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いつの間にかできていた、と脳に覚えさせたい。
ティファールでお湯を沸かす、鍋で乾麺をほぐす、レンジであたためる、珈琲をドリップで落とす、など1分足らずの隙間時間を台所で過ごすとき、バースプーンを回すことにしている。
バースプーンとは、カクテルづくりに使うもので、マドラーのように飲みものを混ぜるものと思ってもらえればいい。ねじりのある長いスプーンにも見える。ちょっと複雑なのは、ただがちゃがちゃ混ぜればいい代物でもない。
バースプーンの背の部分をグラスに押し当てて回すと、きれいにスムーズにくるくるくるくる螺旋を描く。ポイントは中指と薬指の2本の指を上手く使うこと。無駄に他の指に力が入ってしまうと、バースプーンがグラスに当たり音もうるさいし、不恰好にぎこちなく回る。
マティーニなど「ステア」という手法でつくるカクテルは、地味すぎる技術が求められる。練習あるのみだ。
練習が必要なぶん、隙間時間を使って、合間合間でするようにしていた。しばらくバーの現場から離れていたので、リハビリがてら3ヶ月前からバースプーンをちょくちょく触るようにしたくて。最初は指が動きを忘れていたせいか、ゆっくり指一本の意識をしながらグラスに這わせて回していくが、絶えずカチャカチャ言っている。
それが1ヶ月が過ぎる頃には、意識が無意識へと変わり、2ヶ月目からは限りになく無音へと変わっていき、3ヶ月経つ今ではより回転のスピードが上がってきた。指の筋肉がついてきたのだろう。4ヶ月目にそろそろ入るが、前代未聞の左手でも練習しはじめた。利き手じゃないから、そもそも思ったように指を動かせない。それが面白いし、新しい思考伝達回路を開発しているような気分だ。
「こんなの本当にできるようになるのか?」
そう思うことが職人技と言われるものが多いのだけど、向き合い、考え、動かす時間をいかにつくれるかでたどり着ける感覚はあるのだなぁとひさびさに思い出した。頭で無理と思っても身体が馴染んでこじ開けてくれる突破口はある。
ちょこまかやり続けていたら、いつの間にかできるにようなっていた、そんな習得体得をこれからも増やしていきたい。もうおじさんで覚えが悪くなってきたから、学び方のほうに知恵を絞り(その環境に力を注ぎ)、古びた脳みそをカバーし新たなしびれを与えられたらなあ。
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