由布島のルイくん
私は由布島で記念撮影サービスをしているアミーゴです。
由布島は沖縄のさらに南西、西表島の東約0.5kmに位置する、小さな小さな島のこと。由布島へは西表島から海を渡る必要がありますが、移動手段はなんと船ではありません。
牛車です。
島と島の間をかわいらしい水牛が、ゆっくりゆっくり牛車を引っ張り、お客様を由布島へ連れて行ってくれるのです。そんな素敵体験ができる有名な人気スポット。今日も由布島を楽しみにされたお客様が訪れます。
私はその日も元気に記念撮影をしていました。由布島ではなんと水牛のルイ君と一緒に記念撮影できます。ここでルイ君のプロフィールをご紹介。
琉生(ルイ)・雄・7歳(人間年齢21歳)
由布島一大人しく、知らない人が近づいたり触っても動じない性格の為、50頭近くいる由布島の水牛の中で唯一お客様が触ることを許されている水牛です。
甘えん坊な一面もあるルイ君は、お客様から大人気。いつも通りのマイペースな感じでお客様にふれあい体験を楽しんでいただいていました。
「それでは次のお客様、こちらへどうぞ!」
やってきたお客様は60代くらいのご夫妻。まずは旦那様が満面の笑みでルイ君に近寄り、慣れた手付きで背中を撫でました。その様子を見ながらご夫人は、手提げから一枚の写真を取り出します。旦那様はそれをのぞき込むと、写真とルイ君とを見比べながら、大きくなったなぁとため息交じりにつぶやきました。
不思議そうな顔をする私にご夫人が教えてくれました。
「一年前にもここで、ルイ君と撮ってもらったんですよ」
写真には、ルイ君と一緒に写るお二人の姿。それは前回お買い求め頂いた記念写真のコピーでした。
「よく撮れてるでしょう? いつもテレビの上に飾っているの。この写真を見ながら毎日ごはんを食べているのよ」
そういって子供のように笑うご婦人。
それからお二人はしばらくの間、ルイ君とふれあっておられました。久しぶりの再会を喜び合い「調子はどうだった?」と会話をしているかのように、私には見えました。
その後はもちろんルイ君とご夫妻の記念撮影。仕上がった写真をとても喜んでいただけました。「来年もまた来るからね」私とルイ君にそう言って、ご夫妻は帰路につかれました。
私はご夫妻に手を振りながら、今日の感動を噛みしめていました。
去年の写真はテレビの上に飾っていただけた、それだけお二人にとっていつでも触れていたい大切な想い出にしていただけたのでしょう。ルイ君のことはきっとご自分の子供のように想ってくださっているに違いありません。
由布島が、ルイ君が大好きな私にとって、今日のことはとてもとても嬉しい出来事でした。
「来年もお待ちしています」
そんな想いを胸に、私はお二人の背中を見送りました。
ふと後ろを振り返ると、ルイ君はお二人の方を向きゆっくりと目を閉じていました。それはまるでお二人に「バイバイ、また来てね」と微笑んでいるように、私には見えていました。