き精進していこうと思います。
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きっと母も天国から見守ってくれると思います。
「愛とは、見えないところで見守ること」
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