「正欲」を読んで
やはり共犯者というのは、いないか、数が少ない方がいい。というのはさておき、読み終えたので少しだけ感想でも。中々面白かった。
作者自身が、作中の登場人物のように、世の中に対して思うところがあるのかと邪推しつつも、やはり創作家というのは内に秘めたエネルギーを作品を通して何らかの形で描く力があるものだなと感じる内容だった。
主人公格となる人物が数名いるが、いずれも変わろうとする姿勢が見てとれた。対して、多数派の思考に凝り固まった人物の描写もあった。
作中に「繋がり」というキーワードが出てくる。心の拠り所ともいえる存在でもある。登場人物は少数派の繋がりを求めて行動し、その結果、あるペナルティを受けるが、最後まで心の拠り所が何かを多数派には見せない。
その行動は正しいと思う。内面の踏み込ませない領域は開示するべきではないと感じる。
多様性と言っても、繋がりなしに多数派にいることは難しいのかもしれないが、それはそれとして個人の意思の強さはどんな時代でも必要だと思う。
一昔前だと問答無用で排除されていたことが、今の時代は受け入れられている(ような錯覚に陥っている)。やはり、当事者が一番そのことを噛み締めていると思うので、安易に理解を示すような態度がかえって相手の拒絶感を煽ることにつながる気がする。
僕は藻掻きつつも、何かに抗って前に進もうとする意志を感じとれる作品が好きなのだろう。
また、この作品の形式は、連作短編?とは違うと思うが、登場人物ごとの描写が時系列ごとにいくつかわかれていて、話自体は全体でが繋がっているというものだった。
あまり、この形式の小説は読んだことがなかったが、飽きにくく読みやすかった。
「正欲」には、ある特殊な好みをもつ人物が登場する。読んでいて昔読んだ下記の小説を思い出した。
感想文の書き方を変えてみたが、自分勝手に書く文章と違って相変わらず書きづらい。
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