GAME NEWS WATCHMEN #03 - パブリッシャーとディベロッパー
ゲームの開発と販売の歴史がよく分かる記事があったのでご紹介。
記事で扱っている内容は
前半がスコット・ミラー氏のApogee Software( → 3D Realms + Epic Games + α → Gathering of Developers)とそこに参画したid Software(DOOMを開発したディベロッパー)との関係の話、
後半がEpic Gamesストアとティム・スウィーニーCEOの話です。
本記事で触れたいのは日本における「パブリッシャー」と「ディベロッパー」についてです。
もしかしたら、聞き馴染みがないかもしれないこの言葉。
ゲーム界隈にいると当たり前に使います。
記事にもあるとおり、本来は
パブリッシャー = 売る人(企業)
ディベロッパー = 作る人(企業)
という意味でそれぞれの役割を担っています。
日本のゲーム業界でも同じ役割ではありますが、どちらかと言うと
パブリッシャー = 発注先
ディベロッパー = 請負業者
という意味合いの方が強いです。
これはパブリッシャーが100%出資者となっているプロジェクトが多いためです。
また、最近ではゲーム業界でも10名以下規模のマイクロ企業やフリーランスのゲームクリエイターが増えているため(私もそう)、派遣契約のような1人当たりの人月単価での受発注が増えていたりします。
そのため、よりこの「発注者」「請負業者」の見え方が強いように感じます。
基本的には「発注先」と「請負業者」の関係ですので対等な関係ではありますが、開発資金はパブリッシャーが出している場合が多いため、どうしてもパブリッシャーの意向・発言力が強くなってしまいます。
(全ての開発現場がそうということではありませんが)
しかも、IP(Intellectual Property の略。知的財産権)をパブリッシャーが保持している場合が多いため、開発するゲームに関する権利はほとんどパブリッシャーが持っていることになります。
結果、
パブリッシャー = 発注先 → 売る人+作る人(企業)
ディベロッパー = 請負業者 → 開発を手助けする人(企業、個人)
実際は上記のような体制になっている現場も非常に多くなっています。
ここからは個人的な意見になりますが…
これはゲーム業界全体の負のスパイラルを生む悪しき体制だと思っています。
なぜか。
1)外から見た構造と実際の構造が違っている
ゲーム作りを職にしたい!自分のゲームを作りたい!と思った人はディベロッパーへの就職を目指します。
しかし、ゲーム開発に関しての多くの権利はパブリッシャーが持っています。
そのため、ディベロッパーに入ったものの「好きなゲームが作れない」「思ったのと違う」とゲーム開発から離れていく人も多くいます。
2)開発者にお金が入らない
ディベロッパーはパブリッシャーから与えられた予算・期間で開発を行います。
しかし、順風満帆に進む開発現場などそうそうありません。
だいたいが数ヶ月の延期が発生します。
そういった開発延期の予算が問題なく出る潤沢な資本を持つパブリッシャーであれば問題ありませんが、そうではないパブリッシャーだとディベロッパーが先出しとして負債を背負う形になります。
そのようなケースも少なくはありません。
また、IPをパブリッシャーが所持している場合、自社グッズの製造などもできずそれらで売上を立てることもできません。
3)IP愛が薄まる
IPをパブリッシャーが所持している場合、そのゲームに関する決定権をパブリッシャーが持ちます。
そのため、どれだけディベロッパーがIPやゲームのことを考えて検討しても、パブリッシャーがNOと言えばNOなのです。
例えば、あなたが苦労して作ったキャラクターなどがあるとします。
最初はそのキャラクターに対して愛があるはずです。
しかし、パブリッシャーからのNOが出続け、結果全くの別物になったとします。
あなたはそのキャラクターに対して、自分が作ったキャラクターだと100%の愛情と自信を持てますか?
これらにより、ゲーム開発者はたまたゲーム開発志望者に不利益が生まれるような状態になってしまっているため、今のゲーム業界の体制は一刻も早く改善すべきだと思っています。
では、どのようにすればこの悪しき体制を変えることができるのでしょうか。
私はスコット・ミラー氏が提示した「開発者の十戒」にこそ、現状を打開するための記してあると思っています。
以下、上記記事のタイトルだけ抜粋しています。
(Google翻訳を使用していますので日本語がおかしい部分や誤訳はご愛嬌…w)
▼「開発者の十戒」
1)知的財産権を渡さない
2)正当なロイヤリティを設定する
3)商品化計画および非インタラクティブメディア(グッズ化、映画化など)の権利を渡さない
4)ポート/コンソールのバージョン毎に契約する
5)パブリッシャーからゲームの最小マーケティング予算の資料をもらう
6)コピーライトに会社の名前を入れたりロゴを目立たせて、表に出ることで会社のファンを作る
7)パブリッシャーがゲームの販売に失敗した場合、次に全ての権利を取り戻し他の手段を追求できるようにする
8)パブリッシャーにサードパーティ企業への支払いを依頼する
(ハードのテクニカルサポートに対しても予算を出してもらう)
9)その他
・補償条項が両方の方向に進んでいることを確認し、発行者と開発者の両方を保護します。あなたが作成した実際のコンテンツに対してのみ責任を負うべきです。
・ゲームがリリースされた日から最大2年間、パブリッシャーが従業員を雇うことを許可しない条項(非要請条項)があります。あなたの出版社は当然彼らのために同じ保護を望んでいるでしょう。
10)ソフトウェア契約と知的財産法を熟知している良い弁護士を選ぶ
全てを厳守することは難しいですが、譲歩することはできると思います。
これらの内容は多くの開発者の方々からすると既に見知った周知の事実かもしれません。
しかし、日本のゲームディベロッパーの多くがこれらの権利を主張できず、苦汁を味わっているのも事実です。
この状態を脱却するためにも今一度この「開発者の十戒」を再確認するのも良い方法かと思います。
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