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25歳一人っ子、母ががん宣告を受けた5ヶ月後、父も癌になる。⑦〜グリーフケア〜
みなさんは「グリーフケア」をご存知でしょうか。
グリーフとは日本語で「悲嘆」を意味するもの。
大切な人を喪失したときに、どうやって悲嘆と向き合い、整理して、立ち直るのか。その過程で寄り添ってくれるのが「グリーフケア」です。
母と父の癌が発覚してから、「もし本当にふたりともいなくなってしまったら」ということがずっと頭の片隅にあって、不安や恐怖に押しつぶされそうな日があった。
目に見えない、はっきりと予想ができない恐怖に怯えるのは精神的に苦しい。
なんとかして自分を落ち着かせることができないかと思ったのをきっかけに、グリーフケアというものに辿り着きました。
正確には、「大切な人を喪失してからのケア」なんだろうけど、別に事前に備えておくことだって悪くないだろう。
そんな思いで「セルフグリーフケア」をしようと方法を考えました。
そして考えついたのが、「死と向き合う小説を読む」というもの。
これがグリーフケアとして役立つのかはさっぱり分からんし、独自の方法だから、なんの根拠も確証もないけど…
小説を通して喪失を疑似体験することで、悲しみを準備することはできるんじゃないかなって。あと小説読むの大好きだし。
そんな淡い期待を持って、手に取ったのが『ライオンのおやつ』です。
『ライオンのおやつ』のあらすじは以下の通り。
人生の最後に食べたいおやつは何ですか――
男手ひとつで育ててくれた父のもとを離れ、ひとりで暮らしていた雫は病と闘っていたが、ある日医師から余命を告げられる。最後の日々を過ごす場所として、瀬戸内の島にあるホスピスを選んだ雫は、穏やかな島の景色の中で本当にしたかったことを考える。ホスピスでは、毎週日曜日、入居者が生きている間にもう一度食べたい思い出のおやつをリクエストできる「おやつの時間」があるのだが、雫は選べずにいた。
――食べて、生きて、この世から旅立つ。
すべての人にいつか訪れることをあたたかく描き出す、今が愛おしくなる物語。
そう、この小説は「大切な人を喪失する物語」ではなく、「どうやってこの世に別れを告げて旅立つか」を考える小説。
「大切な人を喪失する疑似体験」とはちょっと違うけど、手に取ってみてよかった。
「死」って怖いものではないかもしれない。
「どう生きるか」と「どう死ぬか」は紙一重で、生き方を考えることは終わり方を考えること。
「死」は特別なものなんかじゃなくて、日常の一部なんだろう。
子より先に親が死ぬことは当たり前だし、避けられない。
だからこそ、今の私の軸になっている「後悔しないように過ごす」ことを忘れないようにしないと。
不安でも恐怖でも悲しみでもない、清々しい涙を流しながら、そう思いました。
とは言ったものの、やっぱり両親といつか別れる日に備えることなんてできなさそう。でもきっと、この小説が私に寄り添ってくれる日が来るはず。
その日が来るまで、そっと本棚にしまっておきます。