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今日も今日とて、運貯金。〜ケピソードのない人生なんて〜

食べ物に異物が混入しがちなわたしが、逆に異物を混入した側として対応せねばなくなったこともあった。

わたしもいつも混入します、なんならそちら側の人間です。
お客さまのお気持ちはよーくわかります。


そうなるはずだったのに、事態は思わぬ方向へ進んでしまうことになった。


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以前働いていた飲食店の営業中に、クレームの電話が入った。

「お宅にランチしに行ったんだけどね、料理はまずかったし、その時に長い髪の毛が入っていたんだよ」

「申し訳ありませんでした」そう謝って、あとはマニュアルがあったのでそれの通りに対応させてもらった。

冷たく聞こえるかもしれないけれど、なんとなく出だしから嫌な予感はしていたからマニュアルに頼るしかなかったのだった。


これを自分に置き換えると、髪の毛ならまだいい。

わたしは上の毛(かみのけ)ならぬ、下の毛が食べ物に混入してしまったことが山ほどあるのだ。

ロコモコのハンバーグをカットしたらバネの様に飛び出してきた毛。

トッピングのベーコンをめくったら、元気よくこんにちはしてきた毛。

パスタをくるくる巻いたら、フォークに巻きつくのには少し短くて飛び出してきた毛。

瓶ビールのグラスの中にそっと鎮座する毛。

新品でビニールに入ったTシャツを開封した時に同封されていた毛。

図書館で借りた本に、しおりのように挟まれた毛。

フリマアプリで買ったものに「おま毛です。よかったらどうぞ」なんてくっついてきた毛。

どんなおま毛よ…あなた。

評価のコメントに「丁寧で迅速な対応感謝します。おま毛までありがとうございました」と書くべきか。

この話は止まりそうにないので、またいつかどこかで。

まだまだ沢山ある、毛ピソードを思い出しながら披露しようかと思いつつもこの嫌なテンションの電話はまだ終わらない。

しかもランチタイムのピークの時間。
ホールでお客さんが呼んでいる。けれどわたしはクレームを受けている。

「まずくて気持ち悪いもの食べさせられたおかげでお腹を壊して、終電逃して近くのホテルに泊まることになったんだよ。ホテル代、払ってもらえないかな」

慰謝料ではなく、ホテル代と言って1万円を要求する人。
しかもランチタイムに来たと言っていたのに、終電を逃すという素人でもわかる大誤算。

これはおかしいと、上の人に相談して折り返す約束をして電話を切った。

あとのやり取りは上司に任せてしまったので、部分でしか覚えてないけれど

謝りたいから、店に来てほしい。と言っても
まだ具合が悪いから振込にしろの一点張り。

その人は早く振り込めと何度も電話をかけてきたけれど、途中からおもしろくなってきてわたしはそのクレーム電話の間はホールから離れられると楽しんでいた。

結局お店に姿を現すことはなく、何日か経つと電話がかかってくることがなくなった。


しかしその後意外な場所で再会することとなる。

それは、画面越しだった。

たまたま休みでテレビを見ていた時、画面に映った知っている顔。

彼を真ん中に警察官が両サイドに立つ。
手錠をかけられ。
あんなにも、意気揚々とクレームの電話をしてきていたのに。
肩を落とし、げんなりとうなだれ。

彼は逮捕されてしまっていた。

同じようなことを他店でもしていたそう。

某ハンバーガーチェーン店が通報していたようだった。


その後余罪として扱ってもらったんだか、なんだか。そこらへんの記憶は曖昧なのに
あの、衝撃的なうなだれるクレーマーの姿と顔が何年経っても忘れられない。


わたしの経験上異物が混入した時に、お代はいりません、となることはあまりない。
作り直しか、または作り直しと、軽いデザートのサービスだったり。
ましてや、1万円くれるお店なんてもってのほか。

具合が悪くなったと言ってホテル代1万円を要求してくる斬新なアイデアを盗んでやろうか…!

そんなことになれば異物混入しがちなわたしは、億万長者。
いつかでっかい異物御殿が立つレベルなんじゃないか?

ひゃっほーう!!

とはやっぱり思えなかった。
あぶないあぶない。

真面目さだけがウリのわたしの気持ちに、異物は混入していない!!


すんでのところで犯罪者にならなかった。
よからぬことで逮捕されずに
こうしてあの頃の思い出を書くことで消化しているわたしは、なんてラッキーガール。


今日も今日とて、運貯金。
運を貯めて貯めて貯めまくって、いつかでっかい何かの時に貯金をおろすわたしの物語。



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星野うみ。
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