名古屋城石垣部会委員「天守西対岸石垣 化粧直しの議論より根石周りの調査と議論を」
24/11/19(火)特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議 石垣・埋蔵文化財部会(第63回)が開催されました。
天守台西側内堀御深井丸側石垣(U66)の保存対策について、宮武正登・佐賀大学教授は「石垣表面をどうするかの前に、構造物としての石垣が持つか持たないかの議論をする必要がある。根石周りが安定しているかの調査と議論が先だ」とし、石垣部会としてはU66について保留としました。
鵜の首水堀側石垣(S10)のボーリング調査は承認されました。
「特別史跡名古屋城跡内の石垣保存方針策定について」は、報告はされたものの議論は不十分でした。
・24/11/19(火)特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議 石垣・埋蔵文化財部会(第63回) 配付資料
http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/241119.pdf
・名古屋市民オンブズマンによるメモ(途中から)
http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/241119-1.pdf
現在、「顕著な変形、変状などがあり、現況に課題があると判断される石垣」のうち、来城者動線沿いの石垣(U65、U66、S10)について、優先的に保存対策を行うことにしています。
大天守北対岸石垣(U65)については、すでに石垣部会・全体整備検討会議で承認し、工事が着工されています。
U65は鉄筋を入れるが、U66、S10は鉄筋を入れない方針とのこと。
宮武教授は「U66は上を人が通るため、『構造体として安定している』と石垣部会が評価する必要がある。前回は表面の議論ばかりしていて、根石周りの調査も議論もしていない。
盛り土の上に根石が置いてあれば、いくら表面の化粧だけしても石垣ごと倒れたら意味がない」と述べました。
西形達明・関西大学名誉教授は「石垣の地盤がよくないのは確か。古い時代から石が積まれていれば、通常時は過去に石垣があった高さまでの荷重であれば支持しうるのかなと思う。
とんでもない地震時はわからない。できるのは円弧滑り解析くらいか」と述べました。
以下感想です。
石垣保存対策については、「通常の観覧時の安全」と「木造復元事業の工事対策」がごっちゃになっているため、大変議論がわかりにくいです。
しかも、石垣部会は「木造復元事業について議論しない」ため、どうなっているかさっぱり分かりません。
2021/3/25時点では、木造天守復元時、大天守北の外堀を架設桟橋で越え、御深井丸側内堀石垣の上を通り、内堀を軽量盛り土で埋めて、その上を大型重機や仮設構台を設置する予定です。
http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/210325-1.pdf
鵜の首(小天守西側内堀)の解析(最大荷重時)は車両荷重25kPaです。西形先生は、「大地震時は分からない」としましたが、特に車両荷重25kPaについては発言しませんでした。
U66について、通常時の来城者の安全確保のため、根石周りの調査は重要です。
はたして木造復元工事の車両荷重25kPaに耐えられるか。耐えられない、とすると、工事自体の見直しを行うか、
根石から全面的に積み直すかになるのではないでしょうか。
一方、24/9/27に開催された「名古屋城天守閣整備事業にかかる技術提案・交渉方式(設計交渉・施工タイプ)による公募型プロポーザル実施に伴う第11回意見聴取会」資料では、木造復元を前提とした竹中工務店との契約に基づくU65石垣の保存対策工事(税込9577万4000円)を行っています。
http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/iken11.pdf
意見聴取会で、■(委員)は「U65の石垣の補修は、天守の問題ではなくて、観覧動線がすぐ上を通っているので、その方々が地震等で被災するのを防ぐために緊急に行うと、お聞きしていました。それで了承をしているのですが。天守の解体工事のためにとは、聞いていなかったと思います。」と述べています。
それに対し、事務局は「石垣補修工事の目的はそうですけれども、いずれにしても天守の仮設工事をするときに、ある程度影響がでるということですから。観覧動線の安全確保が主の目的です。かと言って、そこをやらずに天守の復元はできないですから。」と述べています。
相変わらず、有識者会議同士の議論の風通しが悪く、事務局もきちんと説明をしません。
U65、U66、S10石垣について、以下明確にする必要があります。
1)通常時、来城時に安全に通行できるか
できないならどのような対策が必要か。何年かかるか。
2)大地震時、来城者の安全を確保できるか
できないならどのような対策が必要か。何年かかるか。
3)木造復元工事をする際、重機を載せても石垣が破壊されないか。
破壊されるなら、どのような対策が必要か。何年かかるか。
「調査しなくては分からない」ではなく、事務局は「■くらいを今見込んでいます。」と明確に答弁しています。
「そこをやらずに天守の復元はできない」と述べているので、24/11/24投開票の名古屋市長選挙の前に、市民に時期を明らかにすべきです。
・名古屋市民オンブズマン 名古屋城問題ページ
http://www.ombnagoya.gr.jp/tokusyuu/goten/index.htm
・名古屋市民オンブズマンブログ 名古屋城問題
https://ombuds.exblog.jp/i33/