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エッセイ『骨でシャワーを聴く』
外耳炎が辛すぎるのでエッセイを書きました。
朝、起きると右耳が聞こえなくなっていた。おそらく外耳炎という病気。体質なのか習慣なのか、私は昔からよく外耳炎になる。医者からは耳かきのし過ぎだと言われている。なら習慣じゃないか、と思われてしまうだろう。そうだけどそうじゃない、と言いたい。私は昔からストレスが耳のかゆみとして出るタイプなのだ。自覚したのは大人になってからだが。そしてかゆみの有無に関わらず、耳かきをしていると、凄くリラックスできる気がしている。手軽にリラックス出来るからなのか、家にいるとだらだらと無意識に耳かきをしていることが多々ある。思い返してみると、小さい頃から親に耳掃除をしてもらうのが好きな子どもだった。大人になったんだから耳かきを我慢しろと言われれば、それはそう、としか言えないが。
外耳炎は1週間くらい症状が続く。完全に聞こえないのは長くても2日ほどで、その前後は音が聞こえづらい状態。1週間もあれば自然と治っていく事が多いが、痛みが酷い時は耳鼻科に行く。だが病院は嫌いなのであまり行くことはない。耳かきのし過ぎを怒られるし。大人になってもやっぱり怒られたくない気持ちはちゃんとある。依然、変わりなく。下手したら子どもの頃よりあるかもしれない。これが大人のプライドというものなのだろうか。
外耳炎になると外の音は聞こえなくなり、自分の声だけが頭に響くような状態が続く。片耳だけ水中にいるかのような感覚。カウンセラーという職業柄、相手の声は聞き取りづらいし、自分の声は五月蝿いし、嫌なこと尽くめだ。ただそんな中で、外耳炎の状態でシャワーを浴びる瞬間だけは、案外嫌いじゃない。シャワーが頭の骨を打つ、“ぽととと”というわずかな音が、外音を取り込めない耳には良く響いて聴こえるのだ。そもそも雨音だけでもリラックス効果があると言われているが、それを骨で振動として聴く。これが心地よい。しかも片耳は普通に聞こえているので、シャワーのざあざあとした音もしっかり聞こえている。外側にシャワーの音、内側では骨に響く水滴の音という2層構造。左右や遠距離近距離で同時に違う音を聞くということはあっても、内外別の音に包まれるという体験は案外なかなか珍しい経験なのではないだろうか。
こんな風に病気すら趣を見出すことが、心を健康に保つコツなのかもしれない。それはそれとして、趣を感じられる程度では取り戻せないくらい大きな不便を感じているので、早く外耳炎には治っていただきたい。
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