バイト選びの暗くて優しい話

はじめに

私自身は学生ですが、友人には学生はもちろん、会社員や公務員、フリーター、フリーランスなどなどいろいろな肩書きの人がいます。彼らと雑談していると、仕事やバイトの愚痴や弱音を聞くこともしばしば。正社員としての仕事については経験がないからよくわからないけれど、バイトについては自分もしんどかった経験があるから愚痴りたい気持ちはわかります。

これは、私が今までやってきたバイトについての感想と、働くことに対する気持ちの変化について整理して書いてみよう、というだけの記事です。そんなにたくさんの職場を渡り歩いてきたわけではないから、バイト選びの参考にはならないと思うけど、興味ある方はちょろっと読んでいってくれたら嬉しいです。勤務先が特定されないようにかなりぼかして書く部分もありますが、ご了承ください。


お菓子屋さんの店員

しょっぱなからお店の名前をかなりぼかしました(笑)。

生まれて初めてのバイトでした。チェーン店ではなく個人経営のお店です。きっかけは、親が偶然このお店のお客さんで、バイト募集の張り紙を見つけたこと。「味はいいし上品で落ち着いたお店だから、いいんじゃない?」と勧められて応募してみたら採用されました。

正直に働いてみた感想を書くと……死にたいくらいつらかったです。

他にバイト経験がなかったので、当時は自分の根性がないのが駄目なんだと思い込んでいましたが、今考えるとバイト初心者にはハードルの高い勤務内容だったな~、なんて思います。

商品の種類が多すぎるから商品名と値段を覚えるのが大変。しかも店長はとても創作意欲にあふれた方だったために、新商品が次々と現れて脳内はパニック状態。お祝い事の贈り物を希望されるお客様も多く、熨斗を頼まれることもあるが、10代の常識がない小娘だった私にはもうなんのこっちゃわからん。不器用ゆえ商品の包装に時間がかかる。せっかちなお客様に「早くしてくださる?」といらいらされる。

ちょっとした有名店でもあったので、芸能人のお客様が来るとかテレビで紹介されるとか面白い出来事もあったものの、個人的には落ち込むことのオンパレードでした。それなりに頑張って続けてみましたが、いつまで経っても研修中の名札が取れず日々が過ぎてゆく。私よりも後に入ってきた後輩に追い抜かされそうになった頃に辞めました。

社員さんに怒られるわお客様を怒らせるわで散々でしたが、接客バイトのつらさを経験できたのは良かったです。コンビニなどのお店にお客さんとして訪れたとき、店員さんの気持ちを考えて買い物をできるようになりました。これから私がクレーマーになることは一生ないと思います。


テーマパークのスタッフ

お菓子屋さんでのバイト経験によって、軽い接客バイト恐怖症になっていた私。だけど接客への恐怖を克服したいという思いもあり、傷が癒えた頃合いを見計らい、人とたくさん接する必要のあるテーマパークのスタッフにあえて応募しました。

お菓子屋さんのほうはお金持ちのマダムのような方を相手にした接客でしたが、こちらは小さなお子さんなど、親子づれが相手の場合が多くて客層がまったく違う。遊園地のテンション高めなお姉さんのような演技が求められる仕事です。

この職場が、まさかの私にとっては大当たりでした。

まず私は前のバイトでいつまで経っても研修中だった原因を、自分の物覚えの悪さだと考えていました。なので今回、初出勤からしばらくはシフトを入れまくりました。遊びや趣味の時間は後回しでバイト最優先です。最初のうちに集中して働きまくって仕事内容を忘れないように定着させる作戦です。これがかなりうまくいきました。

あと、私は数字にとても弱いです。お菓子屋さん時代にはバーコードがついていないうえに多すぎる商品と値段に混乱しながらレジを打っていました。けれど今回はレジ打ちがメインの仕事ではありません。行列の整理やアトラクションの案内など喋る、話すことが重要でした。

たくさんの物の値段を覚えなくていい点は私にとってはとてもありがたく、接客に集中することができました。お菓子屋さん時代、声が小さい笑顔がないなど注意されまくっていたのが嘘のように、明るくお客様と接することができる自分に正直めっちゃ驚きました。日によっては社員さんやバイトの先輩に褒められるほどです。どうやら前はややこしいレジに翻弄されて、不器用な私はレジ打ちと接客を同時にこなせず、声量も笑顔も失ってしまっていたみたいです。

シフトの都合上、グッズ販売でレジに立つ時間帯もあったのですが、ありがたいことに私の配属されたレジはグッズの値段が均一だったので、混乱することなく無難にこなすことができました。ほっ。

めちゃくちゃ楽しい職場でずっと続けたいくらいでしたが、学業の都合で今は辞めています。テーマパークだったのでお客様もスタッフも人数が多く、にぎやかでした。常に笑顔で明るく接客することを心がけた結果、最初は仕事用のスマイルだったはずが本当に心も明るくなっていきました。

もちろん失敗もあったけど、とにかく楽しさが上回ったバイトでした。


小説家

バイトと言っていいのか微妙ですが、一応働いた経験ということでバイト扱いにさせてください。要するに本の印税収入です。

これはとにかく、自分の妄想が金になるという点で幸せな仕事でした。私のオタク脳が、役に立つだと…!?みたいな(笑)

ただきつかったことも事実です。当時、かなり真面目に大学生をやっていたので、忙しいときは朝から夕方(日によっては夜)まで学校で授業、夜は課題をこなし、深夜に執筆という生活で、睡眠時間は平均3時間でした。あのとき居眠りした私にノートを見せてくれたみんな、ありがとう……。

ここで学んだのは企画におけるニーズの重要性でした。趣味として創作するときは自分の書きたいものを自由に書けるけれど、今回はみんなが読みたいものを書く必要がある。売れる商品を作らなききゃいかんので。芸術家と名乗るのはおこがましいですがそういう創作欲を満たしつつ出版社の下請けとして職人気質を見せるバランスが難しいなと思いました。

一生懸命考えたものがボツになることもあるし、作業時間と稼げるお金を考えると効率は超悪いです。特に私は無名で重版もされないので作品をひとつ仕上げて回収できる金額は業界内でかなり低いと思います。それでもやりがいは半端ないのでやる価値はある。そんなお仕事。


TA

ティーチングアシスタントの略です。大学院生が所属する大学の学生教育の補助とかするバイトで、通ってる大学に雇われます。

大学によって仕事内容は様々だと思うのですが、私は大講義の手伝い(雑用)と、学生さんのレポート指導を経験しました。

大講義のほうはそんな大したことではないです。プリント配ったり回収したり、教室の空調管理したりetc. レポートのほうは指導というか、悩んでる人へのアドバイスですね。何書いたらいいかわからん助けて!とか、書いてみたから見てほしいとか。

後者がとても勉強になりました。自分が勉強してきたことが役に立つのは普通に嬉しいし、自分自身の復習にもなる。相手がダメ出しで傷ついたり、パワハラみたいにならないように、人との接し方に注意することも学べます。うまいアドバイスができなくて申し訳なさに落ち込むこともありますが、業務報告は必要なものの怒られることが基本的にはないので自分自身で反省と改善の繰り返し。


美術館の監視員

「この展覧会の期間だけ」という短期バイトでした。大学で博物館学や芸術学・美術学系の授業を受けて美術館大好き人間になってしまっていたので、展覧会にやって来るお客さんの動向を観察したいという下心ありありで働いてました(おい)。

ここでも発見がありました。同僚は主婦の方など自分よりも年上の人が多く、私みたいな20代は比較的少な目でした。仕事をするうえで特に困ったことはなかったのですが、同じ展示室に2人以上監視員がいる場合、お客様はクレームや文句、意地悪な質問をわざわざ私に言ってくることが多くて不思議でした。

たぶん、若いスタッフのほうが都合が良かったのかなと思います。男性よりは女性。年配の人間よりは若者。若くてバカそうな女の子のスタッフのほうが偉そうに威張れるし文句も言える。そういう心理かな、と。こればかりは社会の認識が変化していかない限りどうしようもないことなので、私はあまり気にせず冷静に対応していくしかありません。今の私は若い女性という、ある意味一番下に見られやすい立場の人間みたいです。

このバイトとの相性は、普通って感じでした。可もなく不可もなく。ただの監視ですが、展示室の観察を行う時間は十分にあり、下心も満たせてよかったです。


その他

あとは単発バイトとかモニターとか、こまごましたものをやったことがあるくらいでしょうか。ここは特に言うことないかな。面白い経験としては、大手食品会社のモニターで開発中の商品を食べさせてもらったことがあります。


おわりに

ごらんの通り、そんなにたくさんバイトを経験してきたわけではありません。でも、お菓子屋さんでぽっきり折れた働く心がテーマパークで元気を取り戻したときはバイトって面白いなって本当に思いました。いろいろ書きましたが、今回の記事で特に読んでほしいのはお菓子屋さんとテーマパークのくだりです!他はおまけ(笑)。それにしても「優しい話」って書いたのに嫌なこともけっこう書いちゃいました。ごめんなさい。

お菓子屋さんでバイトをしていると話すと、たくさんの友人から「すごく緒霧に似合ってる」や「わかる、それっぽい」と言われました。家族も緒霧に合った雰囲気の場所で働けて良かったねと思っていたみたいです。

友人や家族からは、甘いものが好きでのんびり屋の私が、落ち着いて上品なおっとりとしたお店で楽しく働いていると思われていたようです。

逆に、テーマパークのバイトを始めたときはすごく心配されました。みんな、人見知りで喋るのが苦手な私があんなにテンションの高い場所で働けるのかと疑問に思っていたようです(笑)。実は私も最初は自分で自分を心配していましたが、あの職場にいるときだけは魔法がかかったように人見知りも話し下手も直りました。なんだったんだろう、あれ。なにはともあれ、自分は役立たずじゃなかったと自信がついたのは確かです。

どんなバイトでも嫌なことはあると思いますが、向き不向きというのもあると思います。私にとってのお菓子屋さんとテーマパークのように。

周囲にどのバイトがいいだとかやめときなよとか、つらくても頑張れとか言われるかもしれませんが、そんなの当てにならないと思います。本当につらいなら、そのバイトはあなたに合っていないのかもしれない。思いもよらないバイトが相性ぴったりで天職かもしれない。バイト選びはあなたの選択権なのだから、あなたの自由にしていいはずです。

これからバイトをしようとしている人や今のバイトを辞めたい人へ。あなたに合ったバイトがどうか見つかりますように。(もちろんバイトをしないという選択もアリでしょう。つらくて辞めたい人はあまり気負わずに)。

バイトのゲシュタルト崩壊が起こり始めたので終わります。それでは。


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