薄皮をはぐように良くなる
私は介護をしているのですが、
相手は年老いた親ではなく、
交通事故に遭ったパートナーだ
外傷性クモ膜下出血に
全身多発性骨折
ろっ骨が折れて肺に刺さり気胸になり
自力呼吸ができなかった
途方もない重症だったけど
でも、それはケガで
高齢による体の衰えではないのだから、
どんどん快方に向かうと思っていた
でも、現実は、3年近く経っても
一向に良くならない!
身体のケガは治っているのに
いまだに一人で起きることさえできない
なんで?
出来うることは何でもしてるつもりなのに
身体が硬いとか、
いろいろ理由はあると思うけど
脳に障害が残ってしまったのが
一番の原因だ
脳って本当に大事なんだなと
つくづく思う
他のパーツがOKになっても
命令系がうまくいかないと動かない
まさにCPUだ
脳関係の医療関係者や介護関係の人は
「薄皮をはぐように良くなります」
という言葉をよく使う
が、現実は
寝たきりの弊害で
筋力の低下とか、思考回路の鈍化とか、
関節が硬くなるとか、嚥下が弱くなるとか
どんどん悪化していくのを
くい止めるのが精いっぱい
というか、実際止められていない…
退院直後の動画を見ると
「ああ、この時はこんなことで来てたのに
今はできなくなっちゃったね」
とがっくりする
が、一方で
すこーしずつ、まさに
薄皮をはぐように良くなって
いることもある
家人は車いすに座っているときも
背もたれによりかかって
利き手の右手しか使うことができない
だから食事は大変だ
前かがみになれないから食べにくく
見えにくさもあって、大量にこぼすし
お箸も上手に使えない
時間が経つと右手さえ使わず
食べることもやめて
ボーっとしはじめる
左手は全く動かない
私にガミガミ叱られて
結局、私が全部食べさせる
が、今日、
野菜ときのこたっぷりの
味噌煮込みうどんを作ったら
「おいしい」といって
箸が進んでいた
前かがみになれないまま
うどんをすするって
結構大変なことだ
なので、
お箸でうどんを何とかつかむところまで
頑張らせて
私がどんぶりを
口のそばまでもっていき、
そこですするという食べ方をした
ら…
それでも食べにくかったのか、
震える手で左手を出してきて
けんめいにどんぶりを持とうとし始めた!
おお!えらい!
今までは
私に100%食べさせてもらう気満々!
というスタイルで
どデカイひな鳥のように
口をあーんと開けていたのに
そうだよね
うどんやおそばって
口元に器を持ってこなかったら
食べにくいもんね
かつての感覚を思い出したのか
いつもは一口ごとに
ものすごく時間をかけるのに
今日はどんどん口に運ぶ
えらいえらい💕
とはいえ、
左手はうまく機能しないし
すぐに注意力が切れるので、
私がしっかり持っていないと
すぐどんぶりをひっくり返す
それでもなんでも
自分で食べようとしたのがえらいし
時間がかかっても意欲的に
口に運んで食べようとする姿勢が
とってもうれしかったのでした
って、
こんな長文で書くほどのことじゃないですね
介護を始めた当初は
薄皮をはぐように良くなります
なんて言われても
「そんなのんきな!」と
腹立たしく思っていた
でも、その言葉をやっと
受け入れられるようになったのだなぁ
薄皮をはぐような進捗だけど
私にはとっても嬉しいことなのでした
ちなみに…
今日できたとしても、
明日もできるとは限らない
というか、たぶんできない
でも
こういう小さいことをすこーしづつ
積み重ねて、イレギュラーにできたことが
普通になる過程が
まさに薄皮をはぐように
という表現なのです
出来なくなることはあっという間なのに
できることを増やすのは本当に大変
せっかちな私にとって
本当に苦行としか言いようがない
プロセスです