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『夏の朝の成層圏』読了感想


爽やかなタイトル、聡明な表紙

今回はサラッと感想を書いてみよう。

船から落ち、無人島に漂着した男の話。
自然の脅威に晒され、脱文明の生活に苦労するが、馴染んでいく日々を重ねる毎に元の生活に帰りたくなくなる様子に、不思議と分かるなーって思える。

漂着してすぐ、椰子の実を割る行為でさえ苦戦する。その描写がこれでもかと思えるくらい続く。

生きることに必死で、生きることが生きる目的みたいな、シンプルな生活。お金を稼ぎ、お金を消費する生活していると、潜在的に憧れるものが、誰の心の中にもあると思う。


中盤辺り、とある男が登場する。そのことがキッカケで、じわじわと文明的なものに触れ始める。そこには葛藤も生まれる。石鹸に対してものすごく抵抗を感じる描写が印象的だった。

物語の後半は、この男との少々哲学的な会話が飛び交う。序盤の、生きることに必死な時とは対照的。哲学チックなことは至極文明的なことなのかもしれない。

主人公はどっちに転ぶんだろう。
島に残るのか、いずれ帰るのか。そして中盤に登場するこの男が何者なのか。非常に面白いからぜひ読んでもらいたい。

おむ

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