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消え入りそうな希望の光


私のために怒ってくれる人に出会うと

わたしは涙が出そうになる。

小さな頃からわたしは怒るのがへたで

ショッキングなことを言われても瞬時に怒れなくて

辛ければ辛いほど笑ってしまう癖があった。

そんな私に不誠実なことをした人に対し代わりに怒ってくれる誰かがいる

その事実がうれしくて

そしてなぜか、とても懐かしかった。

小さな頃に私のために怒ってくれる人はいなかったけど

とても懐かしかった。

もっとその子を大事にしなさいよ!

強そうに見せてるけどほんとは全然そんな子じゃないのよ!

笑って許してくれるからって何言ったっていいなんてことないのよ!

その子のこと何だと思ってるのよ!

大事な大事なとくべつな子なのよ!

しっかり大事に労りなさいよ!

誠実に関われないのなら退散しなさい!

ガオガオガーーー!٩(๑`^´๑)۶

わたしの尊厳が否定されたとき、

そんなふうに怒ってくれた人が

ずっとずっと昔にもいたような

ずっとずっと昔に、ずっと側にいてくれたような

涙が出るくらい懐かしかった。


わたしのために怒ってくれた人の姿に

わたしは懐かしい光を感じた。

この汚れた世界では

暗闇が強すぎて

受けた傷が強すぎて

見えなくなってしまっていたもの。

それをあえて言葉にするなら、

希望なんだと思う。


わたしは希望が懐かしかった。

もうずっとずっと昔の、ほんの小さな頃に忘れてしまった光。

なくなってしまったと思っていた光。

わたしの尊厳を守るために

怒ってくれる人がこの世界にいることを感じたとき

今にも消え入りそうなぎりぎりの灯火が

まだかすかに自分の中に灯っていることを知った。


それを知ったわたしは

ずっと責めてきた自分を

もう解放してあげたいきもちになった。

自分の存在が軽んじられてもニコニコ笑っていた自分を

わたしはずっと責めていた。

耐えることしか自分を守る術を見出せなかった自分を

わたしはずっと責めた。

与える価値のない奴らに与えてしまったような気がして

わたしの大事なかわいい女の子を、守ることができず

悪魔みたいな奴らに差し出してしまったような気がして

わたしはずっとわたしを責めた。


だけど、あの頃のわたしに会ったら

わたしはわたしを責めるだろうか。

自分を守れなかったあなたがわるい!と

責めるだろうか。

そんなことはない。

わたしがわたしに会うことができたら

手に手を取って

もう誰も傷つける人のいない遠くまで一緒に逃げて

わたしはわたし自身に

あなたは戦士なんだよと伝えたい。

あなたは自分以外の誰も傷つかないように自分を盾にして戦った

かわいいかわいい戦士なんだと伝えたい。


理不尽に対しうまく怒ることができず、笑うしかなかったあなたを

うぶだとか、世間知らずだとか表現した人もいたけど

あなたが奴らに笑顔を返したのは

傷つくことがどういうことなのか

魂で知っていたから。

傷つけることは、傷つくこと以上により深く傷を残すことを

魂が知っていたから。

だから怒ることができず、笑っていたんだ。


あなたの偽りの笑顔を否定するものもいたけど、

否定する奴らの中にあなたの傷を代わりに背負ってくれる人なんて一人もいなかった。

あなたの傷を抱えて生きてきたのはどうしたってあなたで

生きるために本来のきもちを押し殺して

生きるために顔で笑って心で泣いていたのもあなただった。

遠くから傍観してる奴らには一生わかんなくても

あなたがボロボロになったのは、傷と生きた勲章なんだよ。


そんなふうに思ったとき

これまた懐かしいきもちがした。

いつかどこかで

傷だらけのわたしを丸ごと理解して

偽りだらけのわたしの人生を丸ごと讃えてくれた人が

いたような気がして

ずっとずっと側にいたような気がして

とても、とても懐かしいきもちになった。


欲を言えば

わたしのために怒ってくれる人が

最初から側にいてほしかった。

わたしの人生を肯定してくれる人が

最初から側にいてほしかった。

そうしていつも優しく生きたかった。

まだ傷つく前の2才のわたしみたいに、誰にでも分け隔てなく優しくいられるわたしのままで生きたかった。

着飾る必要もないくらい

戦う必要もないくらい

わたしのままで

優しい人生を生きてみたかった。


優しさだけで生きられなかったことも

優しさだけで生きられなくなった理由も

どうやって傷を凌いできたのかも

全てわかってくれている人がいて

全てを知っていてくれる人と

心の奥底で繋がっていると

信じていたいし

信じられなくなる自分もいる。

傷つくことが多すぎて

癒えない傷が多すぎて

消え入りそうな希望の光を

ぎりぎりで守っていくのが

生きることなんだと思ってしまう。


ずっとずっと昔に包まれたことのある光の記憶。

きっと地球に来るときにリセットされた記憶。

この汚れた世界で戦った先に、彷徨った先に

少しずつ思い出される記憶。

思い出す過程を経て思い出すことに価値があると信じたい。

損得勘定の世界では埋もれてしまうそれを

見せかけの幸せの中では霞んでしまうそれを

誰かの心の中に

自分の心の中に

わたしは手探りで探している。



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