私を変えた一冊『ピアニシモ』
辻仁成『ピアニシモ』
この本に出会った時のことは忘れられない。
中学生の頃だっだと思う。
国語のテストの文章問題に、この本が引用された問題が出題された。
私はその文章に引き込まれ、問題を解くことも忘れて読み耽った。
最後に小さく記載してあった作者名とタイトルを頭に叩き込み、学校が終わってからすぐに書店へこの本を買いに行った記憶がある。
衝撃だった。
「ヒカル」という名のインナーチャイルドと過ごすトオル。
家庭にも学校にも居場所のない歪な世界で、ヒカルだけが心を許せる存在だった。
学校での陰湿な暴力、無気力な教師、父親の自死、信仰宗教にはまる母親。
トオルの成長と共に薄れていくヒカルの存在。
なくてはならない存在だったはずのヒカルに自ら別れを告げ、トオルが母親のところへ戻るシーンを読み終わった時、はっきりと「今までの自分とは違う」感覚があった。
本を読んでいる時はどんな世界にも行ける。
本が本当に好きだ。
私の人生を変えてくれた一冊。
(18年後、続編というべき『ピアニシモ・ピアニシモ』が出版されるが、新たな展開に驚いた。その感想はまた後述したい)