写真ではなく「想い出」を提供しているということ
イルミネーションが輝く季節になると、あるお客様の事を思い出します。
ベゴニアとイルミネーションを背景に撮影するフォトスポットに、30代ぐらいのご夫婦がお越しになられました。
お二人共、杖を手に持たれています。
視覚に障害をお持ちであった為、周辺の安全確認をしながら大きな声で、ゆっくりとフォトスポットまでご案内を行いました。そして、私たちの掛け声で、タイミングと目線をあわせていただき、とても笑顔の写真を撮影することができました。
販売場所までご案内していると女性の方が
「いろいろと丁寧に案内していただいてありがとうございます。私たちは目が見えないんです。どんな感じで写っていますか?」と仰いました。
このような経験がなかった為、どのようにご案内すべきか考えました。今、私にできる事は、お客様が、頭の中で写真をイメージできるように写真の魅力をお伝えすることです。
まずは「お手にとってご覧ください」とお客様の手に写真をお渡ししてから、写真の説明を始めました。
「先ほどは、ベゴニアというお花に囲まれたフォトスポットで撮影をさせて頂きました。
お客様の背景には色鮮やかな花と金色のイルミネーションが煌めいています。
そして、お二人共に、とっても優しい表情でお写りになられています。
写真の右下には、今日の日付も入っていますので、年末の素敵な想い出にしていただけますよ。」
お二人は、写真を手にしながら、何度も、何度も、頷いて喜んでくれました。
そして、女性のお客様から
「丁寧に説明してくれたので、どのような写真かイメージすることができました。とっても良い想い出になりました。最後にお願いがあるのですが……お土産を買いたいので、場所を教えてもらえませんか?」 と言われました。
他のスタッフに伝え、売店までお二人を案内しました。
売店までの道中も、お客様の歩く通路の両側には、まばゆいほどのイルミネーションが広がっています。その光景を説明しながら、時間をかけてゆっくりお客様と一緒に歩きました。
売店に着くと「お姉さんのおかげで、イルミネーションまで、楽しむことが出来ました。本当にありがとう。」と声をかけてくださいました。
私も感謝の気持ちを伝え、売店に笑顔で入っていくお二人を見送りました。
お客様との出会いを通して、私たちが、提供しているものは、記念写真ではなく「想い出」であるということを改めて学ぶことができました。
そして、笑顔や声、商品も含めてお客様の五感に触れる全てのものが、お客様の想い出になり得るものだと実感しました。お客様に喜びを提供できたこの貴重な経験は、決して忘れることができないエピソードとなりました。
観光施設でのお客様の「貴重な時間」を快適に楽しく過ごしてもらうことと、いつまでも残る想い出の提供をするアミーゴが、記念撮影というサービスの枠を越えて、通常のマニュアルに無い出来事に対し、お客様のためにできる最善を考え、良いと思ったことはすぐに行動できるリーダーであり続けます。