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長期プロジェクトだからこそ「生の声」を保存するべき|AIを活用した簡単インタビューログまとめのすすめ

みなさんこんにちは、NEWhサービスデザイナーの北村です。
今回はいろんな調査をする上で欠かせない「インタビュー」に関して、自身の体験をもとにAI活用してサクッとログを残しておくフォーマットを作っておくといいんじゃない?という記事です。


長期プロジェクトの途中参加者は、「生の声」を知らないままで熱量や実感の共有ができない

事業開発は長く続いていくプロジェクトです。
長くプロジェクトが続いていく中で「あのときインタビューした人の言葉は本当に実感がこもっていた」「あの発言でやっぱり必要なプロジェクトだと実感できた」という強い熱を原動力の一つとしてプロジェクトを動かしていくことも少なくないと思います。
しかしプロジェクトに途中参加したメンバーは、実際に調査の際にその声を聞いていない上、インタビューのまとめやプロジェクトの区切りの総括資料しか読んでおらず、今までの熱量やニーズがある、という強い気持ちを共有できないことも多々あると思います。

実際私はプロジェクトに途中参加しながら、他のメンバーが「調査の中でも〜〜という発言がやっぱりあったし」ということを会議の中で発言しているのを聞きつつ、
本当にそんな発言があったのか?
いつ誰が言ったのか?

ということがわからないな、と思っていました。
社内報告用にサマリーなどにまとめられていることも多いのですが、まとめられすぎていて生っぽい発言が見当たらなかったり、KJ法などで分解されすぎているデータを渡されて「これはどんな背景の人がどんな文脈で言った言葉なんだ…?」みたいなことを察するのに結局生データを参照したり、結局キャッチアップに時間がかかるなあ、と思うことなど様々です。

じゃあ引き継ぎの時に全部のデータを共有しておけばいいじゃないか!というと、そのまま行うのは結構大変で、インタビューの書き起こしを送りつけて「実際の声はこんな感じだったから読んでおいて」と言ってみたり、インタビューのビデオを共有して「みておいて」という共有は、結構ナンセンスなんじゃないかな、と思います。

こういう状況は長期にわたってプロジェクトを行っていくにつれ、チームの熱量が低下する原因にもなりますし、チーム内に情報の格差を引き起こしてしまうとても良くない状況だなと思いました。

一方、インタビューをした側からすれば「早くまとめて次に進めたいのに、引き継ぎで必要になるかもしれないってレベルのインタビューを一個ずつまとめるなんてやってられない!」というのが現状だと思います。

そんな状況を解消するために、プロジェクトを通したインタビューログを簡単かつ一覧性のある状態で残しておくというおすすめをしたいと思っています。

インタビューログを手間なくまとめるには?ーAI任せでやってしまいましょう

インタビューの生の声を残したい、でも一つ一つ示唆のもとになった発言をコピペして抽出し、人ごとに分類して…なんて正直やってられませんよね。
そんなときに活用したいのがAIです。今ではもう当たり前ですね…。

やりかたは簡単です。
❶どんな示唆をこの調査で得ていたかをAIに教える。
❷インタビューの書き起こしなどの生のログデータをAIに投げ込んで、そのまま示唆に紐付く発言を抜き出してもらう。

これだけです。

Claude3、GPT-4o、なんでも基本的には大丈夫です。
ただしいくつかポイントがあります。

サマリーの形式をある程度統一できるように、指示を固定にしておく

これはいわゆる出力プロンプトと呼ばれるものを一定にしておく、ということです。指示をそのときその時でバラバラに行うと、インタビュー対象者ごとにまとめの形式や抜き出したい部分が違ってしまうなど、本来の目的である「新しくプロジェクトにインした人が情報を拾いやすい」という状態になりづらいでしょう。

入力したものの学習をブロックしておくなど、情報の取り扱いに注意する

これも当たり前のことかもしれませんが、ChatGPTなど、利用するツールによっては入力した情報をそのまま機械学習に使われてしまう規約になっているものも多いです。
インタビューというのは、基本的にその場限りの情報で外には公開しない約束をしていたり、社外秘の情報もたくさん含まれていることも非常に多いです。
利用しているツールの情報学習がブロックできるかどうか、プランや規約をよく確認した上で利用しましょう。

インタビューサマリーのまとめかた

❶インタビューのログ全てを詰め込むTOPページ

まず、Notionで「インタビューのログをここに貯めているぜ!」というページを作っておきます。いろんなページが点在していると混乱するので、とりあえずここにアクセスすればプロジェクトで今までやってきたインタビューはここに貯まってる、という状況を雑に作っておきます。
資料をとにかく簡単に見れる、一覧性が保持できる、という観点から今回はNotionを利用していますが、使いやすいツールで構いません。

このインタビューログTOPには、下記を整理しておきます。

インタビューの出力プロンプト
出力されるまとめの形式をある程度揃えるため、アウトプットのプロンプトを規定しておいておきます。
プロンプトなどは使っていくうちにアップデートされていくものだとは思うので、最終更新がいつなのかなども一緒に記載しておくといいかなと思います。
プロンプトのサンプルは後ほど解説します。

・各リサーチページの一覧
このページでは「案件一覧」として私の関わってきたプロジェクトをまとめていますが、プロジェクトごとにこのログページを作成しさらに下層に「○年○月業界リサーチ」「○年○月顧客需要度調査」「○年○月ユーザービリティ調査」などなんの調査を行ったかをタイトルにしたページを作成しておくと良いでしょう。

Notionの画面イメージ
プロンプトはコピペできるようにトグルで格納しています
プロンプトはコピペできるようにトグルで格納しています

また、各調査ページには調査の概要を冒頭にまとめた上で、対象者一人一人に関してのまとめを記載する形にしています。

このページ設計で特に気にしていることは、なるべくローカロリーで作れる・運用できるということです。
基本的にはログページになりますので、「あったらいいけど面倒だからやらない」ということが冒頭に書いた問題を引き起こしていると思っています。
なので、基本的には本来の調査で作った調査をコピペし、あとはAIに投げちゃえばタスクが終了する、という形が望ましいと思っています。
そのため、階層はあまり深く作りすぎない、考えて描かなければならないところは排除するという作りを意識しています。

❷各インタビューをAIでサマライズして、リサーチページに格納

TOPページが用意できたら次はそれぞれのインタビューをサマライズしましょう。
ここで重要なのは「サマリーにする」ことではなく「生の発言を残しておく」ことであり、かつ「まとめや示唆を導き出すのに使った重要な発言が抜き出されていること」です。

というわけで、これ以降はインタビューの情報をバシバシAIに投げ込んでまとめてもらっていきます。

どのようにまとめているか、まとめだけ見たい方はこちらのリンクに参考ページを作成しておきましたのでご覧ください。
https://www.notion.so/newh/2024-04-4b5974ab0970482b9430d51e6b7076ba?pvs=4

サンプルの内容ですが、下記のような構成になっています。
リサーチ全体の概要
これはそもそもどういうリサーチを行なっていたかのメモです。
リサーチを行うにあたって作成した資料などからそのままメモしておくと良いと思います。

  • リサーチの概要・目的

  • 対象者(スクリーニング情報)

  • データ収集方法

  • そのときに得られた重要示唆

などを記載しておくと、発言を振り返るときに便利かなと思います。

❷各発言者(インタビュイー)のログ
これがメインコンテンツになります。
ログは下記の画像のように、プロフィールや総括を書いておいて、その後に具体的な発言を表でまとめています。

インタビューの概要が掴めるように対象者のプロフィールと、どういうインタビューだったかの総括を冒頭に表示
調査で導いた示唆のエビデンスとなる発言を引用して抜き出し。
これがいわゆる参照したい「生の声」の部分になります。

こちらを出力するのに、プロンプトは下記をフォーマットとして利用しています。前項で紹介しているインタビューLOGのまとめページのサンプルとなります。
https://www.notion.so/newh/Interview_LOG-ab9ccc77419241c59dbf9510301645aa?pvs=4
あくまで参考例ですので、毎回やり方に合わせてカスタムしていくのが良いかなと思っています。
こちらで出力した結果は下記のようになりました。

Claude3の出力結果

このまま表をコピーして結果として貼り付ければ完了です!

Notionならこんな感じで表もそのままコピペできちゃいます。楽ですね

大切なのは運用方法を決めておくこと

サマリー自体は作るのが簡単なことがわかったかなと思います。
では簡単だから誰もがすぐやるか?と言ったらそういうわけではありません。
こうしたまとめを作ろう!と決めたのであれば、これを誰がどのようにやるのか運用方法を決まり事として決め、しっかりチームで運用しましょう。

例えばですが、インタビューが終わった瞬間にまとめる場合は下記のように行うなど、チームでそれをやることが当たり前になるようにオペレーションを決めておきましょう。

  • インタビュー1件ごとに担当者を決めておく

  • インタビューが終わったあと、スケジュールに5分だけ時間を入れておき、自分のとったメモを投げ込んで整理する時間を作っておく

  • インタビューのサマリーとしてそれをチームメンバーに担当者が共有する

示唆に基づいてサマリーを作る際に、示唆を作った人がチームメンバーにログの割り振りをし、示唆の元となった発言を探してもらう…など、全員の実感値作りに使っても良いと思います。

まとめ

今回この記事でまとめたのは、あくまで後から来た人が生っぽい発言を参照しやすい環境を作っておいて欲しいという自分の経験から考えられる改善案でした。
自分でも、人ベースでどんな発言があったかを参照しやすいなと思いますし、情報というのは元のデータに立ち返って考えることが大事だな、と昨今考えることも多いので、自分のためにもやっておくと良いなと思います。

また、AIを使ってインタビューを分解するのは、分析時に客観視点としてとりあえずのまとめを作るというのにも有効で、これから先どんどんこうした分析は時間短縮されていくのだろうなと、今回記事を書きながら思いました。
その中でも、実際に人の声を聞いた時に発見した自分の気になるポイントを大切にしたいですね。

ぜひ皆さんも自分なりの方法でインタビューログと向き合ってみていただければと思います。


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