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宇宙の測り方

星の明るさ と 星までの距離

 地球から見た星の明るさは、その星の本当の明るさとその星までの距離による。実際にはそれほど明るくない星でも近くにあれば明るく見え、とても明るくて大きな星でも遠くにあれば暗く小さく見える。
 地球から観測すれば見た目の明るさは分かる。そこでもしその星の本当の明るさが分かれば、その星までの距離が分かる。あるいは、もしその星までの距離が分かれば、その星の本当の明るさが分かる。
 けれども、どうすればその星の本当の明るさが分かるのだろう? あるいは、どうすればその星までの距離が分かるのだろう?
 実際に星まで行くことは出来ないから、距離を実測することは出来ない。すぐそばまで行けないということは、本当の明るさを直接測ることも出来ないということだ。明るさか距離かのどちらかが分かれば良いのだが、結局のところどちらも分からないのである。まぁ分からないなりにあの手この手でなんとかやっているのだろうけれど、考えてみれば、謎なのだ。

星の色 と 星の移動速度

 近づいてくる星の色は本当の色より青っぽく見え(青方偏移)、遠ざかる星の色は本当の色より赤っぽく見える(赤方偏移)。これが光のドップラー効果である。
 地球から見た星の色は、地球上で直接観測できる。けれどもその星の本当の色は分からない。ドップラー効果により色が変わっているかもしれないからである。もし星の移動速度が分かれば、逆算して本当の色が分かる。けれども、どうすれば星の移動速度が分かるのだろう?
 反対に、もし星の本当の色が分かれば、地球からの見た目の星の色と比べることで、その星の移動速度が分かる。けれども、どうすれば星の本当の色が分かるのだろう?
 これも結局は分からないのである。本当の色か移動速度かのどちらかが分かればもう一方も分かるのだが、色も移動速度もどちらも分からない。まぁ分からないなりにあの手この手でなんとかやっているのだろうけれど、考えてみれば、謎なのだ。

光の速さ と 時空のゆがみ

 重力波を観測する原理は次のようなものである。同じ長さで垂直に置いた2本の管の中で光を往復させる。同時に発した光は、通常は同時に戻ってくる。けれども、あるとき光の到着にズレが生じたならば、それをもって「管の長さが変わった=空間がゆがんだ=重力波を観測した」というわけだ。
 だが、待てよ。その結論を導くためには「光の速度は一定」という大前提が要る。でも、ちょっと考えてみよう。それって正しいのか?
 「光の速度は秒速30万km」と当たり前のように言うけれど、そんなに速いものをどうやって測ったんだ? まぁあの手この手でなんとか測ったんだろうけれど、そもそも地球上で測っただけだよね? 地球だけで測ったものを全宇宙に適用して本当に良いのか?
 先ほどの「重力波の観測」に戻ろう。その実験結果と大前提「光速度一定」から「空間がゆがんだ」が導けるというわけだが、それとは違う結論を導くことも出来るではないか。すなわち「空間が歪むわけがない」という前提に立てば、あの実験結果から「光の速度は変わる」を導いても良いはずなのだ。
 「光速度一定」というのはアインシュタインの相対性理論の大前提でもある。けれども、これが正しいとは限らない。そもそも地球上でしか観測していないものを全宇宙に適用してよい保証はどこにもない。

 こうしてみると、宇宙の測り方は謎だらけ。科学者が言うのを信用する(鵜呑みにする)のも良いけれど、この感覚も大事にしたいな。
 学校では、ともすると問いより先に答えがやってくる。あるいは言い換えると、問いの裏にはあらかじめ仕込んだ答えがある。そうなりがちだから、だからこそ時には謎をじっくり味わいたい。知的欲求の源は、知的欲求不満にある・・・たぶん。

※ 余談ですが、この文章を同僚の物理の先生に読んでもらったら、上の3つの測り方についてわかりやすく説明してくれました。考えてみると、同僚たちはみんなそれぞれ違った方向に特化した、そこそこの専門家。しかも人に教えるのが大好きで、相手の理解度に合わせて説明できる人たち。そんな素晴らしい環境に私たちはいるわけです。なんでもどんどん聞きましょう。

(でもやっぱり謎は謎のまま味わいたい)

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〜 途方もない宇宙 〜  
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