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AI分析とも相性がいい!チャットインタビューレポート|メリットとデメリット

みなさんこんにちは、お久しぶりです、初めまして。NEWhサービスデザイナーの北村です。

今回は、お仕事の中で現在のサービスの課題を発見するために「Sprint」というサービスを利用して3日間で8人のインタビューを1人で行う、ということをやってみたので、そのレポートです。

結論としては「結構よかった!」という感想です。ただし、やっていく中で合うケースと合わないケースがありそう、と思いました。
どういう状況でマッチするのか、逆にこういう場合はやらない方が良さそう、ということなどをまとめますので、今後チャットインタビューを検討している方の参考になればと思います。


今回使ったサービス「Sprint」

今回はチャットインタビューサービス「Sprint」を使って実施しました。

簡単に説明しますと

  • 自由に作成できるスクリーニング質問1問をモニターに投げかける

  • その時間にオンラインだったユーザーが質問に回答していく

  • Sprintに登録されたユーザーの年齢や職業、性別などの属性と回答を基に、インタビュー対象者を1人ピックアップ

  • すぐにその場で30分間のインタビューをチャットベースで行える

という感じのサービスです。
今回は利用しませんでしたが、5人程度を一気に行うマルチインタビューや、画像や動画を提示しながら行うタイプのインタビュー、ビデオインタビューも可能なようです。
詳細はサービスURLをご覧ください!


調査の経緯、概要

今回そもそも調査を行ったのは、「既存サービスの契約数を上げたいと考えており、関連するアプリからのユーザー導線を強化したい」という目的を持ったプロジェクトの初期段階です。
調査設計段階では、仮説として下記のようなものをイメージしていました。

  • なんとなくサービスの詳細を理解していないのではないか

  • 契約するだけではなく、その先の利用内容に不明点や不安があるのではないか

これらを踏まえて現在のユーザー体験の課題を明らかにすべく、調査の目的を
「サービスの契約に至らない(踏み切らない)理由」を明らかにし、既存サービスから加入を促す対象とすべきメインターゲットの人物像を具体化する」
としました。

聞きたいことだけ聞く!

ここから「加入に至っていない人」「加入したことのある人」にそれぞれ4人ずつ、合計8人にインタビューを行う想定です。


「いいじゃん」と思ったこと

インタビューに慣れてなくてもできる

本当の対面インタビューに比べて体力消費が1/3くらいだなと思いました。
私はそもそもあまり人と話すのが得意でないタイプで、インタビューはZoomだったとしても「はあ…緊張する…よし、やるか」とめちゃめちゃに気合を入れないとできないタイプです。
しかしそんな私もチャットで行うインタビューは「顔を合わせなくて良い」というだけで、インタビューというタスクの大幅な負担軽減になると思いました。
喋ってする会話よりも、お互い考えながら文字を打つので、時間はかかりますがその分考える時間が取れ、慌てて会話を失敗するというリスクがだいぶ減りました。

調査設計から完了まで1週間

調査会社に頼んだりする手間がないので、全て自分でやらなければならない反面、実査まで一気に進めることができるのがこういったサービスを使う中でも最も大きなメリットだと感じました。

(プランによるけど)リクルートした人が想定した対象じゃなかった時の傷が浅い

調査会社を使い、綿密に行う調査でのリクルートはかなり慎重になり、なるべく多くのスクリーニング項目で絶対にドンピシャの人をリクルートしなければ…という不安があります。
一方で、こうしたサービスを使うことで、この3日間でできるだけインタビューして、当たった人が5人いればいい、くらいのテンションでできるので、リクルート設計の時間もだいぶ圧縮できますし、違った場合はもう一度別の人に聞けばいい、とすぐに切り替えることができます。

AI分析と相性がいい

ビデオや対面のインタビューでは聞き取り逃しがあったり、書き起こしに時間がかかったり、自動書き起こしでは聞き取りができない部分が出てきます。
その点、チャットで行えばインタビューのログが全て文章で残るので、そのままデータをテキスト系の生成AIに投げ込むことができます

また30分という短いインタビューのため、基本的に得られる示唆は限られています。
長時間のインタビューで様々な発言が取れるものとは違い、わかりやすい比較がしやすいため、生成系AIに全てをなげこんで、必要な部分のみを抽出し、まとめるという分析に適しています

もう一つAIとの相性の良さとして、簡易なため「もう2〜3人調査をしておくか」ということがフットワーク軽く行えます
普通の調査であれば聴取が増えれば増えるほど分析が大変になってしまいますが、生成系AIで結果比較やユーザー分類を行なって仕舞えばあまり労力は変わりません。

数を頼りにざっくり分析をするまでは超爆速でできる

もうちょい人数聞いときたいな〜が簡単にできる
→人数が増えてもAIを使えば簡単に出力できる
→インプットする文字データも正確に簡単に手に入る

というイメージですね。

懸念事項

30分聴取で聞けることは思った以上に限られている

前項ではとにかく「簡単で楽」という点をメリットとして挙げていましたが、裏を返せば「難しいことはできない」ということでもあります。
30分、しかも文字を打つ、という作業が発生するため、思った以上に聞ける内容は少ないです。
ポイントは、事前にこのインタビューの目的は何か?を明確にしておかないと、あれもこれも聞きたい、とやっているうちに本来聞きたかったことが聞けなくなってしまいます。

今回のケースでは目的を
『サービスの契約に至らない(踏み切らない)理由』を明らかにし、既存サービスから加入を促す対象とすべきメインターゲットの人物像を具体化する
としました。
つまり具体的な質問は「サービスの契約に至らない理由は」「何があれば契約に至るのか」という点に終始して聞くことになります。

実際に質問項目を立ててみると
・サービスを使い始めたきっかけは?
・何で知ったのか?
・今どれくらい使っているのか?
みたいなことから聞いて…と考えますが、ぶっちゃけ人によってはこの3つの質問に満足いく回答を揃えるのに5〜10分くらいかかっちゃうこともあります。

もう少し目標を広く取って「サービス契約に関するユーザーの潜在的なペインを発見する」などにしておくと、サービスの契約までのフローを思い出しているあたりで30分が終わってしまう、なんてこともありそうです。

気軽に聞き取りできるが、無駄打ちの可能性は多い

これは選ぶサービスにもよると思うのですが、気軽に一般ユーザーにスクリーニングを投げられる分、モニターの質も玉石混合です。
非常にモチベーション高くやってくださる方もいれば、顔が見えないことをいいことに、何かの片手間で適当に回答する人が釣れちゃうなんてこともザラでした。
3日間で8人の聴取を終わらせよう!と私は思っていたのですが、夜などの想定対象ユーザーが活動している時間でないといけないなどの制限もあり、実際は4日かかるなど想定期間内に終わりませんでした。
想定した質の聴取が8人分で揃うまで、12〜14名程度は聴取を行わなければなかったです。

何度かインタビューが無駄になる想定で期間は組んでおいた方がいいでしょう。

対象となるユーザーのデモグラはかなり限られる

チャットインタビューは様々なユーザーが集まっていることが利点でもありますが、「ある程度若くてテキストでリズムよく会話をすることに慣れた人」でないと、示唆として使えるレベルの発言を引き出すのは難しいと感じました。
なので、たとえば想定しているのがシニア向けのサービスであったり、40〜60代の主婦など、普段業務や日常会話で大量のテキストをやり合う経験がない人を対象としたサービスの検証には向かない、と思いました。
今どきの40代なんて若いんだから大丈夫でしょ!と思うかもしれません。しかし、LINEなどの日常会話とは違い、考えていることをテキストとしてリアルタイムに文章として発する、というのは訓練されていないとできないことなのだな、と感じるくらいにはここにハードルがあった気がします。

早く出来るとは、思い通りに出来るということではない。


おすすめのケース&利用を避けた方がいいケース

おすすめパターン①1〜3種類の設問をライトにサクッと聞く

聞きたいことを多くても3つくらいに絞って、「これについてどう思っているかだけ教えて!」というインタビューにするパターンがかなり相性がいいと思いました。
たとえばですが、「もしかしたら若者に対してこういうサービスを考えていたけど、我々世代のこういう考え方や常識って通用するのかな?」みたいな疑問をサクッと5~6人に聞いてみよう、のような、気になったけど今更これのために調査をがっつり組んでいる時間がない…!みたいなタイミングでは超活躍するし、むしろガンガン使っていったらいいと思いました。

おすすめパターン①とにかくいろんな人に聞いてみて、フィールドにどういう人がいるのかを手っ取り早く知りたい

こういうものを必要としている人たちや、これに困っている人たちってそもそもどんな人たちなの?というとっかかりが掴めない時、とにかく年代性別何人かずつ聞いてみて、対象となる領域を掴みたい!のような調査と相性がいいです。
調査自体が短く終わる、たくさん聞いても分析自体にそんなに労力や手間をかけなくてもできる可能性も高い、など、仮説だけで進めちゃうくらいなら一回広く聞いてみて絞っていこう、という、未知のフィールドへのとっかかりにはちょうどいいと思います。

失敗パターン①90〜120分インタビューの代替えとして行う

本当はしっかりインタビューを行ってインサイト発掘をしたかったのだけど、時間や予算の関係でそれができない…となった時、代替えとしてこれを持ってくるのはよくないなと思いました。
実際にやったとしても本来やりたかったインタビューを凝縮して…みたいな設計になり、設問数も絞れず、「広くいろんなことを聞きたい」が全く実現されないまま、チャットインタビューにかけた時間が逆に無駄になってしまうことも否めません。
じゃあ一つ先のステップでしっかりした調査を行った方が良かったね、という後悔をせぬように、満足な結果が得られないならプロセスを切り捨てる判断もプロジェクトの進行には重要だと思います。

失敗パターン②IT機器があまり得意でない方に対するサービス検証

これは前述しましたが、考えていることをテキストとしてリアルタイムに文章として発することのできる人でなければ、そもそも対象者として的確でないケースが多いです。
IT機器にそもそも慣れていない、LINEで長文の文章でやり取りを普段しない、SlackやTeamsで当たり前のように連絡を取り合わない、Discordで情報共有をしながら戯れ合わない….という人は、しっかり口頭でコミュニケーションを取ることがいい調査結果を得るのにつながりそうです。


以上、最近やった調査レポートでした。
簡単にできて、あんまり人と話すのは好きじゃないけど人の考えていることを知るのは面白いなあと思うタイプですので、個人的には結構楽しく調査を行えました!

ちなみにインタビューをやったらまとめてみんなが見れるようにしとくのも大事なので、こちらも読んでみてくださいね。



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