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茶道ごっこ
茶道に淡い憧れがある。
父が茶道をしていたし、周囲にやっている人も多い。
でも、お稽古事にお金をかけられないし。
そんなこんなで指をくわえて見ていたとき、友人が「なんちゃって茶道」を教えてくれた。著名な誰かが提唱しているのではない。友人が自分だけで楽しんでいる、非常に個人的なものだ。
でも、私には彼女の「なんちゃって茶道」が気に入った。私が憧れる茶道のエッセンスが、もれなく入っているような気がしたから。
・書(のようなもの)を書いて飾る
・花を飾る
・お茶菓子を小皿にのせる
・お茶を入れる
・一服する
この5点が、「なんちゃって茶道」と本家の茶道との共通点だ。
今日もまたやってみたので、ここに記そうと思う。
【書を書いて飾る】
歳時記から冬の季語を使った俳句を探す。
今日は、「遠山に日の当りたる枯野かな」という、高浜虚子の句を選んだ。
手持ちの一筆箋に、ジェットストリームの黒いボールペンで書き、机に置く。これが、書の代わり。
【花を飾る】
庭や近くの林から採ってくる。今日は白い椿を選んだ。粉引の欠けたティーポットがあったので、それに生けてみる。
【お茶菓子を小皿に乗せる】
セリアで買った薄水色の小皿に、オランジェットを乗せる。オランジェットは頂き物の柑橘の皮を、自分で砂糖で煮詰めて作った。
【お茶を入れる】
今日は紅茶。リプトン紅茶のティーパック。お湯の温度や時間に気をつけて、いつもよりも丁寧に淹れる。カップは、花瓶の色と合わせてクリーム色のにした。
窓を開け、冬の澄んだ空気をたっぷり入れて、また窓を閉める。
古着で作ったスモーキーブルーのコースターの上に、紅茶の入ったカップを置く。
心持ち背筋を伸ばして、椅子に座る。
ガラス窓から部屋に満ちる、午後の光。光を受けてたたずむ白椿。ほんのりとあかるい粉引の花瓶。オランジェットにまぶしたグラニュー糖が、きらきらとひかる。
カップからたちのぼる湯気に手をかざし、あたためる。
紅茶の熱さと香ばしさ。冬の空気の匂い。椿の花の清潔な匂い。椿が持ってきた、庭の匂い。
オランジェットを囓ると、柑橘の爽やかな甘さと一緒に、華やかな香りが広がる。
紅茶を味わって、ふう・・・とゆったりと息をつく。甘くなった口に、紅茶の苦みがおいしい。私の吐息と、衣擦れの音。
窓の外に広がるのは、午後の陽と雲がつくる、淡いグレイとオフホワイトと、薄い薄いたまご色。
あの雲の下の、光にまぶされて消えかかった煙のような、紫の山並み。
「遠山に 日の当りたる 枯野かな」
心を整え、所作を整え、移りゆく季節を捉えて表現する。静寂と湯の沸く音を楽しみ、掛け軸を、花を、茶釜を、器を、菓子を、そこに漂う空気を味わう。~私の憧れる茶道のエッセンスを、ちょっと拝借して。
自分で自分をもてなして、たっぷりと味わう、茶道ごっこを楽しんでいる。
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写真:MAHO YAMAGATAさん