妖怪4浪確定
その事実にはたと気づいて、一瞬、時が止まった。
コロナ禍で中止になっていた2年を除いて、毎年、試験を受け続けてきた「境港妖怪検定」。申込メールを遡って確認してみると、2015年に「中級」を合格して以来、過去3回「上級」に挑戦してることになる。
ちなみに中級までは選択&記入方式になのに対して、上級は論文形式(1200字内)になっていて、特に参考書があるわけでもなく、ひたすら"学問としての妖怪"をあらゆる本で学んでおく必要がある。
毎年ちょっとずつあたりをつけながら本を読み進めてはいるものの、試験前の追い込み型で不勉強で受験していたのが、去年まで。「さすがにそろそろ受かりたいなぁ」と、わりと火はついていて、小松和彦さんの著書を軸にいろいろ手に取ってきた。準備は粛々と進む。
が、9月に入って、そろそろ申し込みするか、とサイトを覗くと、「受験申込みを締め切りました」の文字が…….。やっ…やっちまった…….。
8月にチラッとサイトを見て、試験日だけ確認した。たしか10月3週目あたりが試験だったこと多かったから、「いつもよりちょっと早いな」とは思っていたのだ。その違和感に気づいておくべきだった。例年通りであれば、締め切りは9月中旬まで。しかし、今年は8月末までだったのだ…!ういーーー!
まあ……正直、8月は(9月入ってからも)仕事や学校のことで余裕がなく、落ち着きなく過ごしていたのも事実だ。もともと検定のために妖怪を勉強していたわけでもなく、20歳以降のただの大人の自由研究としてあっただけ。だからこそ、頭の片隅の片隅くらいにしかなかった。
いやーー、そうは言っても1年に1回しかないのだ。大学受験といっしょ。3回落ちてるから、4回目の挑戦と思っていたが、まさかまさかの「申込忘れ」とか大チョンボである。いやあ……また来年だなぁ….。
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根本に戻ると、妖怪について考えることは、"人間の余裕"がなせる業だと思っている。これは、「暇があるから、妖怪について考えられる」という意味ではなく、「妖怪について考えられるから、暇がつくることができる」と意味として。
島育ちの自分が、一時期、東京で五感が麻痺するような生活をしていたとき、ああこれはやばいと島のときのことを思い出し、その足でよく井の頭公園に通っていた。あのときほど水木しげるの言葉を反芻したことはなかったし、(感覚を研ぎ澄ませないと存在を感じない)妖怪を意識したことはない。頭の中におく妖怪に救われたようにも思った。
だから、あれ以来、ちょくちょく妖怪の本を手に取るようになった。人間としての余裕を自分につくるために。鳥取にきたのも「妖怪について考えやすい環境だから」がシンプルな理由でもある。
そのくせに、いそがしくて、妖怪について考える暇がなかったとすれば、本末転倒! だとしたら、反省しなくちゃだな。……いや、とはいえ、妖怪については本を読み続けていたからべつに忘れていたわけじゃない。"検定"を忘れていただけだ。
資格なんてどうでもいいと思いつつも、でも中途半端なところ(中級)にいるから、一応は取っておきたいんだよなぁ。そんな煩悩にほどほど振り回されているのが、4浪確定後の今です。また来年!(覚えておけよ!)