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英単語を楽してたくさん憶える方法

 受験英語で大きく得点に影響するのは、長文読解です。文法などでこまめに稼いで各2~3点、長文が読めれば各20~30点、およそこんな感じでしょう。
 では、長文を読むためには何が必要かと言うと、英単語の数です。英単語をたくさん知っていれば、長文を読めます。反対に知っている単語の数が少なければ、長文を読めません。
 今の自分の英語の点数が、仮に30点だとしましょう。文法や前置詞や発音などを頑張れば、30点が40点になり、さらに45点になって、もっと頑張って・・・でも、その辺りで止まります。
 一方、英単語の数を増やせば、30点が一気に70点になります。英単語をたっぷり憶えれば、長文が読めます。そして、得点できて、受かるというわけです。
 さて、問題は「どうやって英単語を憶えるか」です。ところが、これが難しいんですね。ここで苦労している、もしくは失敗している例が多いのです。というわけで、「英単語を楽してたくさん憶える方法」を伝授しましょう。

 たとえ話をしましょう。あなたは花の「バラ」を漢字で書けますか? 「ユウウツ」の「ウツ」はどうでしょう? 「ゴイを増やす」の「イ」は?
 よほどの漢字マニアでないかぎり、書けないでしょう。でも、漢字で書いてあれば、読めますね。それでいいのです。漢字で「薔薇」「憂鬱」「語彙」と書いてあったときに、読めれば十分なのです。
 何が言いたいかというと、「スペルを憶えるな」ということです。長文を読むためには、長文の中に出てくる単語の意味が分かればよいのであって、スペルを書く必要はないわけです。

 次のたとえ話。あなたは「Computer(コンピュータ)」という英単語を、日本語になんて訳しますか? 「Internet(インターネット)」はどうでしょう? 「Pen(ペン)」は?
 もちろん、無理に日本語に訳さなくていいんですね。それがどういうものか知っていれば、それで十分なのです。
 何が言いたいかというと、「日本語に訳すな」ということです。私たちは普段からたくさんの英単語を、英単語のまま吸収して、そのまま普通に使っています。それでいいのです。むしろ、そうあるべきです。

 ここで、あまり効果的でない英単語の憶え方の典型的な例を紹介しましょう。
 たとえば「□」の形、英語でいうと「Square」、日本語では「四角」ですね。普通の英単語の憶え方は、まず「Square」という英語のスペルを憶え、「四角」という日本語訳を憶え、さらに「□」の形(意味)を憶えます 。
 それだけではありません。その3つをガッチーンと結びつけておかなければなりません。たかだか1個の単語を憶えるために、これだけのパワーを使っているんですね。(図1)
 ところで、単語を憶えても、すぐに忘れてしまいます。忘れるということは、下の図が丸ごと消えちゃうことなのでしょうか。実はそうじゃないんです。それは、結びつけた部分がプチッと切れることなのです。
 3つ憶えてガッチーンと結びつけたつもりのものが、プチッ、プチッと切れて、はい終わり。これが、忘れるということです。(図2)
 このようなやり方では労ばかり多くて、最後にはほとんど何も残らないということになりがちです。なにしろ数百語、数千語レベルを新たに憶えたいわけです。そんなとき、このやり方は絶望的です。
 ではどうすればいいのかと言うと、スペルと日本語訳を憶えなければいいんです。実に単純な話です。
 先ほどの図から、スペルと日本語訳を消すと(図3)のようになります。そう、これでいいんです。

英単語1

 「何も残ってないじゃないか!」ですって? いいえ、違います。ちゃんと「意味」が残っています。それにもう一つ、「音」が残っているんです。
 ところで、このように言うと、心配性な人が言うんですね。「スペルを書けなきゃ英訳できない」と。でも、心配は無用です。読んで意味がわかる単語が増えれば、長文が読めるようになって、合格ラインに乗ります。スペルミスは減点くらえばいいのです。
 「薔薇」という漢字を書けるようにするより、「薔薇」と「憂鬱」と「語彙」と「味噌・醤油」を読めるようにする方がはるかに楽です。後者に要する労力は、前者に要する労力の百分の一以下で済みます。英単語も同じです。そしてその方がよっぽど得点につながります。
 日本語訳も要りません。日本語に直すより、英語のまま吸収しましょう。実際、私たちは普段からそうしています。今どきのテレビコマーシャルに出てくる単語は、日本語より英語の方が多いくらいです。今は知らない単語でも、今日の夜のニュースで当たり前のように使っているかもしれません。
 そんな時代なんですね。そもそも今どき英単語は外国語じゃありません。それはもはや日本語の一部です。そう考えましょう。「英単語をたくさん知っていることは、すなわち日本語の語彙が豊富であることだ」くらいに思っておくのがちょうどいいでしょう。
 くれぐれも、スペルと日本語訳を憶えることに労力を費やしたら、ちっとも単語の数が増えません。「憶えては忘れ、憶えては忘れ」のループに陥ります。そして結局、「単語が増えない→長文が読めない→得点できない→受からない」となってしまうでしょう。

 多くの学校で「英単語テスト」をやります。中学・高校の定番です。けれども多くの場合、そこで問われるのは「スペルと日本語訳」です。
 英語のスペルが書いてあって「日本語訳を書きなさい」。日本語が書いてあって「スペルを書きなさい」。スペルも日本語訳も要らないのに、その2つの間で行ったり来たりしています。(図4)
 こうなると当然、生徒たちはスペルと日本語訳を憶えようとします。だから、ちっとも単語の数が増えないのです。英語の先生が「単語をたくさん憶えさせよう」と考えたところまではよかったのですが、やり方がうまくないんですね。
 では、どんな英単語テストをしたらいいかと言うと、スペルや日本語訳を書かせるくらいなら、「単語と意味を線でつなげ」と出した方がいいでしょう。(図5)のようなテストに答えられれば、それで十分です。長文を読むのに何の支障もありません。

英単語2

 ようやくここから本題です。スペルと日本語訳を憶えずに、どうやって英単語の数を増やすか。ズバリ結論を言いましょう。
  ○ 英単語を「正しい発音で」口ずさむ。
これがベストです。
  ○ これを、通学の往復の電車の中でやる。
これに限ります。
  ○ 1週間で単語帳1冊、これを3ヶ月繰り返す。
これでバッチリです。ただし「正しい発音で」というのが絶対条件です。
 幼児が言葉を習得するとき、まず耳で聞き、口で音を出しながら、単語の数を増やしていきます。その方法がいちばん楽だからです。書くのはずっーと後でいいのです。単語を憶えるには「正しい発音で」やるのが、最も楽で効果的なのです。
 「正しい発音で」と書きましたが、なにも「完璧な」という意味ではありません。正しさには、もちろんレベルがあります。しょせん日本人の先生に習っていれば、たかが知れています。
 だから「なるべくいい発音で」と考えてください。ここでの目的は「負担を軽くする」ことです。よい発音の方が、より楽だということです。ここでの負担の軽さが、後述するスピードアップの大きな要因になります。
 突然ですが、「スクエア(=Square)」という単語を後ろから読むとどうなりますか? 日本人なら「アエクス」なんですね。日本人はそれを4音で発音するからです。
 さて、アメリカ人なら「Squareは後ろから読んでもSquare」です。その単語が「1音」だからです。
 あるいは「English」という単語は、スペルを書くと7文字、カタカナで書くと8文字です。さて、この単語を正しく発音すると、何音になりますか? 「2音」なんですね。
 ついでながら、アメリカ人と英語で尻取りをやったらどうなるでしょうか? 日本人なら「スクエア→アント→トム→…」とできそうですが、アメリカ人にとってはSquareもAntもTomも全部1音ですから、尻なんて取れません。
 なにはともあれ、英単語は(できるだけ)正しい発音で読みましょう。負荷が全然違うからです。カタカナ読みは禁止です。
 大事なことは「声に出す」ことです。使う教材は、本屋で売っている普通の「単語帳」でいいんです。学校で買わされたものがあれば、それでOKです。
 スペルはいやでも目に入ってきますが、それで十分です。くれぐれも憶えようとしてはいけません。意味が気になったら日本語訳をチラッと見てもいいですが、これも憶えようとしてはいけません。とにかくどんどん口ずさみましょう。流ちょうに、カッコよく。
 ところで、こんなこと、わざわざ机に向かってするほどのものじゃありません。寝っ転がってもできます。だけど、習慣にしなきゃならないんです。日課にしたいんです。そう考えると、通学の往復の電車の中でやるのが一番です。
 「ブツブツ・・・」、他のお客さんにちょっと迷惑でしょうか。でもだからといって、音を出さずに黙読だけにしたら、効果半減です。迷惑にならない程度に、小さいけれど「正しい発音で」読みましょう。
 1冊の単語帳を1回音読するのに、1週間もあれば十分です。1週間で1回転とすれば、単純に計算して、1ヶ月で4回転、3ヶ月で12回転となります。
 ところが実際には、2ヶ月目には5日で1回転、3ヶ月目には3日で1回転まわせます。正しい発音で繰り返すうちに、どんどん速くなって、結局3ヶ月で20回転しちゃいます。これで、バッチリです。
 「憶えよう」なんて考えてはいけません。そんなことしたら、1冊やるのに1年かかります。そして1年後に「ほとんど忘れちゃった」となるのがオチなんです。

 「そのやり方じゃ、意味を憶えられないだろう」と思うかもしれませんが、大丈夫です。意味はあとからついてきます。「脳」がうまくやってくれます。
 音読を終わった時点で、単語の過半数はすでに身についています。以前どこかで聞いたような単語・うろ憶えだった単語はマスターできています。その時点ではっきりと身についていない単語も、その後の生活の中で自然と身につきます。これまで同様に英語の授業を受けても、単語の吸収率が俄然良くなります。辞書を開くにせよ、答えをのぞき込むにせよ、すぐに習得できるようになります。日本語のカタカナ言葉を耳にすることで、英単語の意味がわかるようになることもしばしばです。
 英文はこれでスラスラ読めます。英文を読みながら、単語の意味がわかるようになります。その事情は、日本語の文章を読むときと同じです。知らない言葉が新聞に書いてあっても、新聞を読めますね。読みながら、その言葉を習得しますね。それと同じです。

 では、まとめましょう。英単語を楽してたくさん憶えるには、
  ○ 英単語を「正しい発音で」口ずさむ。
  ○ スペルは書かない。憶えない。
  ○ 日本語訳は無視する。英語のまま吸収する。
  ○ これを、通学の往復の電車の中でやる。
  ○ 1週間で単語帳1回転、これを3ヶ月繰り返す。
これでバッチリです。
 基本的にこれでもう合格ラインに乗っています。あとは普通に授業を受けたり勉強したりすれば、ますます成績が上がっていきます。

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英語を学ぶ、英語で学ぶ 〜 
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