『日本語の作文技術』要約と感想 原則さえつかめば「読点の打ち方」や「修飾語の順番」に悩まない
『日本語の作文技術』(本田勝一、朝日新聞出版)の要約と感想です。
● 概要
日本語で文章を書く上で注意すべき点や句読点の打ち方など、学校では教えてくれない作文技術を世の悪文を校正しながら解説する。注意すべきことを原則化してくれるので非常に実践に移しやすい。1976年に初版発行、2015年に新版の発行に伴い、8章、9章が追加されています。
● 内容
第1章 なぜ作文の「技術」か
第2章 修飾する側とされる側
かかる言葉と受ける言葉はなるべく近い方が良い。
第3章 修飾の順序
ひとつの言葉に対して複数の修飾語がかかる場合、その順序は
① 節を先に、句をあとに。
② 長い修飾語ほど先に、短いほどあとに。
③ 大状況・重要内容ほど先に。
④ 親和度(なじみ)の強弱による配置転換。
の原則に従って決める。
第4章 句読点のうちかた
読点をうつ場所は、
① 長い修飾語が複数ある場合はその境界
② 短い修飾語を長い修飾語の前に置くときはその境界
第5章 漢字とカナの心理
漢字は分かち書きの役割を果たす。
第6章 助詞の使い方
第7章 段落
段落は文章の長さに応じて無闇に改行すればいいというものではない。また、作家の作った段落を勝手に変更してはいけない。
● 感想
この本は文筆を生業にしている人や、教育に携わっている人は読むべきだと思います。確かに、学校では確かに作文の書き方って習いませんよね。どんな内容で書けばいいかはうるさく言われるけど、どこに読点を打てばいいのかとか、修飾語の順序なんかは全然教えてくれません。きっと先生たちも普段意識してないんだと思います。
この本の内容は小学校高学年くらいで身につけておくべきでしょう。第二外国語を学び始めた大学生あたりは「日本語は論理的じゃないからダメなんだよ」とか言いがちですけど、日本語が論理的でないように見えるのは、それを使っている日本人の問題であって、この本に出てくるような原則に従えば日本語は非常に論理的であることが分かります。そういう意味で4章までは非常に有意義な内容でした。
しかし、5章以降は読んでいてあまり得るものがありませんでした(僕が読んだのが旧版だったので8章、9章の内容は分かりません)。情報は当たり前のことばかりだし、この本が書かれたのが1976年ということもあり日本語に対する感覚が今とは少し違うため、理解しづらい部分も多かったです。そして何より残念だったのが、後半に入ると筆者の日本語がなぜか急にわかりづらくなってしまうんです。これは6章で特に顕著でした。文法論を短く説明しようとすると、そうなってしまうのは仕方がないのかもしれませんが、日本語のわかりにくさと内容の密度が釣り合っていないのは残念でした。
内容は有意義で3,4章に関しては絶対に読むべきですが、全体的な感想としては例示が多すぎるなと。多すぎてうざいレベルでした。3,4章だけを例示半分くらいにしてエッセンシャル版として出したほうが良いと思います。面白かった点としては、他の日本語学者の文法論や日本語論に関する素材を引用してかなりディスってるところはかなり笑えました。新聞や小説から一文引っ張ってきて整合性をチェックするのは分かりますが、他の人の思想自体をかなりディスっていて、有名人のTwitterみたいでだいぶ面白かったです。最近の本だとそういうのあまりないので。
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