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大丈夫なふりだけうまくなった



悲しみ方がわからない。怒り方もわからない。

これが普通だから。わたしは大丈夫。

お母さんはなんだか危ういから、わたしよりお母さんを優先しなくちゃいけない。

お姉ちゃんはこわいから対抗しちゃいけない。
お父さんとは、話したことがない。

嫌なことを嫌だと言うともっと痛いから耐えるだけ。

淋しいなら傷つけあうんじゃない。淋しいなら淋しいと言いあうんだ。

こどもとの接し方がわからないならわからないと言ってほしかった。

そうやって心に触れたかった。

悲しむのも怒るのもゆるされないからニコニコ笑った。大丈夫みたいに。

大丈夫みたいに笑っていたら、わたしはなにしても大丈夫な人になっていた。

その子は大丈夫よ。なにしても笑ってゆるしてくれる。

その子は大丈夫よ。一方的に従ってくれる。

対等に接しなくていい。

家でも、学校でも、なにしても大丈夫な人。

いつもみたいにできない時はわたしがわるい。

やさしくない人がやさしくするのはいいことで

いつもやってる人ができなくなるのはゆるされないらしい。

みんなのために耐えていたはずなのに、気づいたらわるものになっていた。

わたしの話も聞いてほしいと口を開いたら、わたしの中には暗くてどろどろしたものしか残っていなかった。

ほんとのわたしがなにを感じていたかなどとっくに忘れてしまった。

だからまた笑った。

みんなみたいに自然に笑えない。

みんながすきだったのは自分よりみじめでいてくれるわたしだった。

わたしはじょうずに愛される人になりたかった。

じょうずに愛される人になりたかったのに、大丈夫なふりだけうまくなった。

わたしは大丈夫よ。まだ戦える。

わるくち言われても大丈夫よ。生まれた時から慣れている。

どんなに辛いことが降りかかっても、ぜんぶ力に変えてゆける。わたしはつよいから。わたしはつよいから。わたしは大丈夫。



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