自分の弱さを知る(6)
エリクソンは、人間は小さな子供の頃から自分が何者であるかを確信していると述べている。もっともこの確信は社会の秩序と外圧に絶えず曝されることを余儀なくされ、やがては崩れさるだろう。
この危機(confusion)は、人生のライフプランの各ステージにおいて起こる。その都度、人は深く苦しむ。特に難しいのが青年期である。
この点については既にすこし前に私見を述べたが、エリクソンのアイデンディティのモデルは、真実なのだろうが、ちょっと古くさい。今後もずっとあり得ることなのだろうが、今現在、私達が生きている現実ではない。そう言い切っても構わないと思う。
上記「アイデンディティ」に出てくる登場人物たちは、あくまで心理学的知見に説明を与えるためのものであるので仕方がないのだが、どこか類型的である。下記は患者の一人、ジルという少女の例
著書の中でこの患者たちが何人出てくるのかちゃんと数えているわけではないが、新顔が出てくるたびに「うーん」と唸ってしまう。
もちろん嘘じゃないのだろうが、マラマッドの小説にでてくる主人公風の、いわゆるモラリストとよばれる文学(者)のカテゴリーがあるが、その伝統における人物造形である。
だけどたとえば今の起業家、経営者などは昔のそれとはかなり違う。古風な「闇金融ウシジマくん」的な世界線がなくなったとは言い難いが、他方でオタクみたいなのがどっこい社長をやっていることも珍しくないわけで、
つまりこの数十年で職種が増えて「多様化」したということなのだろう。
<続く>